79話 ギルド職員の誕生日会
寝ていると……視線を感じる……。
目を覚ますと――リンナさんがニヤニヤとこちらを見ている……。
「おはようレイ君! もうちょっと寝てても良かったのに!」
今日はリンナさんの誕生日だ。
早く来るとは言っていたけど――まだ薄暗いのですが……。
「おはようございます……リンナさんお誕生日おめでとうございます」
「ありがとう! これからもよろしくね! アイシスが朝食を準備しているから行きましょう!」
「その前にこれを受け取ってください」
無限収納から――こじゃれた箱を出してを渡した。
「これは?」
「まあ、開けてみてください」
「どれどれ――これ……魔石の腕輪なの!?」
「はい、この前装飾品を頼まれたのを作りました。こういうでかたちで渡すようになりましたけど、ダメでしたか?」
「ありがとうレイ君! 一生大切にするからね――!」
「ぐはぁ!」
思いっきり抱きつかれました……相変わらず力が強いです……。
『うん、大成功だね!』
「今からつけるわね! ――綺麗で私の腕にピッタリだわ! 本当にありがとう!」
喜んでくれて良かった。ひとまず安心した。
その後、10分くらい力強く抱きつかれて、寝起きなので魔力を維持するのに少々大変でした……。
手をつないで引っ張られるかのように食堂に向かう――。
「おはようございます。ご主人様もう少し待ってください」
…………はい? アイシスは髪を束ねて着物を着て調理をしていた。
「このメイド服アイシスに似合うけどいつもと違って変だわ」
「私の故郷ではお客様を家で最高のおもてなしする時に着るメイド服でございます。気にしないでください」
「そうね。辺境に住んでいたから他と違うからしょうがないわね」
似合っているけど。明らかに着物だよな!?
『これ着物だ――』
『メイド服でございます』
『いや、さすがに物には限度があるだろう……着物――』
『メイド服でございます。確かに似ているかもしれませんが着物ではありません』
『何言っているの? どう見てもメイド服じゃん』
もうアイシスが作って着る物全部メイド服になる過程かよ……。
あっ、もういいです……。
フランカと精霊が来た。
「お、リンナ嬢来たのか! 誕生日おめでとう!」
「リンナちゃん、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう2人とも! しかし驚いたわ! アイシスに聞いたけど庭に大きい平家が立てていると思ったらフランカのユニークスキルだったのね!」
やっぱり最初はそう思いますよね……。
「驚かせて悪いな。あの家はアタイの工房だから手荒な真似はしないでくれよな」
「そんなことしないわよ、あとで中を案内してもらえないかしら?」
「ああ、いいぜ! ほら、改良した剣だ! 前よりは扱いが良くなったとは思うぜ!」
フランカが改良した剣を渡すとリンナさんの手が震えていた。
「こ、これ……前よりは大きいのに軽いわ!? 剣を抜くわよ――ミ、ミ、ミ、ミスリルを使ったの!?」
「これくらいしないとしっかり魔力を通せないからな」
「これくらいって……白金貨1枚はくだらないわよ!? 本当に無料でいいのかしら……」
「誕生日だから素直に受け取りな。アタイは賢者から教わった鍛冶師だぜ! その名に恥じないのを作るのが当たり前だ!」
「ありがとう! 大切に使うわ! もうあなたは親友よ!」
「そうだな! もし剣が不調になったらアタイのとこに来な! いつでも直してやるからさ!」
「ありがとう! さすが親友だわ!」
『やっぱり女の友情はいいね~』
お互いに握手をした。メンテナンス付きとか待遇がいいですね……。
「よし、これでバカアニキと稽古するよ~」
リンナさんの場合は稽古ではなく死闘な気がします……スールさんご愁傷様です。
『少し残念エルフがやられてるところ見てみたい気もする』
意外にエフィナさんは血の気が多いようです……。
「さて、アタイの役目も果たしたし飯食おうぜ! あれ? アイシス珍しくメイド服じゃなくて着――」
「メイド服でございます」
フランカは着物として認識している。
普通はそうだよな。
「えっ? いや、どう見たって――」
「メイド服でございます。いつも言っていますが賢者様はこの服をおもてなし用のメイド服と何度も説明していましたよ」
『フランカもわかっていないな~あれはメイド服だよ』
「ああ……わかった……そうだよな……」
押しに負けた!?
首を傾げて困惑しているぞ!
