795話 嬉しさ爆発
気が抜けると結晶の魔剣が消える。
身体が重くなり床に座る。
魔力が十分だあっても結晶の魔剣の消費は尋常ではない。
炎の魔剣の倍は消費するから普通には使えないな。
「わ〜い、ご主人〜!」
「――――ゴハァ!?」
ルチルが勢いよく駆け寄り抱きついてきた……。
魔力があまってなかったら肋骨が折れるところだった……。
「ご主人大好き〜!」
【絆】化したのがよほど嬉しいみたいです。
あれだけ強化すれば喜ぶのも当然か。
「ハハハハハ! とりあえず一件落着だな!」
「それはいいが、オレたちが苦戦するほどとはかなり厄介だ。帰ったら鍛えなければならん」
モリオン的には納得いかない終わりだ。
そうは言っても【絆】で強化された。今ならイングルプを倒せるくらいにはなっているはずだ。
まあ、慢心していないのは良いことではある。
「それにしても暑いな――」
そう言うとモリオンが兜を外すと――30代くらいの短い黒髪でヒゲを生やした男の姿になっている。
強化されたら【人化】もできるようになりますね……。
「おチビ……そのくらいにしてくれませんこと……? 」
メアが来て無表情で【威圧】出しているのですが……。
もう察しました……。先に【絆】化されて嫉妬してますね……。
というか【魔力解放】解除して普通の姿になっている。
「なんで? もう終わったからいいじゃん! 邪魔しないで」
ルチルさん、余計に刺激を与えないでください……。
さらに【威圧】増していますよ……。
「そうですか……、では、文句を言ってはいけませんこと――――ゲート……」
メアの空間魔法で俺たちはディングラから離れた丘に移動した。
目の前には、救出したヒロヤとヨイカを涙を流して抱きついて――カイセイ、トリニッチさん、ハーティ率いる傭兵たちは笑顔で談笑して――サリチーヌとクーランド夫妻は困惑していた。
それをボロボロに涙を流しているロベントスとジャントとデフィー。
少し落ち着くまで時間を待つとしよう。
「なんでご主人と離れているの!? メアの薄情者!」
「なんのことです……? しっかり移動させたのに感謝してくださる……?」
ルチルは怒りながらこっちに向かってきた。
やはり離したか。これでもメアからしたら優しいほうだと思う。
「あの……、ナイトメアさんから聞きました……。ゼロさんはプレシアス大陸から来た子爵で勇者の救出する目的と……。ああ……話がおかしくて頭が回りませんわ……」
「も、申し訳ございません! こんなすごいお方だと知らずにとんだ無礼を!」
サリチーヌは頭を抱えて、メリアルは何度も頭を下げる。
メアはもう全部言ったようだ。
「ハハ! やはりプレシアス大陸から来たんだな! あたいの勘は正しかった!」
ハーティは豪快に笑って近寄る。
「大当たりだったな。それで、これからどうする?」
「決まっているじゃないか。あたいはゴンザレス――いや、カイセイの嫁になる。そして子爵様のところで働く」
一応確認したが、そうなることはわかった。よかったなカイセイ、嫁が見つかって。
「ハーティが行くなら俺も行く! いや、デンドフル傭兵団は連れてってくれ!」
サムワが言うと、傭兵たちが「おお!」っと言いながら賛同する。
「お前たち、解散したんだぞ!? 皆はもう自由だ! 無理についていくつもりないぞ!?」
「俺たちは家族だ。家族離れ離れなんて考えられねぇ。解散しても一緒だ」
「お前たち……」
ハーティは天を仰いで、涙を出すのをこらえていた。
やはり一緒に仕事をしてきた仲間が来るのは嬉しいだろうな。
「ということだ子爵様、サムワたちもお願いしたい。頼む!」
「領民と仲良くするならいいぞ。それを守ってくれるなら歓迎する」
「おお! 話のわかる子爵様だ! これからお世話になる!」
これでハーティたちの問題は解決したあとは――。




