807話 動く女神
シャルさんからカイセイの愚痴を聞かされ小一時間……誰にも言えなかったのかかなり溜まっていました……。
あと女神化した3人を嫁にさせないために阻止のお願いもされる。
もちろん、ファルファのこともお願いされる。
さらに――つながったことでコトハとナノミにもお願いするようです。
2人も巻き込むとは……、かなり警戒していますね……。
『お願いねー。このことはソシアちゃんにも言って、絶対――ぜーーったいに関わらせないからー』
強く言っているが、ソシアさんと関わるイベントなんてないだろうな。
それに溺愛している母親の言うことを聞くから絶対にないと思う。
『カイセイのことは大丈夫ですので……ソシアさんとゆっくり見守ってください……』
『よろしくねー』
ようやくソシアさんの会話が終わった。
今日はもう何もなさそうだから屋敷に戻ってゆっくりするか――。
――数十分後にエフィナと一緒に屋敷に入ってきたのは、文句を言っているアンバーだ。
「メイドよ! なんでもいいからオレに菓子をくれ!」
客室のソファに座り、アイシスが作り置きした無数の菓子をテーブルに置くと、独り言をブツブツと言いながら菓子を口いっぱいに頬張る。
エフィナ曰く、今日の会議で正式に戦争は保留となり、何もすることがなくなったから連れてきたようだ。それも待機していた魔王軍と一緒に……。
アンバーは暴走しないために連れてきたのはわかる。
その魔王軍は戦争が始まる前まで俺の領地で訓練をするとエフィナが勝手に決めて連れてきたようだ。
「もっと事前に言ってくれよ……」
「仕方ないよー。魔王軍のやる気を保つために、ここに連れてきたんだからー」
「そうは言っても、魔王城が手薄なのはいいのか? もし、グリュムが来たら――」
「その心配はない……」
アンバーの隣には竜人の姿をしたシャーロさんがお菓子を食べていた……。
「シャーロさん……、ここに来られるようになったのですね……」
「うん……ここの周囲だけ……。バーミシャルに力を少し借りて……信仰があまりなくても姿を現せる……」
シャルさん……、どれだけ力があるんだよ……。
「そうですか……。それで、なぜ大丈夫です?」
「魔王城周辺にはグリュム対策の結界が張ってある……。それもグリュムがトラウマになるレベルの……」
シャーロさんが行き来できるところが手薄になるわけないよな。
「それなら安心ですね……。ところでなぜここに……?」
「なぜって……、レイがグリュムとの戦闘を避けさせるため来た……」
信用されていないようだ……。
「レイを心配はしているんだよ。シャーロが結界を張れば間違いなく安全だよ!」
「そうそう……。結界を張っとく……」
シャーロさんが食べるのをやめて指を鳴らすと――下から膨大な魔力反応が領地全域に伝わっていく。グリュム対策の魔法陣を創ったのがわかった。
「ありがとうございます……」
「うん……、アイシス……冷たいお菓子ちょうだい……」
シャーロさんはアイス系の菓子を出されると、再び口に入れる。
帰らないのか……。
「あれ? 結界を張るだけじゃないの?」
「違うよ……レイも監視する……。だからここにいる……」
監視も含まれているのか……。ということは一緒に住むのか……。
「それでバーミシャルが力を貸したのかー。それならソシアは許可したと思うけど、よくティーナが許可をしてくれたね」
「ティーナにはバカンスに行かせた……。ティーナの仕事は今のところないからね……。このタイミングで行かせた……。当分は戻ってこない……」
いいタイミングですね……。戻ってきたら大変だろうけど。
「それで幼女神、グリュムが強くなったぞ! どうするつもりだ?」
すると、シャーロさんは口に運ぶのをやめて真剣な眼差しでアンバーを見るめる。
「女神の権限を使って……魔王を最大限に強化する……。倒せるほどに……」
「おお! そいつはありがたい!」
倒せるほどに強化できるのか。もうグリュムは女神からしたら世界の癌みたいなもの。
権限が発動できる条件か。あのとき言ったのは本当のようだ。
それなら俺の出番がない。
けど、エフィナはあまりいい顔しなかった。
「まってシャーロ、その女神の権限って本当なの? 女神の権限でも限度がある。もしかしてイカサマするつもり?」
エフィナが言うとシャーロさんはため息をつく。
「エフィナちゃんにはごまかせないか……。そうだよ……」
「ボクは反対だ! 絶対に使っちゃだめ!」
「平和にするための手段だから……」
「えっ……、権限じゃないということは……。もしその力を使ったらシャーロさんは……」
「うん……この世界の管理が剥奪になる……」




