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7話 【家事】スキルとは……

 ギルドへ帰宅。

 ケーキを食べ、のんびりとしていたら夕方になってしまった。

 レッドオーガとブラックウルフの素材が換金できたはずだ。

 換金所に向かう。


「レイ君、終わったわよ。ただね……レッドオーガの魔石が換金できないの……」


 魔石が目の前に置かれる。少し変わった魔力を放って輝いている。


「どうしてですか?」


「その魔石が特殊すぎて、加工が難しいみたい……」


「じゃあ、魔力量も増やせないのですか?」


「多分、人によって相性が良いと増やせるけど、一般の人は拒絶反応を起こして、増やせないと思うわ」


 高額取引を期待していた魔石が換金できないのは、かなり痛い。諦めるしかなさそうだ。しかし、これを自分で保管しても使い道がない。

 魔力量もエフィナからもらっているし、誰かに譲るのもアリか。


『ご主人様、それを私が使ってもよろしいでしょうか?』


 アイシスが頭の中で言ってくる。何に使うのか? それとも自分の魔力量でも増やせるのかな?


『別に良いけど、何かに使うのか?』


『内緒でございます。ただ、ご主人様にはメリットがあります』

 

 内緒なのか……メリットがあるならアイシスに喜んであげよう。


「換金できないのなら自分で保管します」


「わかったわ、解体分引いて金貨2枚、大銀貨1枚よ」


「ありがとうございます」


 お金と魔石を受け取り無限収納に入れた。魔石の買い取りがなくても十分な金額で、不満とかはない。。

 さて、ザインさんに会ってアイシスに空き部屋を貸してもらうようお願いしにギルドマスター室に行く――。


「レイ、嬢ちゃんちょうどよかった。ほれ、嬢ちゃんの在住許可証だ」


「ありがとうございます」


 いくらなんでも発行するのは早すぎるのでは?


「早く発行するものなのですか?」


「今回は特別だ。領主(ミランド)と相談してな、レイの身内だから特別に発行してもらった。ただし、条件がある」


 やっぱりミランドさんに相談したのかー。条件ってなんだ?


「なんでしょうか?」


「緊急の依頼は参加する条件だ。強制ではないが、俺が適性を判断し、お願いすることがある。本来なら冒険者登録すればいいのだが、冒険者だと強制参加になるから、嬢ちゃんの動きやすいようにした」


「わかりました。できる限り協力いたします」


 かなりの好待遇だ、アイシスに気を遣ったのかな本当にありがたい。


「あのーアイシスに部屋を少しだけ貸してもらえないでしょうか?」


「そのことはわかっていた。いいぜ! けど、なぜ少しだけなんだ?」


「ありがとうございます。実は、この機会に借家か中古の家に住もうと思いまして……」


「なるほどな、俺は止めはしないがあてはあるのか?」


「いえ、これから探そうと思いまして……」


「そうだと思ったぜ。俺がその件、なんとかする」


「いいのですか!?」


「ああ、また領主に会いに行くから、ついでに良い不動産屋を紹介してもらえばいいってことよ」


「ありがとうございます!」


「気にするな。じゃあ、嬢ちゃんはレイの隣の部屋な」


「ありがとうございます」


 アイシスはお辞儀をしてザインさんは部屋を出た。話がよい具合に進んで本当によかった。返答が来るまで時間もあるし、それまでゆっくりしよう。


 夕食の時間、アイシスと食事をする。スールさんやギルドの人が隣に座り、アイシスに興味を持ち、質問をする。

  賢者は何をやっていたのか、どのぐらい強いのか、辺境にいて不便はなかったのかなど、いろいろと質問されたが全部返答した。

 的確に返答しているが、すべて噓だけどね……。

 けど、周りと馴染んでいるからひと安心だ。

 警戒されるかと心配したが、余計なお世話だったかもしれない。

 しかし、後ろからリンナさんの圧はすごい……。

 これはうち解けるのに時間がかかりそうだ……。


 翌朝、アイシスはいきなり出かけると言い出し、ギルドから出た。

 街でも散策しに行ったのかな?

