851話 勇者との約束⑰
その暴風を見てリフィリアは魔法を使う――。
「――――サイクロン!」
ハヌヤより大きな暴風を発生し、ぶつけると――ハヌヤ側の魔法が消えてスールたち向かう。
「は、ハヌヤの魔法を突破しただと!? マズい――――ストーンウォール!」
慌ててスールが地魔法で大きな岩の壁を創り――ヒビが割れながらも防いでしまう。
「どうだ! これが精霊王の力だ! 大精霊が王に敵うものか!」
「大声で叫んでいるけど、バカみたい。威力が弱まった魔法を止めただけ」
リフィリアは呆れるしかなかった。精霊と邪石の力で強化されてもこの程度でしかないことに。
「魔王殺スゥゥゥゥ――――!」
ホリデグアは我慢できなかったのか、亀裂の入った大地を軽快に移動してアンバーに向かっている。
「さて、アイツの相手をするか。お前たち2人は邪魔だから遠くに避難してくれ」
カヤキとヒロヤは頷いて後ろに下がっていった。
「じゃあ、俺はド変態をやろう。プロミネンスたちは大精霊になった側近の相手をしてくれ。リフィリアはケイトを見てくれないか?」
「いいけど、大丈夫? それなら両方見てサポートするよ」
「前の借りがある。だから最初は俺たちでやらせてくれないか? そっちが早く終わったなら手助け頼む」
どうやらソウタは因縁の相手だから決着をつけたいようだ。
それと、スールの父である侯爵から頼まれている――スールに遭遇したら殺してでも止めてくれと。
これ以上、息子の愚行をさせないために。
侯爵家族――母と弟もそれを望んでいて覚悟ができているようだ。
「わかった。相手がド変態だからって気を抜いてはいけないよ」
「もちろん。じゃあ、魔王行ってくるぞ」
「ああ、皆も気をつけろよ」
リフィリアたちはド変態の元に向かう――。
「魔王殺シテヤルゥゥゥゥ――――!」
ホリデグアはリフィリアたちを無視して通りすがり――大きな尖った黒い角を向けてアンバーに襲いかかる。
「お前は能のないボアか? 仕方ない――」
アンバーは【竜装】で身体を白い竜鱗を纏って鎧にし、突っ込んできたホリデグアを角を両手で受け止めて放り投げる。
裂け目に落ちて鈍い音がするが――。
「殺シテヤルゥゥゥゥ――――!」
叫んでいてまったくダメージは入っていなかった。
「はぁ……角を折ればよかったな」
アンバーは角を折って裂け目に落とせばよかったと後悔していた。
そうすれば弱体化して楽に終わったと思った。
とりあえず、ホリデグアが上ってくるまで様子を見る。
「あのユニコーン、ここまで理性を失うとは使えない奴だ」
ノンダリは期待してホリデグアの突っ走るのを止めなかったが、リフィリアに攻撃せず、アンバーに投げ飛ばされて思う通りにいかなく辛辣に言う。
「そんなのは許容範囲です! さぁ、洗脳者から解放させましょう!」
「スール様、何か来ます!」
「――――スパイラルランス!」
リフィリアは螺旋状に回る巨大な風の槍を放ち――地面を深く抉ってスールたちに向かう。
「――――ヒィィィ!?」
魔法を発動する余裕がなくスールたちは避ける。
スールとハヌヤは右に避け、ノンダリは左に避ける。
「バカめ、こんな弱い魔法が当たると思うな!」
「――――フレイムウォール!」
プロミネンスは火魔法で深く抉った地面から炎の壁を創り、スールとノンダリを離した。
「チッ、そうゆことか」
ノンダリはリフィリアたちの考えたことがわかってしまった。
スールを引き離して連携を取らせないように。
「フッ、だが、ガキと大精霊でこの儂が止められると思うなよ」
ノンダリは向かってくるリフィリアとケイトだけが来るのは相当ナメられたと思っていた。
こうして3手に分かれ、戦いが始まった――。




