846話 勇者との約束⑫
メアはため息をつきながらも、次の魔法を準備していた。
「――――ダークランス……」
「見かけ倒しの魔法など効かんわ!」
大きな闇の槍を放つが、タントルトは片手に軽々と受け止めて黒い靄――禁忌を使って消滅する。
「チィ……、ザァコが強くなるとは気に食わないですこと……」
「タントルト! あなためっちゃイケメンになっているさ! 帰ったらお前を相手をしてやるさ。ありがたく思え」
「喜んで抱かせていただきます!」
キャンメラは姿が変わったタントルトに惚れてしまったようだ。
舌を舐めずり回して楽しみにしている。
もう勝利を確信したかのように。
「夜の話しをするとは、そんなに余裕があるのですか……? お気の毒に……」
「何が言いたい、お前を殺せばキャンメラ様と愛し合う権利をもらえるんだぞ!」
「はぁ……、メイちゃん身体で愛し合うとは、寝言は寝てですこと……ババアの身体ではないのですよ……」
「フン、この身体は私のものさ! あの娘はそろそろ抵抗しなくなって完全な私のものになる!」
メアは呆れて正論と皮肉を言うが、キャンメラは開き直っている。
しかし、メイの魂は薄くなってそろそろ限界に近づいていた。
「魔法が通用しないのなら仕方ありません……。できればザァコに使いたくはありませんでしたが――」
メアは闇の魔剣を出して、【魔力解放】で身体を変えた。
「また見かけ倒しか。女としてはおしいが、死ぬがいい!」
タントルトは黒い靄を放出してメアを飲み込もうとする。
「遅い――――刹那」
すでにタントルトの背後にはメアが移動して邪石を切ろうとする。
「小賢しい! こんなもの――ギャァァァア!?」
タントルトは振り向いて魔剣を片腕を防ごうとしたが、普通に切断してあまりの痛さに地面に落下してしまう。
「な、なんで痛みがある!? 再生もしない!? 不死の身体――グリュム様に近い身体だぞ!?」
「フフフフフ……所詮この程度のザァコでしかなですこと……」
「何をした!? 完全なる身体を傷つけるのは、ありえない!?」
タントルトは困惑していた。闇の魔剣の効果――妨害されていることに。
今まで禁忌を妨害できなかったが、主人であるレイが強化したことによって可能になった。
「ザァコに教えても理解不能ですこと……。そうでした、怒鳴ってばっかりのザァコが理解できるわけありませんか……」
「ガキが……ぜってー殺してやる!」
メアの挑発で飛び上がり片腕を禁忌で纏って殴りかかろうとする。
「タントルト! 挑発に乗るんじゃないさ!」
「――――闇月刃」
「――――ギャァァァア!?」
キャンメラが言っても遅かった。
メアは弧を描くように拳を真っ二つし、激痛で再び落下する。
メアは地面に落ちる隙を与えず近寄り――。
「――――闇閃刹」
「――――グギャァァァ!?」
闇を纏った渾身の一撃――身体を突いて背中にある邪石ごと貫通させ破壊する。
タントルトは灰になり消滅する。
「どういうことさ!? て、撤退さ! お前たち殿しろさ!」
キャンメラは真っ青になり輿を担いだ帝国軍に指示をして勇者3人を置いて逃げ、残りの帝国軍はメアの前に向かっていく。
「フフフフフ……もう遊びは終わりですこと……。ライカ……ザァコはよろしくお願いします……」
「まったく……そうだと思ったよ――――雷走!」
ライカは身体に雷を纏い向かってきた敵の邪石を刀で切っていき、メアは【飛行】で飛びながらキャンメラを追う。




