816話 中二病勇者②
ツトムと剣に付いている邪石は禍々しく光を放って共鳴をしている。
「このジャスティスブラッドでお前たちを血祭りにしてやる……」
発言はおかしいが、面倒なことになった。完全にイングルプと同じ状態だ。
コイツはもう人間をやめている。
「いい加減にしろ! 勇者気取りはよせ! そのイカれた頭を直してやる!」
「ヨシマツ! 後ろに下がれ――」
「大丈夫です俺1人で――」
「――遅いぞエセ委員長!」
カイセイが叫んで止めに入るが、もうヨシマツの目の前にはツトムがいた。
すかさずヨシマツは盾を構えてツトムの攻撃を防ぐが鈍い金属音が鳴り、後ろに仰け反って尻もちをついてしまう。
「――アイツ【絶対攻撃】【剣聖】を持っている! ヨシマツが敵う相手ではないぞ!」
【絶対攻撃】を持っているのかよ……。いくらヨシマツが【絶対防御】持っていても邪石で強化されたツトムには不利だ。
相変わらずのへっぴり腰だが侮れない。そして急に止まって、変な構えをして技を出しそうな雰囲気をする。
マズいな、間に合うか――。
「ハハ、大したことないなシネェェェェ――――ジャスティス神速剣!」
「委員長――――ゴハァ!?」
「えっ……、ケイト……?」
ケイトはヨシマツの前に出て剣を手で受け止めようとしたが、ミスリルの拳は抉られて、生手が見えて血が出てしまい、ミスリルの軽装鎧も剣が通ってしまい、腹に刺さってしまう。
「キシャシャシャ! これは傑作だ! 筋肉野郎がエセ委員長を庇ったぞ! 最高の友情ごっこだ!」
「手が止まっているとか余裕だな――――フレイムナックル!」
「やってくれたな中二病――――セイントサークル!」
ソウタは火魔法で火の拳を放ち――カイセイは光魔法で光輪を放つ。
「遅いぞ三下!」
ツトムは刺した剣を抜いて後ろに下がって避けたが、ソウタとカイセイはそのまま近づき剣を振るう。
それでいい。2人から離れたのかなり大きい。
おかげで治療に専念できる。
「ケイト、しっかりしろ!?」
ヨシマツは我に返って倒れ込むケイトを支えて叫ぶ。
「うるさいぞ……委員長……。大丈夫だ……」
「何が大丈夫だ!? 致命傷じゃないか!? 今すぐ香夜希が作ったポーションをかけてやるな――なんで傷口が塞がらない!?」
ヨシマツはポーションを傷口にかけるが治りはしなかった。
治らないのも無理もない。邪石の力によって治療を妨害されている。
禁忌までとは言わないが、通常のもので治すのは難しい。
「俺に任せてくれ――――龍脈!」
2人に駆け寄り、龍魔法でケイトに魔力を注ぐと傷口は塞ぎ完治した。
「「「ケイト!」」」
「もう大丈夫だ。あとはゆっくりしてくれ」
ほかのみんなも駆け寄り慌てていたが、治ったことがわかるとホッとひと安心する。
しかし、あれを致命傷に済んだのは奇跡的だ。ミスリルを装備していても、貫通――下手すれば心臓を貫いていた。
多分、【豪力】がなければ本当に危なかったかもしれない。
「俺のせいで……」
「悔やむのは帰ってからにしてくれ。ライカ、みんなを守ってくれ」
「了解したぞ」
今戦っているソウタとカイセイで十分だが、すばしっこくなり、攻撃を軽々と避けられている。
2人には悪いが、状況が状況のために俺も参加する。
風の魔剣を出してツトムに向かう――。




