87話 魔剣モチベーション上がる
――翌日。
今日から生ハムを作る。
アイシスも手伝ってくれるからボアの肉を50㎏以上使用する。
精霊は紙とペンを持ってメモの準備をしていた。
気合いが違いますね……。
肉を1㎏位の大きさに切って大量の塩と胡椒、香辛料をしっかり馴染ませておく。
「フランカ、家の冷蔵庫借りていいか?」
「いいぜ! まさか冷蔵庫を使うのか?」
「そうだ、そっちの方が簡単に作りやすいからな」
フランカの家に移動して冷蔵庫に入れて1週間以上寝かせる。
この家の冷蔵庫は業務用で本当に助かる。
「なるほど……これを使って作るのか……」
精霊はしっかりメモをしてます……。
――10日後。
冷蔵庫から肉を取り出して水で馴染ませた塩を洗っていく。
よく水を切って冷蔵庫で3ヶ月ほど様子を見ながら寝かせる。
「あとは腐らないことを祈る」
『成功するといいね!』
「楽しみだね! 早く食べたい!」
「これで……生ハムメロンがたくさん食べれる……待ち遠しいです……」
「早くならないかな! 酒と一緒に多く食べたいぜ!」
みんな期待していますね……。
この様子だと50㎏以上でもすぐ終わりそうだな。
完成したらまた作るか。
今日はやることやったしゆっくりするか。
――5日後。
今日はみんなと一緒にミツキさんの商館に向かう。
フランカは武器の使用感を聞きたいらしく――行くことになった。
客間に入るとミツキさんが笑顔で迎えてくれる。
「お久しぶりです! 今日はどうしましたか?」
「ああ、アタイが作った武器の感想を聞きたいのだが、どうだった?」
「村の人は大絶賛していました! 今まで使った短剣で1番の切れ味だって、大喜びで1日中狩りに行っていました!」
やっぱり試し切りはしたいよな。
「そいつは良かった。不備がなくて安心したぜ!」
「とんでもございません! おかげさまで近くにいたオークをすぐ倒せました!」
オークかCランクの魔物で村の近くにいたとは厄介だな……。
それを聞いたウィロウさんとグラシアは苦笑いしている。
「ん、どうした2人とも? 何かあったのか?」
「いや……小人にミスリルの短剣を渡すとすごい強さだったぞ……オークを一振りで倒したからな……私でも2、3撃与えないと倒せないのに……」
いや、大陸最強の種族とはわかっているが……そんなに強いのか!?
恐ろしいです……。
「そうですわ……小人族は絶対に敵に回してはいけませんよ……狩ってきたのがバジリスクですわよ……2人で倒したみたいですわ……」
バジリスクもいたのかよ!?
2人で倒したのか……強すぎです……。
「そうなのか? まあ、楽に倒せるならアタイは満足だ!」
フランカさん……あっさりしていますよね……。
まあ、本人はバジリスクなんて一瞬で倒したから別になんともないか……。
「それで2人は武器を使ってどうだった?」
「魔力が通しやすくて道中の魔物も簡単に倒せて楽だったぞ! ありがとな!」
「わたくしも感激でしたわよ。魔法が早く発動しますので大変驚きました。本当にありがとうございます」
「いいってことよ! よし、次も作る時はこの加減でちょうどいいな!」
やっぱり加減して作っていたのか、確かにそれ以上の物を作ったら大変なことになるな。
「本当にありがとうございました! これであそこの辺境に行けると思います!」
「辺境か? そこに何かあるのか?」
「はい! ハチミツがあります!」
…………ハチミツだと!?
「すみません、詳しく教えてもらっていいでしょうか?」
「いいですよ! 実はですね――」
ミツキさんの話によると商人仲間から仕入れた情報でここから北西1200㎞以上に離れた山奥の辺境にハニーハンターと共存する村があると確認できた。
そこに行こうと思ったが、魔物の数が多くて倒してもキリがなく刃がもたなくて断念したらしい。
今ならもらったミスリルの短剣と護衛がいるから安心して行けるみたいだ。
これは本当の情報なのか?
