813話 緊急事態に……
これはシャーロさんに説得できるか……。
「ソウタは勇者と戦って危機的状況です。早く助けに行かないといけません……」
「勇者……勇者……、わかった……。許可する……。行けるようにしたよ……」
シャーロさんは数秒考えて、指パッチンすると――俺の身体が軽くなった感覚になる。
どうやら縛られた鎖が外されたようだ。
そこはしっかり言えば許可してくれる。
「ソウタがピンチなんでしょ……? 早く行って……」
「ありがとうございます――」
俺は空間魔法を使いアスタリカに向かう――。
ギルド前に移動すると――周りは冒険者と騎士たちはケガを負って手当てを受けている。その中にヴェンゲルさんとヤーワレさん、デムズさんが寝込んで深手を負っていた。
ここまでやられるとは……。
「ダンナ来ましたか! こっちですぜ!」
「案内は大丈夫だ。みんなにポーションを配ってくれ」
俺は無限収納から大量のポーションをジェリックに渡して俺は邪石がある反応に向かう――。
街に出ると、遠くのほうで2人が激しく剣と剣の攻防が繰り広げている。
近づくと、赤い革鎧を着たおかっぱ頭のメガネで、小柄の男が鼻息が荒くしてへっぴり腰で、宝石など装飾の派手な剣でぎこちなくソウタに襲いかかっていた。確か池垣敦だったはず。
それにしても、ド素人が剣を使っている感じの振り方だ。
ソウタが剣を振るうと、へっぴり腰だったのが、背筋を伸ばして修正したかのように受け止める。
コイツ、【剣聖】のスキルを持っているとわかった。
よく見ると、上空にソウタの精霊たちが見守っていた。
なんだ、苦戦していたのは、嘘だったか。
「ソータ、レイ様が来たよ!」
「やっとか。遅いじゃないか――」
「――――ブゲェ!?」
プロミネンスが大声で言うと、ソウタはツトムの腹を蹴って遠くに吹っ飛ばしてしていく。
「もう少し早く来てもいいんじゃないか?」
「なんだ余裕じゃないか。みんな苦戦していたのに、余裕とか失礼だぞ」
「みんなすぐに臨戦態勢になって突っ込んでいったから仕方ないだろ。まあ、同郷の奴に説得をしようとしたのは本音だけどな。心配するな、みんな大怪我はしたが、死者はいない。そこは安心してくれ」
死者がいないのは良しとしよう。
ソウタには事前に勇者に会ったら報告してくれとは言ったが、俺を呼んで待ってくれるのは、かなり気を遣ってくれる。
「その様子だと説得できなかったみたいだな」
「ああ、無理だった。さっきはバテて何も言わなかったが、その前に大声で奇声を発して何を言っているかわからなかった。でも連呼している言葉あったぞ。「ボクのエミカを返せ」と」
その言いようだとエミカが好きなのか?
まさか、エミカのために1人でここに来たことになる。
これは……エミカを奪われたと思い、暴走してきた感じだ……。
帝国の命令じゃなく、私利私欲のためか……。
エミカ……、とんでもない奴に目をつけられたな……。
「僕の……僕のエミカを返せ!」
そう言いながら、ツトムはバテながらこっちに向かってくる。
ほかの奴より邪石は大きいが、禍々しい魔力は乱れて外に放出される。
扱いにはまったく慣れていないよだ。
それもそうか、邪石で強化が成功しても戦闘経験がないド素人が扱いのに無理がある。
「また言っている。もういいだろ。俺はお前と同じ日本人だ。少し話しを――」
「エミカ……エミカエミカエミカエミカエミカ……」
ダメだ……。アイツの頭にはエミカしかなく、聞く耳をもたない……。
エミカに会わせないほうがいいような気がしてきた……。
ヨシマツたちはまだ来るの時間がかかりそうだ。
仕方ない、エミカのために、倒れ込むまで相手するか――。




