849話 勇者との約束⑮
リフィリアは精霊の魔力が気になり、ほかの皆より前に進む――速く飛んでしまう。
「おい、大精霊! もうちょいペースを落とさんか! 俺は勇者の子守はしないぞ!」
アンバーは単行動になりそうなリフィリアに前に出て止めた。
「ごめんなさい……。どうなっているか早く知りたくて……」
「気になるのはわかるが、嫌な予感しかないぞ。あまり期待はしないほうがいい。オレの勘がそう言っている」
「そうだけど……。この目で確かめないとわからない……」
リフィリアは何かの間違いで帝国に騙されていると思っているようだ。
同胞を救おうと考えている。
「だが、見る前に魔力でわかるだろ? あともう少しでわかる」
「うん……」
2人は魔力で判断できるが、まだ明確に判断ができない距離だ。
見なくと嫌でもわかってしまう。
「おーい、やっと追いついた。リフィリア、先に行ってしまうとケイトたちのスタミナがなくなってバテてしまうぞ。もう少し考えてくれ」
ソウタたちも合流することができた。
ケイトとヒロヤはまったく息切れをしていなく余裕であるがカヤキはバテいて、自作したポーションをイッキ飲みする。
「ごめんね……。休憩でもする?」
「俺は鍛えているので大丈夫ですが」
「俺も大丈夫です。陸上部だったので体力には自信があります」
ケイトとヒロヤは日頃運動をしていておかげで余裕のようだ。
「気にせず……俺はもう大丈夫なので……」
さっきまでバテていたカヤキは無理やりポーションで体力を回復した。
「大丈夫ならもう少し進むぞ。そうしたら休憩をとってやる」
アンバーは指示で休憩を取らずに進むことになった。
――十数分が経ち、先導していたアンバーが足を止めて休憩することになった。
相手がわかる十分な距離となった。
「冗談かと思ったが……奴かよ……」
アンバーは大きくため息する。
嫌になるほど面倒な奴がいるとは思わなかったようだ。
そう、魔王を憎悪があるユニコーン――ホリデグアの反応だ。
「嘘でしょ……。精霊の隣に……ド変態の魔力がある……」
「マジかよ……。あのド変態……精霊と契約しているのか……?」
リフィリアとソウタもわかってしまった。
スールが精霊とつながっている――契約していることに。
ソウタの精霊たちは青ざめていた。
「どうして……ド変態が精霊と契約できたの……? 嘘だと思いたい……」
「そうだな……。しかも、かなりの上位だぞ……。リフィリアとまでとは言わないが、大精霊に近いぞ……」
2人はかなり困惑していた。スールがどうして大精霊に近い存在と契約できたのかわからなかった。
「お前たちも因縁がある奴か。相手がわかったならどうするつもりだ? 嫌なら俺がまとめて倒してやる」
「気遣いしてくれるのはありがたいけど、私たちの問題でもあるの。アンバーは自分のことだけ解決してね」
「そうだぞ。バカなことやっているなら止めるだけだ。魔王もそうだろ? 自分のことに専念してくれ」
精霊たちも頷いて止めることには変わらない。結果がどうなろうが受け入れるようだ。
「無駄な心配して損したぞ。お前たち、もう進むがいいか?」
ケイトたちは頷いて体力は回復しているようだ。
アンバーは文句を言っているわりには周りに気を遣う。
本当は皆を危険に晒したくないのは本音である。
それがアンバーの優しさだ。
休憩を終えて先に進む――。




