785話 第三試合前
闘技場前には昨日より倍の人数がいる。
それも――帝国軍の数も目立っている。
周りはどちら――カイセイかイングルプが勝つか話をしていた。
やっぱり対戦相手はイングルプか。
「議論するとか論外だ。絶対ゴンザレスに勝つ」
「あいつらわかっていないな。ゴンザレスに決まっているだろ」
黒いフードで顔を隠したジャントとデフィーが言う。
観戦が初めてなのに絶対的信頼だな。
まあ、アイツの対策は万全なではある。
しかし……軍の奴らの近くまで行くが2人は気づかれていない。
それもそのはず、2人には注目せず俺たちに目がいってしまうからだ。
あと、サムワたちいるから、影が薄くなり怪しまれずに済む。
中に入ると、カイセイと分かれてスタッフに客席に案内される。
案内された場所は前回と違い、クーランドが座る特等席とは反対の場所に案内された。
完全に避けているのはわかった。どうやら身の危険を感じたようだな。
予想はしていたが、長方形の黒くて禍々しい邪石が複数設置していた。
イングルプが大暴れすることは確定した。どうやら決闘より殺し合いになりそうだ。
「こ、こんなので大丈夫なの……」
エミカは気づいたのか、顔が真っ青になる。
不安であるが、俺は心配なんてない。寧ろ、カイセイには大暴れしてほしい。
そして観客が次々と入ってきて満員になった。
それとともに俺たちの周りには邪石をつけた軍らが監視している。
かなり警戒をしているな。
だけど――。
「フフフフフフ……、頑張って監視してください……」
メアは【威圧】を軍に向けて放ち、ガクブル状態だった。
遊んでいますね……。そのうち漏らしてしまうぞ……。
真正面――特等席の下の客席には軍たちが座っていた。
やはり少佐の大事な試合は観に来たようだ。
そして試合5分前には、特等席にクーランドが入ってきた。
「愚か者……、今日で終わりですわ……」
サリチーヌは前回と同様に怒り露わにする。
オーストロ夫妻とヒロヤとヨイカの姿はなしか。
まあいいさ。どうせ渡さない気なら俺たちは本気で救出するまでだ。
司会の紹介でカイセイが姿を見せると、歓声が広がり場内が盛り上がる。
それもそのはず――カイセイが勝てば100倍の金額になるから、期待をしている。
「そして、皆様ご存知の通り、クーランド伯爵の最強の砦――」
「紹介がなげーんだよ! 早く闘わせろ!」
大声で怒鳴って紹介を中断させたイングルプが姿を見せた。
その姿に観客たちはどよめく――以前より一回り大きくなり筋肉質でドス黒い魔力――禁忌野郎と同じだ。
闘い場に近づくと設置している邪石とイングルプが付けている邪石が輝き、共鳴をしている。さらに魔力が増す。
なるほど、床だけを強化するだけでなく、イングルプも強化できるよう仕様になっているのか。
ここまで卑怯な手を使うとは、どうしても渡したくないようだ。