 エフィナに聞いてみると。


『ボクは知っているけど、内緒にしてくださいって言われたから言えないよ。』


 まあ、怪しいことではなさそうだし、いいか。夕方ごろ、アイシスが帰ってきた。そして、換金所に向かい、アイテムボックスからオーガ、ビックベアー、ゴブリンなど多数の魔物を出して換金をお願いする。周りの反応は――。


「またすごいの狩ったな……」

「やっぱり賢者の弟子だから余裕なのか……」

「この人、敵にまわしたくないわ……」


 とかみんな良い反応だ。


「お金が欲しかったら、俺が出したのに……」


「いいえ、私はご主人様に迷惑をかけたくないからです。それに、いろいろと準備をしたいので甘えることはできません。」


 なんてできた魔剣なんだ……全部合わせて金貨2枚になった。

 1日でこれだけ稼げば安泰でしかない。

 ところで、準備ってなんだ? アイシスの考えがあるから気にすることはないか。


 その翌日、アイシスは1人で買い物に出かけ、昼過ぎに帰ってきた。


「しばらくは部屋の中で取り組むので、お控えください」


 と言われ2日が経ったが、まだ部屋にこもっている。

 さすがに心配だから部屋に入ろうと思ったが、エフィナに止められた。

 本当に大丈夫なのか……何も食べていないし、心配だ……。

 差し入れにケーキを買ったが、今日も部屋にこもったままだ。

 翌日の昼頃、アイシスがやっと部屋から出てきた。


「ご主人様、お部屋に来てください」


 部屋に入ると、立派なコートがあった。


『いいのできたね!』


「内緒の事ってコート作っていたのか?」

「はい、ご主人様の防具でございます。先日の戦いで鎧がボロボロになったので、代わりに作成しました」


「こんなに立派なもの、いいのか……」


「はい、最後の仕上げがあります。魔石をお願いします」


 無限収納から魔石を取り出し渡す。アイシスはその魔石を光の球体に変え、コートの中に入れる。すると、微弱ではあるが魔力でコーティングされている感じがある。


「これで完成でございます。どうぞ、試着してください」


「本当にいいのか? 俺にはもったいない気がするのだが……」


『素直に受け取りなよ! レイのために作ったのだから!』


「そうだな、アイシス、ありがとう。着てみるよ」


 コートを着てみると驚きばかりだ。肌触りも良く、軽い。さらに自身の魔力も通しやすい。そこらの耐久性の高い鎧よりも丈夫と感じる。また、鎧では動きづらい部分をコートなら身軽にカバーできる。これは自分にとって理想の防具だ。

しかし、少しサイズが大きい気がする。まだ身長が伸びることを考慮して作ってくれたのかもしれない。


「ありがとう! アイシス。大切にするよ!」


「ありがとうございます。私は必要なことをしたまでです」


「けど、【裁縫】スキルないのによくできたなー」


 アイシスも自分と同じ【器用】のスキルがあるけど、それでもこんな繊細に作ることができるのは本当にすごいことだ。


「いいえ、【家事】スキルのおかげで作ることができました」


「え……そうなの?」


『レイが思っているより、そのスキルは万能だよ!』


「家事だから炊事、洗濯、掃除ができる便利スキルかと思った」


『甘く見てはいけないよ! 【家事】スキルはさっき言ったのももちろん! 裁縫、計算、育児、体術など、いろいろな日常生活に欠かせない最強スキル。いわば、メイドにとって天職(ユニーク)だよ!』


 いやいや、最後の体術は家事には関係ないのでは!?

 しかもエフィナ、かなり詳しいな!


「ちょっと待て、体術は【家事】スキルに関係ないのでは?」


『それは家に不審者が現れたら、体術があれば撃退できるからだよ!』


「だから家事に含まれるのか……」


『うん!』


 この世界の家事とは、前世と比べてはいけないな……。

 恐るべし【家事】スキル……。


「これからは、ご主人様の身の回りのものを用意しますので、ご安心ください」


「それだと、アイシスに負担がかかってしまうのではないか?」


「これは私の趣味だと思ってください。作っているのは楽しいですから」


「そうなのか……わかった、よろしく頼むよ。それと、あまり無理はしないように」


「かしこまりました」


「あと、これはお礼とはいえないけれど、ケーキを買ってきたよ」


 無限収納からケーキを取り出し渡した。


「ありがとうございます!」


「ゆっくり休んで」


「はい!」


 さすがに、魔剣とはいえ、疲労はあるはずだ。本当に無理はしないでほしい。

 しかし、自分の予想以上にアイシスのすごさに度肝を抜かれた。

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