870話 落ち着かない
リフィリアがいなくなって5日が経つ。
念話で伝えるが、返事をしてくれない。
いろいろと言われると思い、拒否をしているが状況くらいは伝えてほしいものだ。
「占いでは吉報ですよ。信じて待ってください」
アルカナは大丈夫とは言っているが、情報によるとまだ上昇していると聞く。それを落ち着けるわけはない。
「ここのところ落ち着きがないよ。もうリフィリアは子どもじゃないんだから、イスに座ってよ。ずっと歩いて疲れない?」
「疲れる以前の問題だ。エフィナだって会議で大混乱しているだろ? 王様以外のかなりのお偉いを呼んで大人数で大変だっただろ? というかなぜ俺を呼ばない?」
「レイは全部把握しているからいいの。レイが行っても解決なんてしないから」
もう解決するのは手遅れだ。世界中巻き込んで大騒ぎになるだろうな。
あと1週間経たないうちにほとんど広まる。
「領主様〜、助けてくださいッス〜! やっぱりリフィリアさんがいないと製造が半減するッス〜」
メメットは勝手に書斎に入ってきて泣きついてきた。
やっとリフィリアとカヤキが戻ってポーション作りがまともに再開できると思ったが、リフィリアがまたいなくなるのは、想定できなかった。
「別に発注とかされていないし、休んでもいいぞ?」
「前もって作り溜めしたいッス! 急な発注量があってもすぐに出せるようにしたいッス!」
これから忙しくなると考えての製造か。
「と言われても。いつになったら戻るかわからない。ほかに【調合師】持ちはいないぞ。」
「そ、そうッスね……」
「そんなに落ち込まなくとも……。じゃあ、領主命令で数日は休暇を取ってくれ。カヤキだって戻ってきたばかりで本調子ではないぞ。ゆっくり休んでくれ」
「そういえば助手君の同僚がいなくなったと聞いているッス。戻ってきてそうそ無理させたのは申し訳ないッス。わかったッス、ゆっくり休むッス」
メメットは納得して部屋を出た。
わかってくれたならいいや。
「レイもゆっくりしてなよ」
「俺は十分ゆっくりしている。身体はダルいけど」
「それ、落ち着いてない証拠、どこか行って息抜きしな」
落ち着きは関係ないが……。最近、朝起きるとダルさが昼間まで続くようになっている。そこまで動いてないのになぜかわからない。
「息抜きと言ってもな、今そんなこと――」
「レイさん、近日中にお父さんの故郷に行きたいのですが、レイさんも行きますか?」
チヨメはライカと一緒に書斎に入ってきた。
いきなり言われると急を要しているようだ。
「近日中とは急だな」
「さっき、帝国軍のことを言った。鬼の隠れ里はほかのところと離れて情報が入らない。できるだけ、外の情報も知ってほしいから急いでる」
なるほど、警戒するように言うのか。魔王軍が守るから秘境に行く前に倒すと思うが、用心に越したことはない。それと、空間魔法で移動できるようになればチヨメは安心はする。
「いいじゃん、息抜きがてら行けば? 少しは落ち着くよ?」
まあ、行く予定だしいいか。
「わかった。だけど、急すぎるから明後日でいいか?」
「ありがとうございます。では明後日よろしくおねがいします」
チヨメはお辞儀をして、ライカは尻尾をブンブン振って部屋を出る。
情報というわりにはライカはかなり嬉しそうだ。
久々にチヨメとお出かけだもんな。
予定通り過労のシエルはお休みさせてシルセスに頼むとしよう。




