797話 みんなまとめて
メアたちが戻ってきたが、サリチーヌ家族は浮かない顔だった。
「情報が足りない……。やはり裏で運営をしているドミベック――商会の拠点を侵入しないといけないか……」
そこも最終的にはドミベックということか。
「そういえばドミベック商会は中心都市に拠点があるよな?」
「はい……、私たちはそこに住んでいます。ですが……今回の件で完全に目をつけれています……。見つかれば捕まるでしょう……」
「やはりカテナッハには入れないか。これからどうするつもりだ?」
「サリチーヌから別荘に移動したと聞きました。それも、子爵様の護衛までついてくれたとは、感謝しています。ですが、見つかるのに時間の問題でしょう……。早く別荘に行って子どもたちと一緒に逃げないといけません……。まずは子どもたちの安全が第一優先です……」
自分たちの状況をしっかり把握しているようだ。
「行くあてがないなら、俺の領地に来るか? 目をつけれているならこの大陸には住めない。亡命したほうがいいぞ。それなら俺たちも子どもたちの行方捜しに協力する」
「いいのですか!? 私にとって願ってもないです! ですがどうして私たちにここまでするのです……?」
「サリチーヌのおかげで簡単にクーランドに会うことができて勇者が2人を救出することができた。それに、ドミベックは個人的な用もある。だから協力する」
「なんと慈悲深い方なんだ……。感謝しきれません……」
「ゼロさん……本当にありがとうございます……」
オーストロ家族は俺に深々と頭を下げる。
「お礼を言うのはこっちのほうだ。そうと決まれば、みんなを呼ぶ。ちょっと待ってくれ、仲間に伝えないと――」
俺はリフィリアに念話で伝えると――。
『マスター、ちょうどよかった。さっきから外で大勢の人の魔力――不審者が村の外を取り囲んでいるの……』
タイミングが良すぎだな……。
『邪石持ちはいるのか?』
『いないよ。私たちで追い払うことができるよ』
『俺の領地に避難させてくれ。サリチーヌの父に相談したら俺の領地に住む話となった。みんなに荷物をまとめるように言ってくれないか?』
『決まったのね。わかった。みんなに伝えておくよ――』
これで問題はなくなった。サリチーヌたちに事情を話し、納得した。
みんなを空間魔法を使い、領地の集会場に移動した。
「おお! ここが子爵様の領地か! プレシアス大陸のどこに移動したかわからないが、いいところだな!」
ハーティは不安もなく周りを見渡してテンションが上がっていた。
ハーティは問題なくやっていけそうだ。それならサムワたちをしっかりまとめてくれるだろうし、ここの生活は問題なさそうだ。
案内はカイセイに任せてハーティたちを解散させる。
「ロベントスちゃん、おかえりなさい」
「ただいま姉ちゃんって、抱きつくのはやめてくれ!? みんなが見ているぞ!」
キャスリーはロベントスに抱きついて安心したようだ。
まさかここでずっと帰りを待っていたのか?
「本当にロベントスが好きね……」
一緒に待っていたベネッタは呆れていう。まあ、これで安全に暮らせるから大丈夫だ。
「これはまた随分と増えましたな」
ムロナクが大勢来たのに気づいたのか俺に近寄る。
「これからまた増えるぞ」
「また増えると? まあ、私が決めるわけではないのでいいですが」
「また賑やかになるぞ」
「それは良いことですが、伝えたいことがあります。あそこにいる彼女――キャスリーですが、少々問題があります」
「問題? 何かやらかしたのか?」
「いいえ、違います。とある人物にかなり似ていて注意が必要と言えばいいですかね」
「その人物は誰だ?」
「中将――キャンメラ・ヘラルです。若いときの頃とかなり似ています」




