829話 茶室で①
――3日後。
アルカナに推奨されたメンバーはメデアコットに行ってしまった。
なんだかんだ、問題のないメンバーだから心配ない。
さらに1週間後には、メアは孤児たちを全員救出し、休まずメデアコットに移動した。
「もう無理じゃ……」
シエルは顔がげっそりして疲労困憊だった。
当分はもう頼むことはないし、ゆっくり休んでくれ。
そして、ある程度、準備ができたアンバーにヨシマツたちを行っていいか聞くと――。
「別にいいぞ。それくらいの頼みなら朝飯前だ」
問題なく許可してくれました……。
「占いの結果、行くには問題はないです。ただ……知り合いに会ったら、良い方と悪い方――吉凶が混ざっています……。良い方向に進めばいいのですが……」
アルカナは気になって占ったようだ。
どっちに行くかはヨシマツたち次第ということか。
「ヨシマツたちに言うなよ」
「もちろんです。運命が左右されることは言いません。私はあくまで助言できることしかいいませんので」
自分なりに一線を越えてはいけないのはわかっているようだ。
占いで真に受ける人もいるだろうし、口軽く言うわけではないか。
許可されたら当然――。
「レイさん、俺も行かせてください!」
カイセイが志願してきた。
「行くとややこしくなるので、オススメしません。占いにも出ているので」
俺は別に構わなかったが、アルカナはダメなようだ。
ライカがついているから問題ない。今回は諦めてもらおう。
「ちくしょう……あの子たちにアプローチできたのに……」
カイセイは悔しながら落ち込む。
これはややこしくなりますな……。結局、女神化した子にカッコつけたいだけだ。
行かせなくて正解だ。
そして、ヨシマツたちはライカと一緒にメデアコットに行った。
――――◇―◇―◇――――
――2週間が経つ。
茶室で俺とエメロッテ、シャーロさん、チヨメ、シルセスと一緒にお茶を飲んでのんびりしていた。
意外なメンバーだが、チヨメは鍛治をしてないときは、ここでいつも飲んでいる。
まあ、たまたま重なっただけだ。
シルセスはアイシスの代わりに人一倍屋敷に家事をしてくれて助かっている。
いま飲んでいるお茶はシルセスが入れてくれたものだ。
「シルセス……お茶おかわり……」
「かしこまりました」
当然だが、チヨメとシルセスにはシャーロさんの素性を話している。
誤解がないように。
「ライカさん、いつ戻ってくるのでしょうか?」
「ヨシマツたちの件が終わるまでだから、わからないぞ」
「はぁ……そうですか……」
チヨメはため息をついて残念なそうだ。
「何か用でもあるのか?」
「いえ、用というわけでもありませんが、そろそろお父さんの故郷――鬼の隠れ里に行きたいなと思いました。それでライカさんもご一緒にと」
そういえば、俺の領地に来る前に父親の故郷に行っていたな。
そこのところはまったく聞いていない。いや、チヨメがいろいろと質問されて聞く余裕なんてなかったな。
「ちなみにどんなところだ?」
「里山でのどかな場所です。住んでいる方はとても優しく、よそ者の私を歓迎してくれました。海育ちの私にとって山暮らしは新鮮で驚くことばかりでした。またみんなに会いたいな」
そこもチヨメにとって故郷にだもんな。よくされたなら行きたいわけだ。
「俺も行ってもいいかな?」
「大丈夫ですよ。長老――お父さんの兄である叔父さんもきっと歓迎してくれますよ」
チヨメの叔父は長老だったのかよ……。意外でした……。
歓迎してくれるならいいが、シャーロさんが腕を組んで俺を見ている。
まあ、シャーロさんから許可もらわないといけないだけどな。
「遊びならいいでしょう……。いってきな……」
戦うわけでもないからあっさり承諾してくれた。
「じゃあ、ライカが戻ってきたら行こうか。シエルに乗って移動するからすぐに着くぞ」
「シエルさんで移動ですか!? ありがとうございます! 行くのに道が険しいので助かります!」
チヨメは身体を揺らしながら上機嫌だ。
里山ならシエルで移動しないと大変だもんな。
いつになるかわからないが、楽しみに待っておく。
「王よ、私のお使いください。シエルさんは過労続きでもっと休ませたほうが良いかと」
まさかシルセスがシエルを気を遣っているのか?
「その頃には回復しているとは思うが、急にどうした? 一緒に行きたいのか?」
「それもありますが、ちょっとお願いがありまして……」
なるほど、対価がほしいわけか。シルセスがお願いとか珍しいな。




