848話 勇者との約束⑭
そして急にキャンメラは裏声――下品な笑い声をあげる。
「シャシャシャシャシャ! 詰めが甘いガキさ! さぁ、お前たち私の下僕となりガキを殺すのさ!」
再び【魅了】を発動するが――周りは何事もなかった。
キャンメラは大きく口を開けて驚きを隠せなかった。
「なんでこいつらも効かないんさ!? 私の玩具もなんで効かないんさ!?」
「フフフフフ……ワタクシが、無防備だと思いましたか……? ババアのスキルを【妨害】をしたのです……。もう何もできないただのババアです……」
メアは【妨害】スキルで【魅了】を封じていた。レイが無効の魔剣を創ったおかげで自然に覚えたようだ。
もう手の打ちようがなくなり逃げることせず、ゆっくり膝をついてしまう。
「「「メイちゃんを返せ!」」」
駆けつけたエミカたちはキャンメラに問い詰める。
「無理さね。娘の魂はもう消えるさ。あと数時間経てば完全に私の身体になるさね。ハハハハハ、残念だったさね。拷問しても娘の身体が傷つけるだけで、お前たちにしか損しかないぞ」
「卑怯な……。メアさん、急いでレイさんの元に連れてってください! 早くメイちゃんを――」
「フフフフフ……そう焦らないでください……。主様が手を下さなくとも、ワタクシが汚いババアの魂を排除します……」
メアそう言いながら特大の闇魔法の準備をしている。
「もう娘の身体は私のものさね! 身体を傷つけようとしても無駄さね!」
「誰が身体を傷つけると言いました……? ババアの魂を消すだけですこと……。【妨害】のことを忘れたのですか……?」
「どういうことさね!? や。やめろ――――」
「――――ナイトメアジャッジメント……」
「――――ギャァァァァァア!?」
キャンメラは頭上に発生する闇の光が直撃し、奇声を上げて暴れ始めた。
そしてキャンメラの魂も身体の中で大暴れする。
メイの魂はなんともなく、徐々に大きくなり、キャンメラの魂を押し返そうとする。
「フフフフフ……良い夢を見ていますね……」
メアはその姿を見て満面の笑みだ。
キャンメロはこれまでやってきた因果が悪夢によって裁きが下される。
今キャンメロが見ている悪夢は――。
「や、やめてくれさ!? イタいぃぃぃぃ――!?」
光を通すことのない真っ暗の空間にいて、これまでキャンメラにやられた女性たちが何度も釘バットで顔を叩いている。
キャンメラに原型をとどめていない荒れ果てた顔を鏡で見せながら。
「や、やっと止まったさ……、えっ……? お前は……」
女性たちがその場を離れると――モーニングスターを振り回しているキャスリーの姿だ。
「何をしているのさ!? お前はこいつらを止めるほうだろ!? く、来るな!?」
キャスリーは何も言わず、狙いを定めてキャンメラの顔をぶつけた――。
「――――ギギャァァァア!?」
これがキャンメラにとっての裁きであり、何度も繰り返す悪夢だ。
現実のキャンメラは白目を向いて悶絶――精神が耐えきれず魂が消滅してメイの魂だけとなった。
「フフフ……これでババアはいなくなりました……。起きている頃には今まで通りのメイちゃんですこと……」
「「「メイちゃん」」」
エミカたちは涙を流して駆け寄りメイに抱きつく。
「まったく……お遊びしないで、手短にやってくれよ……」
ライカは呆れながらメアに近づいた。
「フフフ……結果オーライですこと……。それより……」
メアはキャンメラに操られていた男3人を見る。
「ああそれだが、あやつらは何も覚えていないようだ。責めるに責められないぞ」
「まあ、そうですね……。本当のことを言うかはエメロッテの診断結果ですこと……」
メイを救ってもキャンメラに身体を好き勝手されている。
メイ自信も乗っ取られているときの記憶があるかわからない状態だ。
救出してもまだ解決はしていない。やることは山積みである。
それでも無事に救出したことに変わりはない。
メアはエミカたちの笑顔を見てひと安心する。




