92話 食材の宝庫
――翌日。
「ダンナ、朝だぞ! 起きてくれ!」
フランカの声で目が覚める……。
「寝ているのはダンナだけだぞ、朝飯の用意ができているから食べようぜ!」
みんな起きるの早いな……。
リビングに向かうと――みんなイスに座っていた。
「おはようございます! 待っていましたよ! 早くご飯食べましょう!」
ミツキさんは朝から元気がいいですね……。
その元気、朝に弱い俺にも分けてほしい……。
朝食は炊き立てのご飯、オレンジサーモンの香草焼き、厚焼き卵、野菜の味噌汁だ。
みんなで食べようとすると――ミツキさんがソワソワしている。
「すみません……毎朝いつも食べている物を出していいですか?」
それを聞いたウィロウさんとグラシアさんは少し引き気味である。
「あれを食べるのですか……」
「わたくしは止めませんが……においが……」
においがキツイのか? となると漬物系かな?
それなら全然問題ないけど。
「いいですよ」
「ありがとうございます! これを食べないと朝から元気が出ません!」
いや、十分元気ですけど……。
ミツキさんはアイテムボックスから瓶に入った茶色豆を出した…………納豆かよ!?
「おっ、納豆とかいいの持っているな! アタイも食べたいぜ!」
「フランカさん、納豆を知っているのですか!?」
「そうだぜ! 賢者が毎日食べていたからな! それにつられて食べたらかなり美味しかったぜ!」
また変な噓を……。
「そうですか!? 村からいっぱい持ってきたのでどうぞ食べてください!」
いっぱいあるのか、俺も久々に食べたい。
「俺も食べたいのですがいいですか?」
「私も食べたいのですがよろしいでしょうか?」
アイシスも納豆を食べたいのか。
意外に好き嫌いないよな。
「もちろんです! どうぞ!」
納豆を醤油をかけて混ぜ――ご飯の上にのせて一緒に食べる。
うん、大粒だから嚙み応えもあり、良い大豆なのか甘味があって、とても美味しい。
「久しぶりに食べると美味しいです」
「この納豆……かなり美味しいぜ! 酒のつまみにもってこいだ!」
2人の魔力がそこそこ回復している。
好きみたいだ。
「ミツキさん、今度から納豆も定期的に購入したいのですが……」
「納豆をですか!? これは売り物ではないのでタダでプレゼントします!」
「タダとか……いいのですか?」
「はい! いつもお世話なっておりますので、当然です!」
「ありがとうございます」
ミツキさんの村は旅人の影響はすごいな。
こちらとしてはありがたいけど。
「みんなしてこれを食べるなんて……」
「賢者の身内の方々はすごいですわね……」
驚いてそう言われても食べ慣れてる物だから別になんてことはない。
朝食を終え――出発する。
「今日も頑張って行きましょう!」
今日は300㎞くらい離れた場所にある大きな湖まで行く予定だ。
平地を走っている途中――キングバッファローがいた。
「わ~い、美味しいお肉だ!」
「いい素材がいるじゃないか!」
ミツキさんとフランカは真っ先にキングバッファローの方に向かい――。
「とうっ、――――豪襲脚!」
「ブモオォォォ――――!」
ミツキさんはキングバッファローの背中に飛んで足蹴りをし、動きを止めた。
「いい蹴りだ! ――――炎烈破!」
「モオォォォ……」
フランカは炎を付与した金鎚で頭部を叩いて倒した。
見事な連携ですね……。
「目的地に着いたら分けましょう!」
ミツキさんはアイテムボックスにしまって先へ進む。
――4時間後。
平地から渓谷に入り――渓流が見えてきた。
この流れを辿って行けば目的地に着くみたいだ。
「いい場所ですね! ここで昼食にしましょう!」
昼食はアイシスが作ってくれた猪のカツサンド、ミネストローネだ。
大変美味しくいただきました。
食べ終えたらここから休憩なしで進む――急な岩場の傾斜で水量も激しくなってきた。
源流に入ったようだ。
足場は不便だが、このメンバーは問題なく転ぶことなく進んで行く。
途中で川の中から全長1mくらいの大きなザリガニ? みたいのがいる。
「リバーロブスターがいる! けど……流れが強すぎて取りづらい……」