でも行く価値はあるよな。
……って!? アイシスさん……目が輝いていますね……。
『おもしろそうだね! この前、レイがハチミツ探しに行くとか言ってたよね? 一緒に行けば?』
予定がないから俺は大丈夫だけど、ついてっていいのかな?
ダメ元で聞いてみるか。
っと、その前にみんなに確認をしないと。
『ハチミツ探しにミツキさんついて行こうと思うが予定は空いているか?』
『私は問題ありません! 予定があっても優先します!』
やっぱりアイシスは甘い物に揺るがない信念がありますね……。
『アタイは甘ったるいのには興味がないけど、道中の魔物の素材が欲しいからいいとは思うぜ』
『私はマスターとならどこでもついて行くよ!』
決まりだな。あとはミツキさんに許可をもらわないと。
「あの、もしよろしければ俺たちも同行してもいいですか? ハチミツはすごく欲しいので……」
「レイさんたちと一緒に……」
あれ? 身体を震えさせている……。
さすがに商人として自分で取りに行って商売したいよな……ダメか……。
「だ、だ、大歓迎です! よろしくお願いします!」
飛び跳ねて大喜びしています……あっ、いいんだ……。
それを聞いたアイシスは軽めに拳を握りしめてガッツポーズをしている。
「わ~い! レイさんたちと一緒に行ける! 楽しみだ!」
そんなに嬉しいのか!? 何故に……?
「本当にいいのですか?」
「もちろんです! まさかこんなすぐに夢が叶うなんて思いませんでした!」
「良かったですね。ミツキさん」
「良かったですわ。ミツキ様」
「夢ですか?」
「はい! いつかレイさんたちといつか旅をしたかったのですごく嬉しいです!」
なんで俺たちと旅がしたかったのか!?
『完全に好かれているね~まあ、こんなに良くしているから当然だね!』
そういうことか……信頼関係がいいってことにしよう……。
「ハハハ……そうですか……よろしくお願いします」
「はい! 予定は明々後日です! 朝早くに行きますので商館の前で集合をお願いします!」
「わかりました」
「レイたちが入れば道中の魔物なんて余裕だな! 助かるよ!」
「レイに賢者の弟子2人、それに精霊が行く……フフフ……この旅はなかなか、おもしろそうになりますわね……。よろしくお願いしますわよ」
2人に期待されています……まあ、このメンバーなら恐いもの知らずだけどね。
「では、いろいろと準備しますので失礼します」
「わかりました! 当日はよろしくお願いします!」
ミツキさんは笑顔で大きく手を振って見送ってくれた。
今回は長旅になりそうだ。
道中の魔物も多いことだし、あとそこの村でハチミツがあったならいろいろと商談とかありそうだな。
多く見積もって3週間以上かかりそうだ。
まずは食事を作り置きした方がいいな。
屋敷に戻り――料理の準備しようとすると――。
「ご主人様、私が食事の用意は全てお任せください! ご主人様はほかの用意をお願いします!」
「えっ? いいのか……じゃあ、頼んだよ……」
「はい! 喜んで、ご主人様!」
気合が違いますよね……よほど楽しみにしていたのか……。
『アハハ! 氷の魔剣なのに燃えている! おもしろい!』
「好きな物に対してやる気満々はわかるが、そこまでとは……」
フランカは少し冷めているけど、気づいていないのかな?
「フランカはハチミツに興味なさそうだけど、もしかしたらそこの村にハチミツ酒があるかもしれないぞ」
酒と言った途端にフランカは頭を抱えた。
「しまった――――!? 忘れていた――――!? ダンナそれを早く言ってくれ! アタイにできることはないか! なんでも言ってくれ!」
気づいていなかったらしいです……。
「いや……フランカの家で泊まるから、ミツキさんたちにも貸してほしいくらいかな……」
「そんなのお安い御用さ! そうなると、家の中を掃除しないとな! さて、今から始めるか!」
「私も手伝う!」
「おう、よろしく頼むな! 待っていろよ~アタイの酒!」
フランカと精霊は掃除しに行った……。
みんな燃えていますね……。
『アハハ! 楽しそうでいいね!』
エフィナさんも楽しそうで何よりです……。
そうなると俺は――マナポーションを多めに買って、ギルドのみんなに心配かけないように遠出することを伝えるか。




