890話 精霊を解放させる⑤
俺たちが待っていると、次々と精霊が集まってくる。
しかも警戒せずに近寄って興味を持っていた。
「あはは! くすぐったい!」
特にルチルはすごい抱きついたりどの精霊でも人気である。
やはり精霊の魔力で創られたら好かれるわけだ。
「うんとね〜。この人はすごい偉い方だよ〜。それにすごい優しくて〜。ウチを良くしてくれるの〜」
エクレールは集まった精霊になりふり構わず俺のことを言う。
近くで言われると恥ずかしいが、これも精霊たちが違う場所に行っても不安にならない。
そう考えて言っているわけではないが、ナイスである。
「あとこの人はね〜。1日中〜猛獣になってすごいよ〜」
なぜかソウタ事情も教える……。当然だが、猛獣の意味を知らずに首を傾げる。
「エクレール、お兄さん猛獣は失礼よ――」
さすがにスカーレットさんも注意――。
「――淫獣と言うべきよ。毎日襲ってきて大変だから」
あなたも何を言っているのです……?
それを聞いた精霊はドン引きしてソウタにゆっくり離れていく。
もしかしてソウタをこれ以上、増やさないようしたいのか?
「俺は淫獣じゃない!? 変なこと吹き込まないでくれよ!?」
ソウタは反論するが、周りは擁護すらしない。
これもソウタのためだ、仕方がない。
「みんなが悲鳴を上げているがどうした?」
ノッシュが精霊を連れて戻ると、察知したようだ。
精霊たちはノッシュに近づいて伝えているようだ。
「ああ……、そういうこと……。君……今後、みんなに近づかないでくれないか……? みんなに欲情されては困る……」
「誤解だ!? 俺は精霊になんて欲情しないぞ!」
いや、エクレールのは欲情しているだろ……。嘘つくのではありません。
「ノッシュは精霊が言っていることがわかるのか?」
「ああ、君たちは聞こえないのか?」
精霊との子であるからそこは聞こえるのようだ。
「ある程度成長しないとわからないぞ。たとえ契約者でもな」
「そうなのか? 精霊と仲が良いのに不便だな。今後みんなが言っていることは僕が伝えるよ」
「悪いな、こっちの都合に合わせてもらって」
「いいんだ。ここに閉じ込められているのはごめんだ。あと君の大精霊がほかの子を連れてくれば最後だ――」
「お待たせー。これで全員集まったのかな?」
リフィリアも複数の精霊を連れてきた。
周囲を確認したところ、遠くにいる魔力――精霊はいない。
全員連れてきたことになる。
「急で悪かった。心残りもあるだろうが時間がない」
「いいさ……、もう僕たちの故郷は燃やされて心残りなんてない……。早くここから出たい」
ノッシュは寂しそうに言う。
そうだよな。閉じ込められてところは逃げた場所だしな。早く移動したいのは本音だろう。
「わかった。じゃあ、アルカナ頼むぞ」
「はいです! 皆さん、こっちに来てくださいー」
アルカナはスキップしながら先導するが――。
地響きが鳴り、歪んだ空間が消える。そして地面に特大な魔法陣が出現した。
最悪だ……空間魔法を無効にする魔法陣だぞ……。
面倒なことになった……。




