841話 勇者との約束⑦
「――――アブソリュート・ゼロ……」
サラマンダーは全身氷漬けにされてマグマは冷えて固まり岩となった。
「「「――――アクアチェーン……」」」
分身したマイヤは一斉に無数の水の鎖で縛り付け元に戻っても逃げさないようにする。
マイヤは膨大な魔力を魔剣に込めて終わらせるのようだ。
魔剣に水を纏い――。
「――――水裂閃衝刃……」
身体を切り続けると、切り口から亀裂が入り、次々と切断――炸裂して木っ端微塵にする。
そして2つの邪石だけが残り、マイヤはすかさず光魔法を使う――。
「――――ホーリーブレイク……」
手を握る素振りをし、聖なる光を圧縮して邪石を破壊する。
跡形もなく消えて反応がなくなりサラマンダーの消滅が確認される。
分裂したマイヤは本体とくっついて戻った。
「ふぅ……。やっと思った……」
マイヤは大量の魔力を消費して疲れたのかスライムになってぐったりする。
「お疲れさまです。氷魔法上級を覚えていたのは驚きましたが、光魔法の上位互換も覚えていたのですね」
「自然に覚えた……。これがチートの力……」
駆け寄ったアイシスにマイヤは手を作ってサムズアップする。
「それよりヨシマツ……」
マイヤは落ち込んでいるヨシマツを心配する。
「俺は大丈夫だ……。こうなることはわかっていた……」
そうは言うものの、自ら手にかけたのは後悔している。
アイシスはこれ以上言わないように目を閉じて察した。
ヨシマツにとって最悪な経験である。励ましたり、擁護したりするのは返って今後の影響を及ぼすからだ。
「ムムム……。ムッ――」
「――――グハァ!? なにするんだ!?」
マイヤは突然球体の形になってヨシマツの腹に強め――激突する。
「わかっているならなんで落ち込む……? 過ぎたことをくよくよするな……」
「当たり前だろ……。俺は……伊佐木を……」
「だから止めたのでしょう……? これ以上被害が出ないように……?」
「そうだけど……」
「少なくともヨシマツがやったことは……正しい……。もう誰も悲しむことはない……」
「けど……伊佐木の家族は――――グへぇ!?」
再び腹に激突した。
「家族がなに……? ここは異世界だ……。もし、伊佐木の家族が異世界にいるとして……子どもが人殺ししていることを喜ぶの……?」
「それは……ない……」
「ウチだったら絶対に止める……。普通の家族だったらそう思う……。それが責任というもの……。だから……伊佐木の家族の代わりに止めた……。だからヨシマツは正しい……」
マイヤ違った角度でヨシマツを叱る。口下手のマイヤにとってこれが精一杯の叱りかただ。
「ハハ……、わかった……。落ち込むのはやめるよ」
「うん……よろしい……」
「まさかスライムに説教されるとは思わなかったな」
「これでもウチは王都で教師をしていたから……」
「ハハハ……ユーモアあるスライムだ……」
「嘘だと思うますが本当ですよ。マイヤはご主人様と一緒に教師をしていましたので」
「本当なのか!? ハハハ……ご冗談を……」
アイシスが言ったことにヨシマツは信じていなかった。
自分を和らげようと冗談を言っているかと。
少しは落ち着きを取り戻したが、自分のやったことには責任はある。
ヨシマツはこれで終わりではない――元凶でもある帝国を倒すまで終わりないと思っている。
クラスメイトの敵を取るために協力すると誓う。