ロブスターだと!? これはなんとしてでも捕獲しないと。
落ち込んでいるミツキさんを見て、精霊が張り切り始めた。
「小人さん、待っててね。私が取ってくるよ!」
そう言うと精霊はリバークラブの近場に行き――風を使ってすくい揚げる。
「マスター、あとはお願いね!」
リバーロブスターを地面に落とした。
リバークラブの時と同じだな。
「わかった――アイスショック!」
氷魔法で全身を凍らせて仕留めた。
「す、スゴイです! 簡単に取れるなんて精霊さんとレイさんはスゴイです!」
褒めているがほとんど精霊のおかげですけどね……。
「奥の方にもまだいるみたいだから取ってくる! マスター、ついて来て!」
精霊と一緒にリバーロブスターの回収が始まり――30匹以上は捕まえた。
「半分はミツキさんにあげますね」
「いいのですか!? リバーロブスターは高級食材ですよ!?」
この世界でも高級食材か。
「納豆のお礼ですよ。精霊も受け取ってほしいみたいですし」
「あの残念変態エルフから助けたお礼だから受け取って!」
「あ、ありがとうございます! わ~い、もらっちゃった~! あとで何かお礼しますね!」
いや、十分もらっているからその笑顔だけでいいです。
『レイの母性パラメータが上昇している……』
またエフィナはわけのわからないことを言っている……。
引き続きその先へ進むと――大きな湖が広がる。
目的地に着いたようだ。
「着きました! 今日も順調で良かったです!」
予定通り着いたのはいいのが――湖に大きな魔物の反応がある。
主がいるのか?
「ダンナ、どうする? 安全確保のため、大型の魔物倒した方がよさそうだが?」
「そうしたいけど、奥の方にいるな……湖も相当な深さで対象しきれない……このまま様子見るのもいい気がする」
「それならアタイに任せくれ!」
フランカは家を出して中に入り――持ってきたのはミスリルで作られた釣竿だ。
「いつの間に作ったんだ……」
「暇なときにな! 釣りはアタイの趣味だと思ってくれ!」
それ初耳だが……だからデススパイダーの糸が必要だったのか。
「釣りですか!? いいですね!」
「これで大物釣るから期待してくれ!」
「はい! 楽しみにしてます!」
「ダンナ、悪いがロブスターを餌にしたいのだがいいか?」
安全確保のためだ、いっぱいあるからいいか。
「わかった」
無限収納から出してリバーロブスターを渡した。
「ありがとな!」
釣り針に引っ掛けたらフランカは反応がある湖の中心へ投げる。
「早く釣れるといいですね!」
ミツキさん……それはさすがに無理な気が――。
「掛かった! これはデカいぜ!」
早っ!? まだ1分も経ってないぞ!?
「大きいのですか!? 手伝いましょうか?」
「大丈夫だ! まあ、見ててくれよ――」
フランカはリールを巻き――水しぶきをあげ、水面から姿を出した――大きなウナギだ。
「あれはリバースネークですわ!? しかも大きい……」
フォルム的に蛇の部類になるのか……。
「大きなウナギだぁ~! 美味しそう!」
ミツキさんはウナギと認識しているみたいだ。
「あとは任せたぜ!」
竿に食らいついている隙にリバースネークを仕留める。
「暴れているので私が凍らせます。――――アブソリュート・ゼロ」
アイシスは魔法を使い――加減して首以外を凍らせる。
首を切ればいいってことだな。
炎魔法を使う――。
「――――フランベルジュクレイモア!」
豪炎の両手剣を持ち――首を目掛けて切り上げる――。
「――――豪炎刃!」
首をぶった切り――仕留めた。
「私が運ぶね!」
精霊がリバースネークを風に浮かせて陸に揚げた。
大体全長が30mくらいあるな……。
「ふう……重くて多めに魔力使っちゃった……家で休んでいるね……」
精霊はそう言ってよろけながら家に入って行った。
やっぱり大きいと運ぶの大変だろうな。
「今日はごちそうだな! 今すぐ解体するからダンナ、これで何か作ってくれないか?」
「わかった、考えておくよ」
「やった~! 私ウナギ大好きです!」
ミツキさんはやっぱりウナギ好きなのか。
じゃあ、あれを作ろう。




