895話 精霊を解放させる⑩
停止しているマナイーターに近づき――。
「――――絶無!」
切り込みを入れると時魔法が解除される
「ちょうどいいタイミングだったね」
エフィナは嘘をついている。タイムストップはかなり魔力を消費するから、切り終わった瞬間に解除させた。
まあ、それ以上使っても負担がかかる。使うのは助かるが無理をしないでほしい。
とはいえ、おかげで簡単に無効することができた。
マナイーターは浮遊することもできなく何もできなくなった。
もうただの球体だ。
『ナ、ナニもできナイ!? ドウシテ、おまエらがイル!?』
「仲間を犠牲にしてまで精霊を奪いにくる奴に知る必要はない――――クリスタルソード! ×2」
俺は魔法で結晶の剣を2本創り、マナイーターに振る――。
「――――極晶乱華――」
『イヤダ、死二タクナイ!? グリュムサマ、タスケテクダサイ!』
その瞬間、マナイーターから禍々しい魔力が湧き上がり剣が弾かれてしまい、高速で空高く飛んでしまう。
うそだろ……完全に無効にしたはずだ……。
いや、頭上からコイツより禍々しい反応が……タイミングが悪すぎだろ……。
グリュムが黒い翼を広げて飛んでいた。
「グリュム……、やはり自分自信の身体を捨ててなかったか……」
エフィナは膨大な魔力を出して怒っていた。
そういえば、エフィナと戦ったときは勇者の身体を乗っ取っていたはず。
じゃあ、エフィナに倒された後に残しておいたのは、保険のためだったのか?
違う、自分の身体を捨てるはずはない。大事な身体を残すはずだ。
「チィ、遅いと思えばこのザマはなんだ? それでも誇り高きエルフか? 今は魔力を吸い取るしか能がないやつに変わってしまったか」
「話す余裕があるとは、随分偉くなったね――――絶創!」
エフィナは創造の魔剣を出して切りかかろうとするが、白刃取りで受け止める。
「フッ、弱い。もう私はキサマより強くなった。完全なる神になった私に攻撃など通用しない」
「じゃあ、神になったお祝いとしてこれを送るよ――――カタストロフィ!」
「――――ギャアァァァァァ!?」
エフィナは創造魔法を使うと――グリュムの身体が破裂して消滅する。
やったのか?
しかし、禍々しい靄に変わって集まり、元の姿に戻った。
やはり普通では倒せないか。
「キサマ……私に何をした……?」
「なにって、お祝いを送っただけだよ? あれー? 神になっても痛覚があるなんておかしいなー」
「キサマ――」
「レイ、今だよ!」
エフィナが時間を稼いでくれたおかげで準備ができた。
俺は結晶の魔剣を【絆】化させ――大剣に変えてグリュムの目の前にいる。
これで終わりだ――。
「チッ、あとは頼んだぞ。褒美はくれてやる。その代わり死ぬ気でこいつらを倒せ」
振りかかった瞬間、グリュムは消えてしまった。
逃げるだけは速いな。あともう少しだった……。
「レイ、残念だったけど、マナイーターを倒そう……」
エフィナの言う通りだ。悔しがるのはあとにする。
上にいるマナイーターは禍々しく光り輝いて変化し始めた――。




