838話 勇者との約束④
「俺の腕がぁぁぁぁ!? なんでお前はこの地獄の業火でケロッとしているんだ!?」
伊佐木にとってありえない出来事が起こってしまい、現実を受け入れていない。
「お前が知らなくていい。もう降参しろ。しなければ片腕を切るぞ?」
ヨシマツは伊佐木に剣を突き出して威す。クラスメイトとでも容赦はしなかった。
池垣敦の件で覚悟を決めた。これ以上、被害が出ないように。
「ざ、雑魚のお前に降参するかよ!? ――――マグマランス!」
伊佐木は魔法で――溶岩の槍を放つが、ヨシマツは盾を構えて防ぐ。
隙ができると伊佐木は慌てて逃げようとする。
ヨシマツは慌てずに歩いて追っていく。
「来るんじゃねぇ!?」
伊佐木は必死に溶岩の球を放ってかなり焦っていた。
「お前、勝てない相手だとすぐ逃げるのはいつもだな。自分が恥ずかしいと思わないのか?」
「うるせぇ!? 俺は逃げてねぇ! 死ねやがれ――――マグマウェーブ!」
伊佐木はは手を当てると――大量の溶岩が流れ込み、ヨシマツに襲いかかる。
「そんなのやっても無駄だ」
「バカめ! お前が大丈夫でも後ろがガラ空きだ! さあ、優等生、早く助けに行けよ! だがもう遅いけどな!」
ヨシマツは伊佐木の言葉を聞かずに、膨大な魔力を盾に注ぎ、地面に叩きつけながら付けて守りを固める。
「――――守護障壁!」
盾は魔力でコーティングされて溶岩から溶けることはなかった。
「お前!? 自分だけ守って後ろの2人はいいのかよ!?」
「なんでお前が心配している?」
「へ?」
溶岩はアイシスとマイヤに襲いかかるが、目の前にで固まって氷漬けになり、そのまま流れた溶岩を凍らせ、周囲は灼熱だったのが冷気が漂う極寒へと変わる。
「ど、どうなってやがる!? !? う、うごけねぇ!?」
伊佐木の足は氷漬けになり、身動きが取れなくなる。
逆転されて何が起きたのか混乱している。
アイシスとマイヤの「アイスミスト」は継続中で、通常の威力に戻しただけである。
「言っておくが、後ろの2人は俺よりも強いぞ」
「なんでメイドとちびっ子が強い!? あ、ありえねぇ!?」
「お前はいつも見かけしか見てない。昔から何もかわらないな。不良のフリをして見せかけているお前にはわからないか」
ヨシマツは哀れな目で伊佐木を見る。
「うるせぇ!? 俺は見せかけではねぇ!? また地獄に――ギャアァァァァァ!?」
凍った片足は砕け散って体制を崩してしまう。
もう氷に侵食されて身体が砕け散るのも時間の問題だ。
「これが足を踏み外した末路か……」
「なんでお前は凍らない!? インチキだ!?」
ヨシマツは伊佐木の言葉を聞き入れなかった。
ゆっくり剣を上げて――。
「さよならだ……」
「――――ギャアァァァァァ!?」
振り下ろし、頭を真っ二つにする。
ヨシマツは切るのに躊躇わなかった――伊佐木がやっていたことに救いようがないと。
だから感情を出さず、無心に切ったのだ。
「ヨシマツ、いいのですか? 汚れ仕事は私が引き受けたのですよ」
「いいんだ……。これ以上あいつの好き勝手させるのが黙っていられなかった……」
だがヨシマツは伊佐木を切って虚しく感じていた。
もっと、声をかければ不良みたいな性格にならなかったと、後悔が残る
「そうですか。私はこれ以上聞きません。しかし妙ですね……」
アイシスは疑問に感じていた――真っ二つにしてれば灰になって消滅するが、身体は残ったままである。
すると、邪石から禍々しく魔力が発生する――。




