835話 勇者との約束①
朝のことである――。
占拠――メデアコットに行った者は慌ただしく準備をしていた。
アンバーは部下――補佐である鬼人のエンデに指示をして魔王軍を門前に集める。
外――平地には邪石を付けた帝国軍が数千以上向かってきている。
「魔王様、準備が整いました。いつでも行けます」
「おおそうか。皆よ、聞け! 相手はただの雑魚ではない。これから厳しい戦いとなる。
だが、お前たちは鍛えられて強くなっているのはわかる。己の力を出し切ってくれ!」
「「「――――オオオォォォ――――」」」
アンバーは鼓舞し、魔王軍は雄叫びを上げ士気が高まる。
もうアンバーがひと声言えば皆は動く――臨戦態勢の状態だ。
「フフフフフ……テンションが上がっているところ申し訳ありませんが……。魔王……部下たちを待機させてください」
「どういうことだ小娘! お前たちの出番はないぞ!」
メア――魔剣たちと、ソウタと精霊、装備を整えたヨシマツたちが魔王軍の前に出て、結晶騎士組は出さないようにする。
何かを察したかのように。
「そっくりその言葉お返しします……。ワタクシはこの子たちの約束を守るために……」
メアは帝国軍の中にヨシマツのクラスメイトの魔力を察知したようだ。
「魔王さん、どうかお願いします……。この機会しかないのです……」
ヨシマツたちはアンバーたちに頭を下げてお願いをする。
しかし、アンバーはため息をついて呆れる。
「あのな……オレだってこの機会しかないぞ。お前たちのワガママなど聞いている余裕などない!」
「すまん、俺も確かめたいことがある。みんなを待機させてくれないか?」
「ソウタも何を言っている!? ビジネスパートナーとはいえ、容認はできんぞ!」
何やらソウタも確かめたいことがあり、お願いをしていた。
「アンバーお願い……。遠くの魔力を感じとって……すぐにわかるから……」
「なんだ大精霊、遠くの魔力だと? 禍々しい魔力しかない奴の魔力を感じとっても…………嘘だろ……。帝国側にいるのか……?」
リフィリアは頷いた。精霊側にも理由があった――帝国に精霊の魔力を感じとったからである。もしかしたら囚われていると思っている。
「なんでこのタイミングに……。面倒なことになったな」
「だから私たちは確かめないといけないの……」
「わかった。精霊に関係する者は許可する。けど、皆は待機にはさせんぞ」
「フフフフフ……、そんなことを言って大丈夫ですの……?」
「あのな……小娘、意味のわからんことを――」
「た、大変です、魔王様!? こちらに広範囲の溶岩が向かってきます!?」
偵察に行ったハーピー族が戻って慌てて言う。
噴火も何もないところに急に溶岩発生し、メデアコットを飲み込むほどの量が流れてきてる。
「どういうことだ!? あいつらなんの兵器を使っている!?」
「フフフフフ……、これで部下を強制的に待機になりましたね……」
「何を呑気なことを言っている!? ピア、魔導兵の準備をしろ! 死ぬ気で――」
「その必要はありませんこと……もうアイシスとマイヤが行っていますこと……」
溶岩が迫っているなか、2人――アイシスとマイヤ溶岩を止めに向かっていく。
「いきなり大役をやらせるとは困りましたね」
「本当に困る……。ウチがやらないとダメ……?」
「ダメです。私だけでも可能ですが、魔力軽減のためにお願いします」
「しょうがない……。わかった……」
2人は足を止めて、氷と水の【混合魔法】を使う――。
「――――アイスミスト」
「――――アイスミスト……」
周囲に霧状の冷気が発生し――流れてきた溶岩が一瞬で冷えて固まり、流れが収まった。
『終わりましたので、急いで来てください』
「では、魔王……ここの防衛はお願いしますこと……。セイクリッドたち……見張りと防衛お願いします……」
「承知した」
メアはアイシスの念話から報告を受け行動に移しだした。
「待て小娘!? 仕方ない、お前たち、オレが許可するまでここで防衛をしていろ!」
アンバーはセイクリッドたちの間を抜けて外に出て、アイシスと合流をする――。




