830話 茶室で②
「別に日頃よくやっているし、なんでも言ってくれ」
「本当ですか!? では――私の種族を増やそうと考えております」
「同じ仲間を探そうと思っているのか?」
「いえ、私自ら子どもをつくりたいと思っています」
そういうことか……。もうスノードラゴンはシルセスだけかもしれない。
「だが、相手がいるのか?」
「もちろんです。もう決めている方がいます」
いるのかよ……。いったい誰だ? 考えるとしたらシエルしか思いつかない。
エメロッテは……絶対にないな。
「まだ相手には伝えていないよな?」
「いえ、まだです。小さいのでいつ言うか迷っています」
まだ未成熟ということか。じゃあシエルではないぞ。
「決めている相手は誰なんだ?」
「私たちに近い竜――海竜のリヴァです」
…………なんでリヴァなんだよ!?
シャーロさん以外ドン引きしているぞ!?
「おい……、リヴァは男だぞ……」
「わかっています。ですが、女神様から最高の祝福を授けてくれました。これで種族の問題はなくなりました」
女神の祝福? ということは……そういうことか……。
シャーロさんを見るとピースする。
「イェーイ……」
「シャーロさんに【女体化】のスキルをもらったっていうわけか」
「はい。女神様には感謝しきれません」
「深刻の問題だから手を貸した……」
「そうですか……。しかし、よくシャーロさんに相談できたな」
「それはトリニッチ様から教えてもらいました。王がこのお方が女神様と言わなかったらわからなかったと思います」
「なるほど……。しかし……【女体化】をよく受け入れたな……」
「前の王は男色でしたので、慣れています。まあ、どちらかというと私も男の方にしか興味ありませんので」
しれっと爆弾発言だな!?
そういえば……、たしかに思い当たる節が――女性陣に猛アピールされていたが、紳士的な対応をしていた。
際どいアピールでも対応していたのは、ただ興味がなかっただけか。
そして男――特にリヴァにはかなり身体を触っていたのは、完全に狙っていたか。
「理由はわかった。それで、肝心の願いはなんだ?」
「リヴァに子づくりの手伝いをしてほしいと言ってくれませんか? どうも保護者がいると私の口では言えませんので」
過保護のオーロラが近くにいれば、言いづらいのはわかる。
シルセスの判断は正しい。
正しいが、俺も言いづらいぞ……。リヴァが承諾してくれるかもわからない。
「それは自分の口で言ってくれないか? とりあえずリヴァだけ屋敷に呼ぶから、それで言ってくれ」
「本当ですか!? ありがとうございます我が王よ!」
「それくらいお安い御用だ。ほかはないのか?」
「本当なら王に子づくりを手伝ってほしいところでしたが、女神様の条件で王との子づくりは禁止にされました。それは仕方ありません。できれば卵を産んだら産休を申請したいです」
シルセスが顔を赤くして言う……。それだけはやめてくれ……。
俺もその目で見られていたのか……。ある意味シャーロさんに助けられた感じだ……。あとリヴァに。
というか竜が産休とか言い出すのかよ……。
「わかった、そのときは言ってくれ……」
「ありがとうございます! あなたが王で本当によかったです!」
シルセスは上機嫌で俺の湯呑みにお茶を入れる。
「よかったね……」
シャーロさんは、納得するように頷く。株がバク上がりですね……。
というかそんなに力をあげていいのか? 少しやりたい放題な気もするが……。
まあ、助けられたからいいか。
女性陣には……言わなくていいか。
特にコトハとナノミはかなりショックを受けそうだから。




