916話 悪魔祓い……
エフィナは動揺せずに笑顔だった。
「一応確認するけど、ソウタが悪魔に取り憑いているってわかったの?」
「私との聖なる儀式を拒否するのです。聖騎士様が消極的になさるのはおかしいです。それもあの女――大精霊と偽っているあの悪魔の女に惑わされて契約されたに違いありません……。その悪魔の女に下僕である悪魔を取り憑かせたのです……。聖騎士様を暗黒騎士にさせようと……。ムキィィィィィ! 思い出すと腹が立ちます! 早く聖騎士様をお救いしなければなりません!」
えぇ……、虚言にもほどがある……。
よくそんなでたらめな作り話にできる。
ドン引きです。
聖なる儀式って隠語のように使っているが、俺からしたらネタでしかない。
ただ、ジョセフィーヌと灼熱の夜を過ごしているから、アマーニにだと足りなくなって不完全燃焼だと思う。
エフィナさん、必死で笑うのを我慢している。
「何がおかしいです!?」
「ごめんごめん、あまりにもソウタに思いやりがあって素晴らしい司教だなと思って」
「当然です! 私は聖騎士様を導くことが仕事であり使命でもあります! そして妻として支えなければなりません!」
まだ結婚していないだろ……。でもティーナさんから認められたから結婚したも同然か。暴走はしているが、退屈しない日々が続いてソウタは幸せだなー。
俺は羨ましくはないけど。
「そうだね〜。妻として当然だよね〜。そんな君に悪魔を浄化させるお清めの薬をあげるよ」
お清め? エフィナは無限収納から金のコップに入ったドス黒い液体を取り出した。
そういうことかよ……。
『なんでメアの滋養強壮薬を持っている……?』
『レイに飲ませると大変だからボクが没収したよ。捨てるのもったいないから取っておいたよ』
だから自信があったのか……。そう考えると、ソウタを中二病にさせてアマーニを治したように錯覚させるようです。
だが、不安材料なのが、ソウタはジョセフィーヌと契約したことで強化されている。
もしかしたら耐性がついて中二病ならない可能性もある。
リスクがあってもメアの薬を信じるのか?
「なんですかこの不吉のような液体は!? 余計に悪魔が好むような飲み物ではないですか!?」
その前に警戒して受け取りませんよね。
さすがにアマーニはそこまで単純――。
「失礼だね〜。これは賢者が開発した薬にケチつけるなんていい度胸しているね〜。試しにソウタにこれを見させたらわかるよ」
「賢者の薬……。わかりました、中にお入りください。もし、悪魔がこの液体を見て嫌がるのなら認めましょう」
信じるのかよ……。嫌うって……もう飲ませるの確定した……。
教会の中に入ると、ティーナさんの像の前にソウタはぐったりしていた。
「ソウタ〜、いや、そこの悪魔くん〜、これはなんだと思う〜」
「エフィナか……。俺を助け――何を持ってきたんだ……? まさか……」
「君に愛情たっぷりの薬だよ〜。拒否するとは言わないよね〜?」
「やめてくれ、俺はそんな気分ではない!? いいから解放くれ!?」
「あれだけの拒否反応……本当に賢者の薬でしたのですね……。申し訳ございません……」
誰もが見ても拒否するだろう……。天然なのか?
「いいよいいよ。早く飲ませてソウタを助けてね〜」
「はい! さあ、悪魔よ、浄化しなさい――」
「やめろ――――ゴボゴボボボ!?」
ソウタは教会関係者に無理やり口を開けさせられてアマーニから薬を飲ませれた。
白目になりながら抵抗せずに飲み干した……。
「か、身体が疼く……、聖女よ……。我の聖剣が暴発してしまう……」
「聖騎士様! お戻りになられたのですね!」
強化されても効き目ありますね……。いや、その前にソウタはいろいろと拷問のようなことをされていたし耐性ダウンしていたかもしれない。
「疼く……疼いてしかたない……。早く儀式を……」
「もう聖騎士様ったら人前で……」
アマーニは顔を赤くしているが、俺は呆れるしかなかった。
「アハハハハハ! よかったね〜、治って〜」
「本当にありがとうございます! すぐにでもお礼と言いたいのですが、聖騎士様とこれから儀式をしなければなりません。後日でもよろしいでしょうか?」
「いいよいいよ。これからが大変なんでしょ? 儀式でもなんでもやっちゃいなよ!」
「ありがとうございます! この恩は必ず――聖騎士様、もう少し耐えてください」
「ああ……疼く……聖女よぉぉぉぉ……」
ソウタは十字架に縛られたまま教会関係者に運ばれてアマーニと奥の部屋に行ってしまった。
これ……ジョセフィーヌにどう報告すればいいんだ……?




