850話 勇者との約束⑯
反応が近づくと――地響きがなり、大地が引き裂かれ地盤が不安定なる。
「危ない!」
リフィリアは裂け目から落ちそうになったカヤキを風で浮かせて助けた。
「助かった……」
ほかの者は、落ちそうになる前に跳んで崩れてない地盤に移動する。
意外にもケイト、ヒロヤは反応して軽々と移動する。
「明らかに上級の地魔法だな。このタイミングでやるのはバカか、挑発しているのかどちらかだ」
アンバーは相手が魔法を使っていることがわかったが、発動タイミングに疑いをもっている。まだ距離があり威力が軽減するからである。
ある意味無駄打ちに等しい。
「気をつけて、下から何かやってくるよ」
リフィリアが魔力反応に気づくと――。下から出てきたのは巨大なヘビだった。
「アーススネークか。これが狙いだったか。だが、こんな雑魚のために上級魔法を使うのはバカげている」
アンバーは相手の行動に疑い続ける。
「相手の罠だったとしても切るだけだ――――炎尖剣!」
ソウタはアーススネークの頭上に飛び――剣に炎を纏い頭部を突き刺して身体を燃え広がり消滅する。
「ヒャヒャヒャヒャ! 洗脳者が来るとはこれも運命か! さぁ、精霊を解放しなさい!」
向かってくるのは――上半身裸で胴体に小さな邪石を無数付けてあざ笑うスールに、その隣には、金色のドレスを着た大精霊らしき金髪ショートが浮遊してスールを見つめいて、黒いロープを着た額に邪石を付けた長身坊主の谷貝栄一―――身体を乗っ取っいるてノンダリ・エリックラン、そして背中に大きな邪石を付けた筋肉質の黒色ユニコーン姿のホリデグアがよだれを垂らしている。
「そ、そんな……あの子の中に……ド変態大好きのハヌヤの魂が入っている……」
リフィリアはわかってしまった。あの大精霊の身体に2つの魂――支配しているのはハヌヤだと。大精霊の魂は薄くなって消えかかっている状態だ。
「はぁ……面倒くさいことになったな……。あいつ、ここまで落ちぶれるとは……、まるでパイコーンではないか……」
アンバーはホリデグアを見て呆れてしまう。ユニコーンと真逆――不浄の存在であるパイコーンの姿になったことに。
「マオ……殺ス……殺シテヤルゥゥゥゥ――――!」
ホリデグアはアンバーを見て前脚で地面を叩きつけながら荒ぶっている。
今にでも襲いかかりそうである。
「少しは落ち着け。まだお前の出番ではない」
「殺ス……殺ス……」
ノンダリの言葉で落ち着きを取り戻した。
「お前……谷貝の身体を返せ!」
「ケイト……、あの子魂は……」
ケイトは大声で叫ぶが、リフィリアは首を振る。
谷貝の中にある魂は1つしかなく、完全にノンダリのものとなった。
「嘘だろ……。あの辛抱強い谷貝だぞ!? 谷貝、お前の維持を見せてくれよ!?」
「やめろケイト! もう谷貝はいなくなった……リフィリアさんを困らせるな……」
「谷貝はまだ生きている! 諦めるわけにはいかない!」
カヤキが言っても無駄だった。ケイトは谷貝とは親しい仲であり、簡単には受け入れないようだ。
「室林、気持ちはわかるが、冷静になれ……。あいつは谷貝ではない……」
「そのくらいわかっている!? だから谷貝も取り戻して――」
ヒロヤも説得するが耳を傾けなかった。
その瞬間、ソウタはケイトの顔面を殴った。
「いい加減にしろ! はっきり言うが、谷貝は死んでいる! そこにいるのは帝国の奴だ! 目を覚ませ!」
ケイトは一瞬の出来事で何が起きたのかわからなかったが、ソウタが怒っているのがわかると、我に返って自分が感情的になって迷惑になっていると気づいた。
「す、すんません……」
「お前たちの仲は知らないが、見苦しいぞ! つらいのはカヤキとヒロヤも一緒だ! 現実を見ろ、これ以上、谷貝の身体で好き勝手させないことを考えろ!」
「ソウタさん……、わかりました」
「それでいい」
ソウタは内心ケイトが聞いてくれてホッとしている。
ウルマに言うことを聞かないのであれば殴れば解決するとアドバイスをもらっている。
汚れ役にはなったが、この状況では仕方ないと思っていた。
「お願いがあります……。谷貝は俺にやらせてください。俺の手で乗っられている奴を排除したいです……」
「それはダメよ。私たちがやるから後ろに――」
「わかった、やるがいい。死ぬ気で倒せ」
アンバーはあっさり承諾した。
「な、なんで!? 危険よ!」
「俺も構わない。ただし、絶対に勝てよ」
「もちろんです!」
ソウタも承諾すると、ケイトは膨大な魔力を出してやる気だ。
「なんでソウタも許可するのよ……。何かあったら私の責任よ……。ウルマに叱られるわ……」
「リフィリアさん、これは俺の暴走だと思ってください。師匠に怒られる覚悟でやります」
「もう知らないよ。自己責任でやって」
「ありがとうございます。待っていろよ谷貝……。楽にしてやるからよ……」
リフィリアも承諾してしまった。だが、3人はケイトを信頼しているのは間違いない。
邪石付きの相手でも大丈夫と。
そうでなければ止めはしない。
「スール様、あいつら仲間割れしています! 好機です! 私が魔法でケチらせましょう!」
大精霊――美声を出してテンションが上っている。
やはり中身そのものはハヌヤで間違いなかった。
「待ってください、私は精霊王ですよ。洗脳者から精霊を解放する役目があります。精霊も一緒に被害が出るので許可しません」
「で、ですが、私以外いなくてもいいじゃないですか!?」
「私は精霊王です! もちろん、あなたハヌヤが1番大事ですが、洗脳されいる精霊も大事です! 私には王の役目として――あらゆる精霊の子を産んで世界を精霊の楽園にするのです!」
「わ、わかりました……。チィ……」
ハヌヤのあまりよい返事をしなかった。せっかく大精霊の身体を手に入れてスールと最高の人生を送れると思った。しかし、スールはハヌヤだけでは満足できなかったようだ。
だが――。
「あ〜、手が滑って勝手に――――サイクロン!」
「何をやっているのですハヌヤ!?」
ハヌヤはワザと魔法を使って暴風を発生させ、リフィリアたちのほうに進んでいく。
もうハヌヤ大精霊の身体を手に入れてスールの独占欲が強くなった。たとえスールの命令を無視してでも誰にも渡さないと。




