919話 仕事仲間
――翌日。
集会場で朝食を食べていると、周りは王女2人が来る話で盛り上がっていた。
もうみんなに広まっていたのか。
特に――。
「レイちゃん、リンナちゃんが来るってほんと!?」
聞きつけたセーレさんは慌てて俺に駆け寄ってきた。
そういえば、セーレさんはリンナさんが王女ってことは前から知っていたようだ。
親戚であるリリノアさんがうっかりしゃべってしまったとかで。
「はい、息抜きとして来るようです」
「そうなんだ! 急に王城に戻ってお別れの挨拶も何もしないでカルムを去って心配していたけど。よかった〜もう会えないと思った〜」
ハハハ……、俺を追ってそのまま帰ったとは口が裂けても言えない……。
まあ、久しぶりに会えることを楽しみにしているなら、気まずい空気にはならなそうだ。
「はぁ……、リンナと再会か……。俺はどう接すればいいんだ……」
王女と知らないアルロさんはため息をついていた。
それが普通なんだよな。
「今まででいいと思うわ。堅苦しい口調で話し込んだら逆にリンナちゃんが嫌がるわよ。ギルドで共に仕事した仲なんだから失礼なわけないでしょ」
「そう言われると逆に困るぞ……。セーレだから言えることだ……」
立場的にはそうだよな。まあ、実際再会すれば何も問題はないとは思う。
杞憂で終わりそうな気がする。
昼過ぎになると――王様から連絡が来た。
『リンアイナとクラーラを1週間後にお願いしてもいいかな?』
「いいですよ」
『ありがとう、じゃあ、2人に伝えとくね』
「それにしても1週間は意外ですね。リンナさんのことだから早く準備するかと思いました」
『いや〜、本当はなら早く行きたいんだろうけど、こっちに問題があってね〜』
「問題ですか?」
『ジョセフィーヌのことでね。昨日会ってわかっていると思うけど、なぜリンアイナとクラーラがジョセフィーヌと一緒にいると思う?』
よく考えたらあそこでお茶をしているのは珍しかった。
意図的に一緒にいたということは……、あれなのか……?
「もしかして……騎士が変なことをしないように見張りをしているとか……?」
『正解、そうなんだよー。2人がいないと勝手に部屋の中に入って仕事放棄しそうだからねー』
マジかよ……。なんで王女2人が尻追い組の監視をしないといけないんだ……。
というか見張り仕事の意味……。
「じゃあ、ジョセフィーヌの監視が終わらないかぎり来れないと……?」
『そういうこと、レイ君も急に言われて、用意で大変だと思ってそれくらいにしたのさ』
「では、ジョセフィーヌをもうすぐ解放されるのですね」
『その件でお願いしたいのだけど、英雄様と相談してジョセフィーヌをレイ君のとこでしばらくお預かりしてもいいかな? さすがにソウタ君と一緒に仕事させるのはいろいろと問題が起きるからね』
契約したとはいえ、あくまで元敵だ。扱うのは慎重ってことか。
ということは王城で監視すると、尻追い組が暴走するから俺の領地に行かせてくれと。
完全に押しつけているが、想定内だ。
「わかりました。しっかり面倒をみますよ」
『何から何までありがとう。ソウタ君も一緒に行かせることにしたからよろしくねー。じゃあ、また連絡するから』
ソウタも? どうやらアマーニから解放できるようだ。
でもソウタの休暇はとっくに終わっているはずだが?
まあ、ジョセフィーヌと一緒に過ごせる時間を与えたのかもしれない。
そのあとから仕事だろうな。
それはいいが、問題なのはトリニッチさんだ。
問題を起こさないように距離を置かなければならない。




