818話 中二病勇者④
邪石付きの剣は、石が砕けて灰になってなくなった。
さすがに俺とライカの技で耐えることができなかったか。だが、ツトムの邪石は破壊されなかった。
イングルプより強力だけのことはある。
それでも身体に電流が走って立ち上がることはできない。
とりあえず暴れないうちに結晶魔法で拘束をした。
「は、離せ!? なんで僕がやられるんだ!? 話が違うぞ!? 獣人は人間より弱いんじゃなかったのか!?」
「儂は妖怪だ! 日本出身の妖怪だ! 何を勘違いをしている」
「なんで妖怪が異世界にいる!? もうめちゃくちゃだ!?」
「お前は人殺しの罪で牢屋に行ってもらう。抵抗するならその場で邪石を破壊して地獄に行ってもらう」
「均衡者……。なんで僕を目をつける!? 僕より暴れている奴はいっぱいいるぞ!?」
まだ気づかないのかコイツは……?
いや、ただの現実逃避かもしれない。
「いい加減にしろ池垣! レイさんは俺たちを助けた恩人だぞ! 帝国の犬になったお前とは違う! お前には重い罪が待っている! 覚悟しとけ!」
「助けた恩人だと……、ふざけるなぁ――――!? 均衡者、お前だけは許さねぇ!」
また怒り狂ったように暴れる。
「エミカを逃がしたことに怒っているのか? 勝手に言ってろ」
「ゆるさないゆるさないゆるさない! せっかく飢えたのに僕の計画が台無しじゃないか!? 僕が現れて餌付けして僕の言うことを聞く奴隷――ペットにできたんだぞ!? 」
「餓死寸前にさせたのはお前の案なのか?」
「そうさ! 僕は躾をしたまでさ! ご主人は誰か示すためにね!」
コイツ……本当にイカれている……。洗脳させようとしたのか……。
「い、いや……」
当然その発言で顔が真っ青になり、身体を震えさせて拒否している。
「池垣……、お前は最低のクズだ! いったいどうすればこんな非道なことを考えられる!?」
「非道? 何を言っているエセ委員長、僕は躾をしただけで何も悪くわない」
コイツ、開き直っている。
「池垣……」
ヨシマツは怒って異常なほど魔力を出している。
マズいな、魔力暴走寸前だ。
「ヨシマツ、コイツのことを鵜呑みしてはいけない」
「どうしたエセ委員長? 僕を躾の仕方が羨ましいのか? なら僕を解放してくれたなら教えてやる。だけど、エミカは僕のものだ」
「池垣!」
俺に声が届かないでツトムの声しか聞いていない。
手に負えなくなる前にヨシマツをおとなしくさせないと。
しかし、ケイトがヨシマツの肩をポンっと軽く叩いて、ツトムに近づき――。
「――――絶拳!」
「――――ブフへェ!?」
再び顔面を殴って吹っ飛んでしまう。
良いタイミングで起き上がったな。
そして委員長はそれを見たヨシマツは我に返って呆然とする。
「すまんな委員長、どうしても委員長から早く手を出してしまった。池垣が殴らないとスッキリしない」
「ケイト……もう大丈夫か……?」
「おかげさまでな」
「すまないケイト……」
「それはあとでにしてくれ――」
ケイトはまたツトムに近づき――。




