802話 本当の事実②
中将――キャンメラ・ヘラルか……。
今は江上芽郁の身体を乗っ取っている。
戦う機会は絶対にある。メイを取り戻す前に拘束して話しを聞くしかなさそうだ。
前の領主――ソナーノ失踪の件をべネッタに聞いてこの話は一旦保留だな。
「事情はわかった。この話は誰にも言わないでおく。話しても誰も特にならない」
「助かるよ大将殿。あの2人が幸せならそれでいいんだ……」
「じゃあ、キャスリーと一緒に来ることは必然だったか?」
「僕はキャスリーの治療士だから、どこに行こうが決めていたんだ。もちろん、あのときキャスリーの前では恥ずかしかったから、本当のことは言えなかったけど」
「影では専属の治療士か。最後まで面倒を見るのか?」
「僕はキャスリーを初めての患者だ。最初の患者を救えないのは治療士として最低だ」
「あの状況は仕方ないじゃないか? 話しを聞くにはよくやっていると思う」
「あれを満足できる治療じゃない。たとえ見習いの治療士としても僕が決めた道だ」
自分の信念を突き通すわけか。これ以上言っても仕方ないか。
「タッツがそれでいいなら何も言わない。2人のことを聞かせてくれてありがとう」
「言える人がいてよかった。では、さっそく手伝いに行くよ――」
タッツは満足げに部屋に出ていった。
ずっと言えなくてモヤモヤしていたのは本音だろうな。
「本当のことを言ってみたいだし〜、嘘は言ってないみたいだね〜」
嘘か見極めて無言だったエメロッテは穏やかな表情をする。
問題はなさそうだ。
ただの変人だと思ったのが申し訳ない。
かなりわかったことだし、ゆっくり休むとするか――。
――――◇―◇―◇――――
――3日が経ち。エメロッテから解放され外に出ることができた。
あれからべネッタにソナーノのことを聞いたところ、タッツと同じことを言ってこれも本当だとわかった。
これ以上調べる必要はなくなり、この件は保留となった。
集会場に行くと、キャスリーとロベントスがいた。それも深い包容で、周りに注目されている
「ロベントスちゃん、ここでの初めて仕事、頑張ってね」
「だ、大丈夫だから!? 俺がいつもやっている仕事と変わらないからさ!」
「くれぐれも寄り道しないでね。いってらっしゃい」
「門前の見張りなのに寄り道なんてしないぞ!?」
それを聞いた周りは大爆笑して、ロベントスは顔を赤くして恥ずかしくなりがら門前に向かった。
キャスリーが記憶を取り戻したらこの幸せが続くかわからない。
けど、姉弟して過ごしていた日々の愛情は絶対に変わらないし偽りのものでもない。
仮に戻ったとしても受け入れると俺は信じている。
この2人の幸せずっと続きますように――。
「もう、相変わらずね……。キャスリー、昼食の手伝いに行くわよ!」
「今行くよー」
べネッタの呼びかけでキャスリーは笑顔で駆け寄って、昼食の手伝いに行く。




