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801話 本当の事実①


 十分情報を聞けたしべネッタに下がるようにお願いすると――。


「大将、ありがとう。こんな良い場所に住めるのは本当に幸運なことよ。まだ数日しか経ってないけど、キャスリーとロベントスがすごい笑顔で過ごしているのは初めてよ。本当にありがとう」


 そう言ってべネッタは部屋から出ていった。

 幸運なことか。まあ、満足しているならこちらとしてもよかった。


 さて、タッツを呼ぶとするか――。


 再びアイシスにお願いして十数分後にタッツがハイテンションで部屋に入ってきた。


「大将殿、ここは最高の場所じゃないか! ポーション作りを見学させてもらったが、素晴らしかった! ぜひ、僕も手伝わせてほしい!」


 もう見学したのか。まあ治療関係だしやりたいよな。

 人数は全然足りないし助手としては申し分ないか。


「わかった。リフィリアに言っておく。好きなときに手伝ってくれ」


「ありがとう、大将殿! ではさっそく――」


「待ってくれ、タッツに聞きたいことがあるからそれからにしてくれ」


「そうだった! 先走って申し訳ない! それで僕に何が聞きたい?」


「キャスリーとロベントスの関係についてだ。エメロッテが姉弟じゃないとわかったぞ。それで、べネッタに姉弟じゃないことを言わないで遠回しで聞いたが、タッツが事情を知っているとわかった。隠し事なしで話してくれないか?」


「そこまでわかっているのか……。ここの方たちはすごいな……。言ってもいいが、お願いがある――誰にも言わないと約束してほしい……」


 潔いな。やはり訳アリなようだ。


「わかった、約束はしよう」


「助かるよ……あの2人にはあのままでいてほしいから……」


「あのままってどういうことだよ?」


「実は――」


 タッツは淡々と話してくれた――タッツは帝都出身で、当時、治療士の見習いでを立派な治療士を目指していた。

 前のディングラの女性領主――エンジェ・ソナーノがたまたま帝都にいて、開拓途中のディングラで治療士を募集していた。

 ダメもとで応募すると――ソナーノは喜んで採用してくれた。理由は、開拓途中で誰も応募してこないらしく。諦めかけていたがそこでタッツが現れたとのこと。


 見習いでも回復魔法初級(ヒール)を覚えていれば、問題なかったという。

 移動もソナーノ使っている馬車で一緒にディングラに移動することになった。


 移動当日、ソナーノと馬車に乗ったが、まだ成人して若い子――キャスリーが乗っていたという。それも、お腹が膨れている――妊婦だった。


 お腹はかなり大きく、もうすぐ生まれてくることがわかっていた。

 当初はソナーノの知り合いだと思い、何も言わなかった。


 何事もなく、馬車で移動するが――おとなしかったキャスリーは急に発狂したり、「生みたくない」と何度も連呼していた。


 ただ、ソナーノはキャスリーに寄り添って、心のケアをしていた。


 さすがに只事ではなく、休憩のときにキャスリーがいないところでソナーノに聞いたところ――キャスリーの母親はキャスリーのことを自分より美人で気に食わなかったらしく、無理やり娼婦として働かせたという。それも非合法な娼館で。


 ただ、帝王に非合法だとバレて、キャスリーを解放したという。

 もちろん母親は罰せられて、キャスリーに一切関わらないように命じられた。


 そこで帝王は母親の届かないディングラに移動すればいいと思い、ソナーノが引き取ることとなった。

 これで済むかと思ったが、気がつけばキャスリーは誰も知らない男の子を宿してしまった。受け入れなく精神崩壊して情緒不安だという。


 事情を知ったタッツは治療士としての責務だと思い、情緒不安のキャスリーのケアをすることに。


 だが、ディングラにもうすぐ着く頃にキャスリーは陣痛を起こし、馬車を止めて、出産することに決めた。タッツは陣痛を抑えるためにヒールを何度もかけて安心させようとしたが、キャスリーは「生みたくない」の一点張りだった。


 そして、赤ん坊が生まれるとキャスリーは発狂して気を失った。


 その翌日に目を覚ますと、キャスリーは自分がわからないらしく――記憶を失っていた。精神に耐えきれなかった。


 ソナーノは本当のことは話さずに赤ん坊を弟と話した。

 赤ん坊の――ロベントスの名前はソナーノがつけたようだ。


 これが、本当の真実――。


 壮絶な過去だな……。作りではないことはわかった。

 帝王の毅然とした態度だ。まだボウフマンに入れ替わっていないときだ。

 本当のことを言っている。


 気になることは――。


「前の領主はどこいった?」


「僕もわからない……。ディングラの街が完成したら、僕たちに何も言わないで急に失踪した……。代わってクーランドが領主になった……。今でもおかしい出来事だよ……」


 完全にクーランドがやったことだとわかった。

 いや、街が完成したくらいの時期なら帝王がボウフマンに移り変わったときと一致する。


 完全に方向転換されたようだ。じゃあ、キャスリーの母親も……。

 ムロナクが言っていた通りになりそうだ……。

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