876話 お付き合いするいぬっころ
流れの速い川に着くが……、小人たちが全裸になって潜りながら何か捕まえているようだ。
意外に深いな……、小人が余裕で沈むくらいの深さだ。流れは速いが、この程度なら小人たち流されないで余裕だ。
心配しているのか、鬼人数名いて様子を伺っている。
その隣で心配せずに黄昏れているライカ聞くと――。
「ウナギだ。子どもたちは、すばしっこいウナギを取るのに夢中だ」
ウナギがいるのか。すると、同行していたナゴミが両手上げて2m以上の大ウナギ捕まえて出てきた。
「ウナギゲット〜!」
そしてライカの目の前に投げて、ライカは電気を発生させて暴れているウナギを感電させて止める。ため息しながらでも、しっかり小人たちに付き合っている。
チヨメだけで頭いっぱいで何もしないかと思った。
「幼いのによく素手で取れるな……。オラには無理だ……」
鬼人は心配から関心に変わった。
ほかの子も次々とウナギを持って出てきた。
かなり大漁ですな。
「「「夕食はウナギの蒲焼きだぁ〜」」」
そう言いながら小人たちは川に潜っていく。
久しぶりにウナギを食べられるは嬉しい。
「はぁ……、こんなに多く取って処理が大変だ……」
とは面倒くさそうに言っているライカだが、尻尾を振りながらまな板と小刀を出して、白衣を着てウナギを背開きにして骨を取り除いてさばく。
なんだかんだ楽しみにしていますな。
それを見た鬼人たちは真っ青になる。
「きゃ、客人……この魚の血には毒がある……。素手でさばくいてはならぬ……」
この世界のウナギにも毒があるのか。そんなの知らないでさばいていた。
まあ、この世界のウナギの毒くらいなら全然大丈夫だが。
というか魔大陸に生息しているウナギはかなり強力なのか?
体格の良い鬼人が言うからそうかもしれない。
「ん? 儂に毒なんて効かんぞ? 儂は忙しい、お前たちの分も用意するからおとなしく見ておれ」
「そ、そうですか……。あ、ありがとうございます……」
まあ、どんなに強力だろうと俺たちには加護とかあるし、関係ないけど。
そうしている間に日が暮れて夕食の時間になった。
チヨメが帰ってきたお祝いとして、長老の家の周りで里のみんなで宴を始める。
テーブルの上にはチヨメの大好物の蕎麦と山菜の天ぷらが用意されている。
やはりここでも和食を食べるのか。
そして、かまどを借りてウナギを焼いて、どんどんテーブルに並べる。
「ここで取れたウナギ大好きなんです! みなさん、ありがとうございます!」
そう言ってチヨメはウナギの白焼きを食べて喜んでいた。
もちろん、ライカも尻尾を振って満面の笑みです。手伝ったかいがありますね。
だが、隣にいる長老はなぜ純米酒イッキ飲みして悔しがっているのですが。
「まさか父上以外に猛毒のウナギの下処理がしっかりしているとは驚きです」
ちょっと待て、コロイチ、猛毒と言わなかったか……?
「普段通りの焼き方だが大丈夫か……?」
「はい、血が毒なだけでしっかり下処理をして生焼けでなければもちろん大丈夫です。
ですが、キモのほうは1日水に浸してから焼くのをオススメします。そうしないとお腹を壊すので」
まあ、普段通りに作っていれば問題はないか。だが、素人には扱うのはだめだ。
「ちなみにどのくらい猛毒だ?」
「そうですね。血で塗った矢でオーガくらいの魔物にかすりさえすれば、数十分ほどで倒れます」
かなり強力だな……。素手で触っているライカを真っ青で見るのも当然だ。
「危ないと思っても食べるんだな……」
「はい、味は最高なので食べるのはやめません。まさか客人にごちそうを振る舞ってもらえるとはお恥ずかしい。ですが、せっかくなのでありがたくいただきます」
まあ、美味しければリスクなんて関係ないしな。
俺も焼くのを中断して食べてみると――あっ、一瞬で口の中から溶けてなくなった。
かなり脂がのっているがくどくなくあっさりして食べやすい。
臭みはまったくなく、ここの環境――川がきれいということは言うまでもない。
今まで食べた中で1番かもしれない。
これは猛毒とわかっていてもまた食べたくなる。
それを聞いたライカは長老に向かって誇らしげな顔をする。
そうやって挑発するのではありません。
せっかくの宴だ楽しくやろうぜ。




