887話 精霊を解放させる②
「なにを躊躇っているのですか? 私がこんな簡単な魔法、解除――あいた!? なにするんですか!?」
アルカナは魔法を発動させようとするが、エフィナが頭をチョップして中断させた。
「君……。さっきのでわからなかったの? これを解除すると、グリュムが察知して何してくるかわからないよ? もっと慎重になるべきだ」
「考えても時間が過ぎるだけですよ。もし来たとしても私が責任を持って倒します!」
アルカナは胸を張って自信満々である。根拠がないのに、よく言えるな……。
「アルカナ待って、先生の言う通り慎重になるべきよ。中にいる子たちを守ることになるから少し考えさせて」
焦っていたリフィリアもさすがに慎重にならざるを得ない。
なぜ、グリュムはここまでして精霊を閉じ込めるのか疑問ではあるが。
何を企んでいる?
「考えすぎですよ。解除したらすぐに来るわけではありません。それに、閉じ込められている精霊はさほど遠くはありません。すぐ見つけて領地に帰ればいい話です」
そのすぐ帰るかの問題だ。閉じ込められてかなり警戒される。説得に時間がかかるだろう。
「へぇ〜、そんなに自信があるんだったら、敵が現れたら本当に全部任せるよ? その間にボクたちは精霊を説得する。それでいいならやっていいよ」
エフィナは投げやりになるなよ……。意地になってどうする……。
「決定ですね! 誰が来ようと私なんて敵わないですから――――アンチマジック!」
アルカナは無魔法を使い、歪んでいる空間に人差し指で触れると――歪みが消えて完全に消滅をした。
重なっていた層まで消滅させるとは……。大口叩いていただけのことはある。
「さあ、行きますよ!」
まあ、アルカナの強さは疑ったことはないが、慎重になってほしいのは本音だ。
「すごい……、私が苦戦していたのに簡単に解除されるなんて……」
アルカナは魔法関しては誰も負ける気がしない。しかも、【絶対無効】というチートスキルを持っている。リフィリアが驚いても無理もない。
魔力を最小限で解除できたのはある意味、アルカナを呼んで正解だった。
「少しはやるようだね。少しだけは」
「本当に少ししか使ってないので、当然です」
「そういう意味で言ったわけじゃないけど……」
少々アルカナは天然なところがあるから、皮肉を言われてもなんとも思わないだろうな。
「ありがとう、あとは任せて――」
「待って、アタシも行く!」
リフィリアとルチルは先に行ってしまった。
早く会いたいのが先走ってしまったか。仕方ない、今のところ外敵からの反応はないからいいか。
そのあとに精霊たちも先に行ってしまった。
「みんなせっかちだな。まあ、俺たちはあとから行ったほうが良さそうだ」
ソウタの言う通り、先に精霊同士で説得すれば、あとから来た俺たちは警戒されずに済む。
むしろ好都合だ。
俺たちも前に進むと――。
急に膨大な魔力反応が……違う――さっきの空間魔法が再び発動してしまった……。
「まさかここまでやるとはね……。時魔法も含まれていたか……。ただの空間魔法と思ったけど、【混合魔法】の一種だね……。また解除しないとこの空間から出ることができないよ」
再発動した瞬間、時魔法の魔力を感じたのはそういうことか。
また「アンチマジック」を使えば問題ないが、ここまで高度な魔法が使えるとは……。
【絶対無効】でも無理なのか……。
グリュム……、禁忌魔法だけかと思ったが、時と空間も使うのは相当な厄介な相手だ……。




