814話 残念な勇者
俺は【武器創造】で鉄の剣を創り、息切れしているツトムの剣を受け止める。
軽いな、思っていたより邪石の力を発揮していない。
「お前、エミカエミカって、発言がやばすぎだろ……。ストーカーかよ……」
「うるさいうるさいうるさい! エミカは僕の奴隷だぞ! 勝手に逃げ出すことは許されない! 見つけたらお仕置きだ!」
コイツ、エミカのことになると話すのか……。
どうしようもない。
「そんなご主人に嫌気をさして逃げ出したかもな?」
「僕とエミカは相思相愛だ!? お前に何がわかる!? 正義の鉄槌を喰らえ――――ジャスティス天翔斬!」
ツトムは高く飛んで俺を目がけて切ろうとする。
技名のわりにはそこまで怖くはない。
コイツ、ただかっこいい名を言っているだけの中二病なのはわかった。
ここで出鼻をくじくしかないか――。
「――――斬破」
俺は片手で剣を振るってツトム剣に当てて粉々に破壊する。
鉄の剣で軽々と破壊できるなんて笑うしかない。
「ぼ、僕の宝剣ジャスティスビートが!?」
「鑑賞用に作られた貴族用の剣だろう? もしかして王城の倉庫から盗んだような感じか? 見た目がかっこいいから使っているように見える。よくもまあ、ここまで戦うことができたな」
おそらく、この装飾剣じゃなく、まともな剣だったらみんな致命傷では済まされなかった。邪石と【剣聖】というチート能力で底上げしたようなもの。
「う、うるさい! 僕の宝剣にケチをつけるな!? ――――グバェ!?」
俺は剣の柄頭で腹を殴って吹っ飛ばした。
やはり、剣を持っていなければ【剣聖】は発動しない。そこら辺にいるゴブリンと同じ弱さだ。
「全然手応えがないと思ったら、派手なだけの剣だったのか。見掛け倒しなだけか」
「手応えがなかったらすぐに気づけよ……」
「みんなを深手を負わせていて気づかないに決まっているだろ」
「それもそうか」
「な、何なんだお前たちは!?」
俺たちは余裕で雑談していると――ツトムはようやく自分が窮地に追い込まれているとわかって、足がガクガクになりながら立ち上がる。
「お前と同じ日本人だ。何度も言っているのにじゃないか?」
「なんで日本人が、敵大陸にいる!? なんで僕を殺そうとする!?」
「被害者面するのとは呆れたな。俺たちお前を止めるために来た」
「僕を止めるだと!? 僕は敵大陸に行ったエミカを捜しているだけだ! みんな邪魔するからを僕は正当防衛をしただけ! 勘違いも甚だしい!」
「それを被害者面をしていると言う。いい加減現実を見ろ……」
「ぼ、僕は最強の勇者だ! 誰にも負けない最強勇者だぞ! 僕は日本人の好としてお前たちに手加減したぞ!」
もう言っていることがめちゃくちゃだな……。
「レイ、コイツを同級生に会わせないほうがいい気がする……。もう捕まえて連行させていい気がするが……」
「俺も思った……。だがもう遅いぞ……」
「池垣!」
後ろからヨシマツの大声が聞こえ――ライカとヨシマツたちが駆け寄ってくる。
しかも、カイセイとコトハとナノミも一緒だ。
カイセイとヨシマツとケイトは武具を装備していて、万が一のことは備えている。
「え、ええええええええ、エミカ!?」
ツトムほかの人は眼中になく、エミカだけを見ている。
その大声でエミカは自分が呼ばれてたことに顔が真っ青だった。
この感じだと気づいているようだ。
さて、あとはヨシマツたちに任せよう。




