833話 周りの違和感①
――あれから1週間が経つ。
今日は何かと、周り様子がおかしい――。
――目が覚めると、イスに座ってエメロッテが驚いている。それも朝通り越して昼過ぎだった。
疲れが溜めっているわけではないのに、珍しく寝過ぎた。
寝過ぎたせいなのか身体がダルい。
これは……エメロッテが何かしたのか?
何か隠しているのか聞くと――。
「何もないよ〜。運動して少し疲れていたの〜。そのせいかも〜」
いや、エメロッテが最近運動していない。それに疲れるという言葉はない。
嘘だとわかった。
「別に怒らないから言ってみ?」
「あ〜、そろそろ運動の時間だ〜。食堂にいるシャーロちゃんに聞いて〜、それじゃあ〜」
エメロッテは慌てて窓を開けて飛んでいってしまった。
ここまで焦って逃げるとは、俺の身体に何かしたのかもしれない。
とりあえず、食堂に向かい――大量のお菓子を口いっぱいに頬張っているシャーロさんに聞くと――。
「エメロッテが……? ふーん……何かやましいことでもしたとか……?」
食べるのをやめて俺を睨みつける。
「いえ……、俺にそんな感覚はないですが……」
「じゃあ、知らない……。アタシは忙しいから……」
ムスッとしながら、足をゆすりながら再びお菓子を食べ続ける。
完全に勘違いされている……。
機嫌を取り戻すまで口は聞かないでおこう。
これはエメロッテに直接誤解を解かさないと……。
食堂から出ると――エフィナが廊下にいた。
「レイ! 今日は会議が早く終わったから散歩しよう!」
急に抱きついて腕を組んで離さないようにする。
そういえば、王様たちと会議があるとか言っていたな。それでもう終わったってことか。
上機嫌なのは良い方向で会議が終わったよう見える。だが、何か違和感がある……。
体温が熱く、胸の鼓動が聞こえる。
ただドキドキしているのではなく、焦っているようだった。
「会議で悪いことでもあったか?」
「順調だったよ! さぁ、散歩散歩――」
エフィナは少し強引に腕を引っ張って屋敷から出る。
話したくないことがあったなら仕方ない。
気分転換に散歩したいのだろう。エフィナに付き合うか――。
歩いていると視線を感じる……。後ろに女の姿をしたシルセスが後ろからついてきている。
「まったく……、散歩の集中できないんだけど」
「これは失礼しました。この時間にエフィナ様と王が一緒にいるのが珍しくて」
そんなに珍しいか? 暇なときはエフィナとこの時間でも一緒にいると思うが?
「それはいいよ。何か言いたいことがあるなら言いなよ」
「では――、最近女の姿になってから王を見るたびに胸の鼓動が止まらなくて……」
シルセスは妖艶な顔で言う。いや、前から狙っていただろう……。
【女体化】してもう隠すことがなくなっただろうな……。
「君ね……、リヴァがいるでしょ……。何勝手にレイを狙っているの……。それにシャーロに手を出さないと約束したでしょ……」
「はい、ですが、王が私を望むのではまた別の話です。私が誘っても問題はありません」
そんなのでいいのかよ……。
「それを屁理屈って言うのだよ……。レイはする気なんてないよ。諦めてリヴァだけにしな」
「リヴァはまだ幼いので、まだです。その期間に王と子づくりの予行練習をしても……。なんなら王の子を産んでもよいです……」
顔を赤くして言う……。ちょっとまて……なんで爆弾発言している!? シルセスらしくないぞ!?
まさか発情期か……? それしか考えられないのだが……。
「君ね……。笑えない冗談だよ……」
「本気でございます……。王よ、私はいつでも準備ができています。ではこれで――」
シルセスは言えてスッキリしたのかその場を去ってしまう。
まあ、シルセスから襲ってくることはないから大丈夫だろう。
大丈夫だと思いたい……。
「いい女になったからって調子に乗って……、本当に笑えない冗談だ……」
エフィナは魔力を出して嫉妬していた。
女より女の身体になったのは嫉妬するのはわかる。
シルセス……出るタイミングは悪い……。
これ以上、エフィナの機嫌を悪くさせないでくれ……。




