810話 女神の情報
――数時間後。
『ソシアちゃんに相談したんだけど……すごく怒っていた……。今は止めることはできないけど、方法を探すって言っている……』
ソシアさんが怒るのは当然だよな。
『わかりました。ソシアは病みあがりなので無理をさせないでください』
『もちろんだよー。ずっとソシアちゃんのそばにいるから大丈夫だよー。しっかり管理するからねー』
まあ、シャルさんは過保護だからそんなことはしないか。
話が終わり、お菓子を堪能していたシャーロさんが向かってきた。
「バーミシャルに言ったね……」
普通に考えたらバレるよな……。
「そうですが……」
「よろしい……。でも……アタシは誰も止められない……」
無表情だが、誇らしげに胸を張っている。
強がっているかと思ったが、そうではないようだ。
なんとしてでも止めないと。
「おやつも食べたことだし……。情報を聞く……」
そう言ってシャーロさんはアンバーと一緒に屋敷を出る。
情報? そういえばグリュムの情報が必要とか言っていたが、そんな情報はどこにある?
気になってあとをついて行くと――集会場の木の上で昼寝をしている。
ソアレとセレネの前に足を止める。
確かに関わりがあった2人だが、有益な情報があるのかわからない。
「おーい、起きてくれ」
気持ちよく寝ている2人を大声で起こそうとする。
その声で2人は目を覚まして、あくびしながら下に降りる。
「グリュムを倒すために協力――」
「「いや!」」
案の定、大きく目を開けて飛んで逃げてしまった。
「やっぱり……」
「おい、幼女神! 本当にソアレとセレネが知っているのか!?」
「うん……。絶対にあるはず……」
「わかった。捕まえてくるから待っていろ」
アンバーは飛んで2人を探しに行った。
「あの2人がグリュムの情報を持っているとは思いません。というか話し合うこともないですよ」
「そうと思うけど……。バーミシャルからあの子たちの話しを聞いた……。周りから孤立したのはグリュムせいだと……」
ソアレが頑張って話したときか。
大事なことだしシャルさんが報告するのは当然か。
「それなら、周りの天使に聞けばいいじゃないですか? あの2人より有益な情報を持っていると思いますが?」
「聞いたよ……。だからあの子たちから聞く……」
もう事前に調査したわけってことか。
「理由を聞いてもいいですか?」
「うん……。天使がいる区域に降りてグリュムのことを聞き出したけど……。やっぱりあの子たちが知っている……。アタシも気づくのが遅かった……」
「気づくのが遅かったとは?」
「グリュムと仲が良かった天使――ユアライゼの子どもかもしれない……」
それが本当ならかなり重要じゃないか……。
「ですが、天使に名はないはず……」
「グリュムとユアライゼは、特殊――アタシたちと多く関わったから……個性を出したいと思ったかもしれない……」
「自分の存在を示したかったわけか」
「うん……。その解釈でいいと思う……」
「そのユアライゼは?」
「不慮の事故で亡くなった……。それもグリュムの報告で……」
「天界でも死という概念があるのですか?」
「うん……。天界でも……魂が消滅すれば……。死を意味する……。当然だけど……来世がない……」
天界で魂が消滅するほどのこととはなんだ……?
グリュムの報告っていうのも、かなり怪しい。
「そうですか……。あの2人がユアライゼの子どもとわかったのですか?」
「天使から聞くと……、ユアライゼの亡くなったタイミングでソアレとセレネが現れたみたい……。最初は怯えていたけど……、周りが面倒を見て楽しく暮らせていた……。けど……、グリュムにあの子たちに気づくと……、「天使失格」「女神を侮辱した」「未完成品」とか周りに言って2人を避けるようになった……。そうなると……なぜソアレとセレネが目をつけられているか……わかった……」
「じゃあ、2人はまだ何か隠していると?」
「そう……、ユアライゼの子なら……納得がいく……。ユアライゼはグリュムより強い……。だからあの子たちに情報を聞いて……、本当なら……ユアライゼの遺伝している魔力を……魔王に構築して強化する……。もちろん禁忌対策も……」
そんなことができるのか……。いや、できるから言えることか。
「本当ならの話ですよね?」
「本当ならね……。けど……、確信はある……。よく見ると……ユアライゼと似ている……。子どもの姿になった感じ……。あと……強さは劣るけど……ユアライゼと同じ魔法を使う……。もっと早く気づくけばよかった……」
完全にユアライゼの子確定じゃないですか……。ソアレとセレネが鍵を握っていとは……。
「ですが、アンバーを強化するのに、時間はかかりますよね?」
「うん……、前と言ったとおり……。予定は変わらない……」
変わらないと言っているが、完全に予定通り進んでいる……。
あの2人はグリュムを倒すまでどこか見つけないようにしたほうがいいのでは?
それで…………いや、そんなことしなくても大丈夫だ。
俺にも絶対的条件があるじゃないか――その前に【絆】化すればいい。




