804話 女神から朗報
『聞こえますよ』
『つながってよかったー。これで私の加護を持っている子は聞こえるようになったよー。だけど、ズイール大陸は妨害されて無理だけどねー』
シャルさんでも全域は無理なのか。グリュムに妨害されているのはわかる。
グリュムがシャルを妨害できる力があるとは……。
『それはよかったです。今回はつなげただけで用はないですよね?』
『それがあるのよー。ソシアちゃんが目が覚めたのよー。レイちゃん早く来てねー』
まさかの朗報が入るとは。ソシアさんが目が覚めたのは喜ばしいことだ。
というか、俺が行く前提ですか……。まあ、仕方ないか。
『わかりました。すぐ行きます』
俺は女神像にある神社に向かい、祈りを捧げる――。
視界が変わると、花畑に囲まれた白い平屋――ソシアさんの家の前にいた。
いつもの庭園場所に移動ではないといことは、シャルさんが移動させたのかもしれない。
玄関のドアが勢いよく開くと――シャルさんは笑顔で小走りをして駆け寄り、無言で手をつないで、そのまま家の中に入り寝室に――。
寝室にはエフィナ、ティーナさん、シャーロさんがいて、そしてベッド上で起き上がっている顔を赤くしたソシアさん。
「ソシアちゃんー、お婿さんが来たよー」
ちょっとシャルさん……、変なことを言わないでください……。
ソシアさんが嫌がる……。だが、ソシアさんは枕で顔を隠して何も言わない……。
かなり困っていますな……。
「ちょっとバーミシャル、ソシアとレイが困っているじゃない!? 勝手なことを言わないでよ!?」
「どこが困っているのよー? 2人とも赤くして恥ずかしいだけだけどー?」
「もっとよく見なさいよ! ほら2人とも何かいいなさい!」
ティーナさんのほうから首を突っ込むほうが困るのだが……。
「シャルさん、ちょっと先走りすぎじゃないですかね……。もう少し考えてください……」
「ほら、レイはそう言っているわ! ソシアもいつまで顔を隠しているの!?」
「母がレイ君を結婚相手にしたのは仕方ないことだ……」
真っ赤な顔を出して言っている……。まんざらでもない感じな言いかたですが……。
「なんで当たりのない返答なのよ!? あなたは勝手に決められていいの!? ソシアの意見を聞きたいのよ!」
「はいはい、熱くならないでねー。今はソシアが復活したことを喜ぼうね」
「そうだねー。エフィナちゃんの言う通り。ティーナちゃんはなんでそこまで熱くなるの?」
「あなたから話しを出したからに決まっているわよ……」
無理やりだが、エフィナが話しを止めてくれた。
ティーナさんは拳を強く握りしめて怒るのを我慢していた。
このタイミングで止めたのはよかった。ティーナさんとシャルさんが揉めると長くなる……。
というか、今日エフィナは王城で会議とか言っていたが、やはりソシアさんを優先しますね。
「ふぅ……、2人とも焦りすぎ……。この件はグリュムが終わってから……」
シャーロさんは呆れて言う。俺はグリュムを倒してものんびりできる状態にはなりそうにはないようです……。
「少しいざこざがあったが、あらためて――心配をかけてしまって申し訳ない……。勇者召喚を止める自信があったが、過信してしまった……。長い間寝てしまったこと重ね重ね謝罪したい……。女神として失格だ……」
ソシアはみんなに頭を下げた。
「何言っているのよ。今回はアクシデントが起きて制御不能だったのよ。気を落とさないで」
「よくやっている……。だから自分を追い込むことはなし……」
「そんな気にする必要はないさ。まだ起きたばっかりなんだからゆっくりしてね。あとはボクたちがやるから」
「謝罪なんてとんでもない。ソシアさんのおかげでこの世界が保たれているので、気にしないでください」
「そうよ、ソシアちゃん。私はソシアちゃんが頑張って止めているのがわかるよ。何もしないティーナちゃんがいるから自分を責める必要なんてないよ」
「バーミシャル……あなた……」
再びティーナさんは怒るのを我慢する。
いつも思うが、シャルさんはティーナさんをディスる……?
完全に悪意があっての発言だ……。
「皆……本当にすまない……。早く体調を戻してしっかり仕事をする」
「もう……ソシアちゃんは真面目なんだらー。絶対に無茶しちゃダメよ……。私がいるからいっぱい休んでよね」
「母よ、私は母みたいに優れてはいない……。私は母みたいな立派な女神になりたいから頑張らないといけない。少しでも早く近づけるように頑張りたい……」
「ソシアちゃん……。なんていい子に育ったの……。お母さんすごく嬉しい……」
シャルさんは涙を流してソシアさんを抱擁して2人の世界に入った。
シャルさんはかなり心配していたしな。ほかは空気を読んで2人にさせようと部屋から出る。
この状況は親子水入らずってわけだ。ソシアさんの容態も見れたことだし、戻ろ――。
「レイちゃんまだ帰っちゃダメだよー。話すことがいっぱいあるんだからー」
なぜ俺だけ残るの……? 帰らせてください……。




