889話 精霊を解放させる④
もう少し近づくと――紫のハーフパンツとTシャツを着た銀髪のおかっぱでリフィリアと一緒で羽が生えてはいない。
中性的な顔だが、少年の声で男だとわかった。
「あの子、精霊とエルフの混血で性別は男か。精霊は基本性別は女だけだけど、混血とはいえ男は珍しいね。精霊との子どもが生まれるのも相当珍しいのもある、あの子そのものがすごく珍しい。そうなると、かなりハーレムだね〜」
エフィナはわかっていたか。たしかに精霊は女しか見たことがない、男はいないのか。
ハーレムって……好きでそうなって精霊と暮らしているわけじゃないから仕方がないことだ……。
それはいいとして、周りにいる精霊は俺たちを見向きもせずに悲しんでいた。
帝国軍の件もあって警戒はするかと思ったが違う――リフィリアが大精霊のことを言ったようだ。
俺たちに構う暇なんてないだろうな。
「僕は賛成だが、少し待ってくれないか? 大精霊がいない今、みんながすぐ受け入れてくれない。説得する時間がほしい」
交渉に時間がかかりそうと思ったが、あっさり承諾してくれた。
ただ、そのあとがそうなる。ここの周辺にいる精霊以外に奥にほうにかなりの数がいる。
ざっと数百以上はいる。
「ありがとう。私も説得するからここに集めて、お願い」
「もちろんだ。閉じ込められて、みんな不安でしかなかった。ようやく落ち着ける場所に行ける……。あの大精霊もきっと喜んでいるだろう。みんな、ここにいない者を呼んで集めてくれないか?」
周りはその発言で精霊は頷いて奥にいる精霊のほうに向かった。
「ごめんなさい……。最悪な結末になってしまって……」
「謝る必要はない。僕たちが無力のせいで大精霊を失ったのだ……。むしろ、大精霊を解放してくれたことに感謝したい」
そうは言っているが、魔力が不安定だ。周りを優先してつらいのを我慢している。
どういう関係だかわからないが、大切だったのは間違いない。
「本当にごめんなさい……。みんなも来たことだし紹介するね――」
リフィリアは近づいてきた俺たちを紹介した。
「僕たちのためにこんな大勢に来てくれてありがとう。僕の名はノッシュ。見ての通り、精霊とエルフから生まれた混血だ。精霊から生まれたからといって飛ぶことはできない。そこは理解してくれ」
自分で混血とか言うのは意外だった。
飛んでいないと思ったらそういうことか。遺伝するわけではないか。
「少し聞きたいが、ノッシュの両親はどこにいる?」
「もう100年以上前に父と母は亡くなっている。申し訳ないが会うことはできない」
なるほど、かなり長生きしている。だが……この身長で成熟なのか?
こうして見ると小人と変わらない。
一例がなく、なんとも言えないが、100年以上も長生きしているならもう成長は無理かもしれない。
だが、魔力はかなりの量を持っている。リフィリアまでとは言わないが、周りにいた精霊より何倍も多い。
「いや、こっちこそ変なことを聞いてすまない。もし、いたなら馴れ初めでも聞こうと思って」
「マスター、ノッシュは、おとぎ話に出てくる大精霊とエルフの子だよ。絶対に間違いない」
マジかよ……。たしかに言われてみれば合致する。
ファルファも事実を言っていたし、本当かもしれない。
ただ……、サリチーヌに会わせたらテンションが上がっていろいろ聞かれそうだ……。
「おとぎ話? 僕からしたら君たちのほうがおとぎ話に出てくるような人だ。こうして人に会えるなんて珍しい。短い期間で悪い人と良い人に会うなんて思わなかった」
ノッシュとしては俺たちが珍しいのは当然か。
「じゃあ、なんで俺たちを受け入れたんだ? 普通なら警戒はするだろう?」
「僕は魔力で判断する。外から君たちの良い魔力を感じ取った。それだけだよ」
まさに精霊とエルフの子だな。彼を甘く見てはいけない。
「そうか。それならいいよ」
「じゃあ、僕もみんなを呼ぶから、君たちはそれまで待っていてくれ」
そういうと、ノッシュは精霊たちのほうへ向かう。
まだいろいろ聞きたいが、そんな余裕はない。領地に戻ってから聞こう。




