878話 感謝……
話が終わり、ハナヨのご好意で貸切の源泉かけ流しの檜風呂に入ろうとすると……、次々と中に入ってくる……。シャーロさんとシルセスが入ってくるのがわかるが、チヨメも顔をタオルで隠して赤くして入ってきた……。
「チヨメ、無理しなくていいぞ……」
「無理はしていないですよ。レイさんだから大丈夫です……。それに、この温泉は濁って身体は見えないので平気です……」
そういう問題ではないが、なぜ俺はいいんだ……?
深く考えても無意味だ。いいのならそう思っておこう。
チヨメは身体を洗って躊躇わずに入ってきた。
「あの……レイさん、いつもありがとうございます」
「急にどうしたんだ? お礼を言っても何もでないぞ?」
「そういうわけではありません。これまでしてたことに感謝しています。叔父さんのことも考えてくれるなんて思いもしませんでした。私のワガママでここまでしてくれる人はいません」
「まあ、チトセにいろいろとお世話になっているし、そのお返しだと思ってくれ」
「お母さんにお世話になっていたしても、感謝しきれません。これからもお世話になるのでよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
ただ感謝を伝えたかっただけなのか?
別に風呂で言う必要はないが?
「では、レイさんがお風呂に入るときはご一緒しますね」
「おいおい、その言い方、心を許した発言だぞ……。冗談はやめてくれ……」
「フフフ、ご想像にお任せします……」
なぜか笑いながら答える。当たり障りないことで困る……。
意外にチヨメは天然なところがある。俺を意識しているわけではなさそうだ。
「主とチヨメ……、もしかすると孫の顔が拝めるときが来るのか……」
おいライカ、にやけて鼻血を出すな……。まったく変な想像するなよ……。
というか俺は認めているのかよ……。
ライカの発言でシルセスは俺に熱い視線を送っています……。
「はぁ……、みんな欲情して……ほんと、なにやってんだか……」
シャーロさんは呆れて言うが、あなたも少し加担して人のことは言えませんが……。
このままシルセスに襲われそうなので湯船から出ようとするとみんなついてくるのですが……。
えぇ……。
ハナヨから受け取った浴衣に着替えて外に出ると、先に入っていたコトハとナノミがニヤニヤして待っていた。この感じ、チヨメに何か言ったな……。
「レイさんは罪な男ですね」
「いや、何もやってないが……」
「それが罪っていうのです。そうですよね、チヨメさん?」
「フフフ、そうですね」
チヨメは何を言っている……。誤解を招く発言はやめてください……。
「あーあ、私もそういうのしたいなー」
そう言いながらコトハはシルセスを見る。まだシルセスを諦めていない感じだな。
「あ、あの、シルセスさん、お願いがあります。私たちと一緒に散歩しませんか? できれば男の姿で」
ナノミが頭を下げてお願いをする。やはり諦めていないようだ。
「いえ、結構です。これから王のお供をするので。もう男に戻る気はありません」
そっけない態度で言われて2人は放心状態です。
これは……ドンマイと言いようがない。もうシルセスは子孫繁栄しか考えてない。
はぁ……仕方ない――。
「今回だけいいんじゃないか? せっかくの遠出だ。2人は良い思い出づくりを残したいと思っている。悪いが王の命令だと思ってくれ」
「王の命令なら仕方ありません。1時間だけですよ――」
そう言ってシルセスは男の姿になった。けど、2人はあまり良い顔をしなかった。
「「さよなら私の青春……」」
余計なお世話だったか……?
落ち込みながらでも2人はシルセスと散歩に行った。
「ドンマイ……きっと違う恋が見つかるよ……」
チヨメは虚しく手を振って見送る。
あの2人に幸せが来るように拝んでおくとしよう。
さて、戻って明日に備えるとするか。