『なあ、ダンナ……記憶違いだったらしょうがないが……どう見ても着物だよな?』
『あれは着物だから間違ってはいないぞ……ただ、アイシスが着る物はすべてメイド服になるみたいだ。ややこしいがそういうことにしてくれ』
『わかった……今度から気をつけるよ……』
念話で送ってくるとか納得はしてなかったようだ。
こちらとしては良き理解者がいて助かる。
朝食は和食でご飯、オレンジサーモンの照り焼き、厚焼き卵、人参と牛蒡のきんぴら、味噌汁だ。
「何この朝食!? 全部が上品な味で美味しいわ! この白い穀物も意外に美味しいわね!」
リンナさんは和食の美味しさに魅了されました。
しかしこの厚焼き卵は出汁が効いて美味しいな。
まさかオレンジサーモンの骨から濃い出汁が取れるの意外にだった。
味噌汁にも入れてあって格段と美味しい。
朝食を終え――リンナさんはフランカと精霊と一緒に【マイハウス】に内装を見に行った。
その間に俺とアイシスはご馳走を作る。
リンナさんの要望でキングバッファロー肉を使い調理をする。
俺は牛カツとハンバーグ、アイシスはビーフシチュー、ローストビーフを作る。
まずはハンバーグから作る。肉はフードプロセッサーに入れないで肉の塊を包丁を使ってミンチにする。
包丁でミンチにすることで粗挽きで歯応えのあるハンバーグになる。
キングバッファロー肉はステーキで食べたら味が濃く美味しかったからその味を活かす為に今回は粗挽きした。
みじん切りした玉ねぎをフライパンでバターと炒めて飴色になったらフライパンから取り出し余熱を冷ます。
冷ましたら粗挽きした肉と合わせて、塩、胡椒、卵、ナツメグ、パン粉を入れて混ぜる。
一つ一つ成形をして油を敷いたフライパンで焼いて火が通ったら完成。
次は牛カツ。
肉を塩、胡椒をし小麦粉、溶いた卵、パン粉の順に付けて多めに油入れた鍋に入れて揚げて完成した。
アイシスも手際の良さで早くできあがった。
そのほか――ピザ、カニクリームコロッケ、唐揚げ、猪のスペアリブなど色々作った。
用意もできたし呼びに行きますか。
屋敷を出ると祝いに来たザインさんがフランカの家を見て呆然と立っていた。
「な、なんじゃこりゃ――――!?」
反応がいいこと……。
「それ、フランカのユニークススキルで創った家ですよ。アイテムボックスと同じようにしまうことができます」
「フランカの嬢ちゃんがか……コイツはたまげたな……いきなり庭に平家が建ててあるとかおかしいと思ったぜ。スキルならまだ安心だが本当に建ててあるのだったらミランドに許可申請が必要だけどな」
あっ……それ忘れていました。
「これは不法になりますか……?」
「大丈夫だ。あとでミランドに言えば納得するだろう。まあ、レイの身内なら言わなくても平気だけどな」
やっぱりコネってすごいですね……近々フランカは挨拶しに行くからそのときに言わないと……。
「誰かと思えばギルド長だったのね」
リンナさん達が家から出てきた。
「そうだ。リンナ誕生日おめでとさん。何も持ってきてないけどな。ハハハ!」
「ありがとう。別に何も期待はしてないから平気よ。ところで珍しくあのバカアニキと一緒に来るかと思った」
精霊はそれに反応がしたかすかさず【隠密】スキルを発動して姿を消した。
「スールは俺が指定した依頼を受けさせたから今日は来ないぞ」
精霊はホッとしたのか姿を現した。
「ふ~ん、な~んだ~依頼か~せっかくバカアニキで試し切りしようと思ってたのに~」
『ボクも切られるところ見たかったな~』
この2人恐ろしい……。
「改良してもらったのか――ってミスリルの剣かよ!? ミスリルを打てるのはごくわずかの鍛冶師だぜ……」
「それはアタイは賢者から教わった鍛冶師だから打てるに決まっているだろう」
いえ、【鍛冶師】スキルのおかげです……。
「ハハ……そうだったな。フランカの嬢ちゃんに渡し物だ。在住許可証とミスリルカードだ」
「ありがとなギルマス! これでアタイも不便なく動けるぜ!」
「いいってことよ! あとで領主に挨拶しに行ってくれ。会うのを楽しみにしているからな!」
「ああ、わかったぜ! ぞれじゃあ早速ギルドカードを更新するか」
フランカはギルドカードに魔力を注ぎ込んだ。
「私にも見せてよ――意外に誕生日近いじゃない。それにアイシスと1つ下なのね」
フランカにもティーナさんの加護も発動していて安心した。
その後、みんなでご馳走を食べながら満喫をして――最後に作り置きしたデコレーションケーキを食べて無事にリンナの誕生日祝いが終わった。
「最高の贈り物とご馳走をありがとね! 今まで祝った中で1番嬉しいわ!」
「なんか悪いな、俺は参加しただけなのにウマい飯が食えて得した気分だぜ!」
「それは良かったです」
「明日早いからそれじゃあね」
「さて、俺も仕事に戻るかじゃあ、またな」
リンナさんとザインを見送り――片づけをしないと。
「マスターはゆっくりしてて、私が片づけるから」
精霊がやってくれるみたいだ。
「いつも助かるよ」
「うん、いいよ。それよりフランカは大丈夫なの?」
「まあ、飲みすぎただけだから大丈夫だよ」
「ダンナ~どこにいる~? ダンナが近くにいないと死んじゃうよ~」
『アハハ! いつ見てもおもしろい!』
完全に酔っている……まあ、このくらいはハメを外してもいいけど。
「はいはい、ここにいるぞ」
「いた~もう離さないぜ~」
ペタペタとくっついてきた……相変わらずいい匂いがしますね……。
フランカが酔いが覚めるまで近くにいた。
一方スールはザインの命令で商人の護衛をし、馬車に乗っていた。
スール「精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん――私の愛しの精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さん精霊さんに会いたい……」
商人「(変な奴が来た……早く街に着かないかな……)」
迷惑をかけていた……。
その後商人は冒険者ギルドに苦情を言ってスールの評判が下がった。




