864話 勇者との約束㉚
スールは高揚し、羽を羽ばたかせながら広範囲にに鱗粉を撒き散らす。
「なんだこの鱗粉、鼻につくような臭いは……」
「また変なことするわね……、みんなどうしたの!?」
リフィリアは鼻を塞いで言うと、精霊たちは地面に落ちて鼻息が荒く意識が朦朧している。
「まさかこの鱗粉……精霊には毒なのか……?」
「そうかも……。私の声聞こえる?」
精霊たちはリフィリアの声に反応はしなかった。
どうやらソウタが言っていることは間違いない。
「愛しの精霊よ! やっと王に忠誠を誓ったのですか! さぁ、私の胸に飛ぶこんでおいで!」
スールは精霊が屈服したと思い込んでいた。もちろん、精霊たちは意識が朦朧として立つことができない。
「どうして来ないのです!? そうか……、お前か麗しの精霊!? お前がいるから愛しの精霊が言うことを聞かない! 王に歯向かうものは王の糧になってもらう! ――――サイクロン!」
「勝手に吠え散らかしているんだか……――――サイクロン!」
リフィリアとスールの風魔法――暴風がぶつかり合い、互角の強さである。
「害虫な姿になったのに私と引きを取らなんて……」
「どうした麗しの精霊よ! 王の強さにひれ伏すがいい!」
「リフィリア、大丈夫か?」
「平気よ、ソウタにお願いがある。この子たちを連れて避難して」
「それはダメだ、いくらリフィリアが強いとはいえ、1人にできない」
「お願い……。これ以上……加減はできないの……」
そう言うとリフィリアは、膨大な魔力を出すと暴風が大きく――二重に重なる。
「――――ダブルサイクロン!」
「王の魔法が――――ギャアァァァァ!?」
スールの魔法そのまま飲み込み前進し、スールも飲み込んだ。
「お願い……」
「わかった無理はするなよ」
ソウタは察したのか、精霊たちを抱えて離れていく。
リフィリアは内心怒っていた。こんなくだらない争いに大精霊を巻き込んだことに。
風の魔剣を出して風の力で浮かした。
「この王の魔法を破るとはどうゆうことだ!? こうなったら地魔法で――」
「うるさい――――疾風閃!」
「――――ブエェェェ!?」
暴風が止むとスールは頭から地面に落ちるが、すぐさま魔法の準備をしていた。
しかし、リフィリアは一振りすると、風の斬撃をスールに襲いかかり吹っ飛んでいく。
「卑怯ではないか――――ブエェェェ!?」
スールが立ち上がるたびに斬撃を吹っ飛ばして何度も繰り返す。
そして身体――羽はボロボロになり、触覚が片方の外れ立ち上がることができなくなった。
「王になんて仕打ちを……あんまりじゃないですか……」
「さよなら害虫……、あの世に行って反省しなさい……」
リフィリアは魔剣を空高く浮かせ――剣中心に膨大な風が纏い、大きな剣が具現化する。
地面が剥がれて風に飲み込まれて粉々になるほどの威力だ。
「まままままま、待ってください!? 私を殺すのですか!? 私を殺してもレイが悲しむのですよ!? パパ上もママ上もそうだ! 私を殺しても悲しむの人がいっぱいいるんだぞ!?」
スールは命乞いをするが、リフィリアの魔力は余計に大きく放出し、風もさらに強くなる。
「卑怯でみっともない……。はじめからこんなことしなければ見逃したのに、許すわけがない……。マスターとその家族は、敵になった害虫に情けなんてかけない……」
「ヒイィィィ!? や、やめてくれぇぇぇぇ!?」
「――――絶空嵐裂剣!」
「――――ギャアァァァァ!」
リフィリアは大きな剣を一振りし――ド変態の身体は引き裂かれ、塵一つ残すことなく倒した。
「本当にバカバカしい……」
リフィリアは呆れるしかなかった。スールの精霊に対する執着が。
敵対してまで精霊と契約しようとするのは異常でしかないと。
「まだ終わりじゃない……。帰って整理しないと……」
リフィリアはこの戦いが終わってもまだ終わりではない。
大精霊がいた場所を探さないといけない。
ほかの精霊の安否を確認するために。




