824話 放棄した街
メデアコットを放棄したことになると、侯爵に相談――いや、王様の判断になりそうだ。
念のためにソウタは精霊たちをここに残して俺たちはヨシマツたちの元へ――。
「そろそろ時間だ」
ヨシマツたちは俺に気づき頷いた。
「レイさん……伊佐木も池垣と同じ最低なことをしているのですかね……?」
伊佐木? ああ、イサキジュンのことか。たしか身体を乗っ取られていない奴か。
「急に言われてもわからないぞ。ただ――私利私欲で人を殺しているのは同じだけどな」
「そうですか……。じゃあ、俺たちが説得しても無理なのか……?」
「どんな奴か知らないが、そいつは聞いてくれる奴か?」
「無理です……。特に俺たちには反抗してくるので……」
「それなら無理だ。反抗してくる相手に説得するのは、鼻で笑ってくると思うぞ」
「そうですよね……」
そういうとヨシマツは静まり返る。
とりあえず現実を受け止めたようだ。
「主よ、この子らを連れて戻るぞ」
「ああ、よろしく頼む」
「私も用が済んだので、一緒に戻ります」
俺とソウタ以外はライカの空間魔法で領地に戻っていく。
当分ヨシマツたちは、落ち込んでいそうだな。
そしてアスタリカ――門前で待っていたジェリックに合流する。
「本当に助かりました! 皆無事に回復して安静にしてます!」
「それはよかった。これから侯爵と相談しに行くから悪いが、あとのことは頼む」
「大丈夫ですぜい! ここは任してくだせい!」
ジェリックに任せて侯爵の屋敷に入り、書斎にいる侯爵に報告をする。
「手数をかけてすまなかった。門番から報告があった。街を飲み込むほどの濁流が向かってきたが、ピタリと止まって収まったことを。レイが来なければ吾輩たちはどうなっていたわからなかった」
「いいえ、お礼はソウタに言ってください。ソウタが判断しなければ俺がいることがなかったので」
「そうだな。ソウタも本当にご苦労だった。皆がやられたのに勇者と同等とは、君には過小評価だったようだ」
過小評価なのは王様とヴェンゲルさんが下げるような発言ばっかりしていたからだと思う。
スケベだが、実力は思っているよりあるしな。
「認められたことには嬉しいよ。だが、メデアコットはどうするつもりだ?」
「そのことについてだが、急なことで頭が追いつかない。放棄するとは、いったい何を考えている? 愚策にしか思わんが、罠の可能性もある。陛下に相談しないといけない。もちろん、君たちの功績も報告はするよ。あとは吾輩に任せて2人はゆっくり休んでくれたまえ」
やはり王様と相談しないといけないか。
あとは報告もできて俺は領地に戻る――。
空間魔法で屋敷――書斎に戻ると……、エフィナとシャーロさんは腕を組んでアルカナが涙目で正座されているのですが……。
「それで、君はレイの魔力をどのくらい使ったの?」
「ほ、ほんの少しだけです……」
「うそ……これほどの魔力……、レイの魔力をほとんど消費する……」
「本当ですよ!? 信じてください!」
尋問されていますね……。ん? ほとんどってどういうことだ?
俺はこのとおり平気で倒れたりしてないぞ?




