822話 中二病勇者の結末
ヨシマツたちはツトムの哀れな目で見る。
「エミカァァァ!」
ツトムはエミカが見つけると、全裸の状態でも恥ずかしがらずにエミカに向かう。
「池垣、惨めだぞ!」
ヨシマツは怒鳴って言うが止まることはない。
「邪魔だ! ジャスティス――――ブボヘェ!?」
ヨシマツは向かってくるツトムを殴って吹っ飛ばした。
歯が欠けて鼻血を出している。そして全裸だから皮膚も剥ける。
「い、イタい!? なんで痛みがある!?」
「決まっているだろ。お前のすべてを無効にした。魔力、スキル、魔法、邪石の効果をな。簡単に言えば日本にいたときと同じ状態だ」
「な、なんでそんなことができる!? 均衡者の能力か!?」
『また意味のわからないことを言うストーカーですね。ご主人さんは、そのはるかを上にいる存在ですよ。何を勘違いしているのです?』
変なことを言わないでくれよ……。まあ、魔剣からしたらそうなると思うが……。
「超越者なのか!? そ、そんなの卑怯だぞ!? チートだ!?」
コイツ、何かしらの理由をつけて言い訳しているな。
もう返答を返さなくていい。
「もう無力のお前は何もできない。潔く降参しろ!」」
「黙れエセ委員長! 僕は勇者であり主人公だぞ!? ここで終わる人間ではない! ジャスティスストーンよ、力を貸してくれ! もう一度正義の鉄槌よ――」
『無駄ですよ。私に抗いことはできません』
「こんなもんじゃないだろ!? ジャスティスストーン! 目を覚ませ!」
ツトムは邪石を叩いて無理やり起こそうとする。
物理的な方法で直すのは無理だろ。
だが、叩いているうちに邪石が欠けだした。
マズいな――。
「おい、それ以上やめろ! 死ぬぞ!」
それでもツトムは狂ったように叩き、邪石が光り始める。
『ストーカー、やめなさい! ああ、手遅れだ……』
「ハハハハ! ようやく目覚めたかジャスティスストーン! 今度こそエミカを…………キエェェェェェ!」
急に発狂し、邪石が爆発し、砕け散ってツトムの身体は灰になった。
蓄積したものが、耐えきれなかった。欠けたことによって魔剣の効果が消えて中の魔力が漏れて暴発したか。
自滅とか虚しい終わりだ。
「あの大バカ野郎……、こんな終わりないだろ……」
ヨシマツは感情をこらえながら言う。
この結末は予想もしていなかった。
「アイツが望んだ結果だ。残念としか言いようがない」
「ですが……、もっとまともな未来があったはずです……。俺が勇者召喚されたとき、もっとみんなを……」
「結果論でしかない。そんなことが言えるのは今だけだ。自分を責めてもなにも変わらない」
「けど――」
「レイの言う通りだ。突然勇者召喚された一般高校生が何ができる? 過去を振り返るな、前を向け」
「それは…………まだ無理です……。あなたの考えを受け止めるのに抵抗があります……」
ソウタが言ってもヨシマツは下を向いたままだ。
「それでいいさ。終わったが、このあとどうする?」
「まだここにいたいです……」
「わかった。気が済むまでいればいいさ」
ソウタはヨシマツを尊重した。否定してもヨシマツが変わるわけではない。
ほかのみんなも、少しここにいたいみたいだから。待つとしよう。
『あのー……、こんな空気を悪くしてしまうかもしれませんが……、ご主人さん……、そろそろ【人化】したいのですが……』
そうだった。よく我慢してくれたな。俺は無効の魔剣を地面に置く――。




