784話 世は情け④
中に入ると、俺たちにみんな気づいて駆け寄り、今後のことを話した。
「そうですか。治療ができてよかったですわね。ゼロさんあなたは本当に何者ですの? 急だったので言わなかったですが、ロベントスのあの大ケガを一瞬で治すのは、上級治療士しかできないことです。もうただの傭兵の大将だけでは済まされませんわ」
「そう言われても、できるから仕方ない」
「それだけですの……? 恵まれた才能を持っていても誇ることないとは……」
サリチーヌは呆れていた。この大陸では魔法はかなり特別視されているからそう思われる。
俺たちからしたら、このくらいケガだったら一般のヒーラーでも治せるけどな。
「誇るもなにも――ケガは日常茶飯事だから自画自賛する余裕なんてない」
「まあ、いいですわ。そういうことにしますわ。それに……、ロベントスと監視とおふたりが、ゼロさんのとこに行くとは驚きですわ……」
とりあえずサリチーヌにはごまかして言ったから俺たちの素性はバレていない。
「見張りが足りないのは本当だ。だったら、まとめて来たほうが平和的解決なる」
「見かけによらず豪快ですわね。まあ、あなたのとこに行けば安心ですこと。よかったですわねロベントス」
少し不満のようですな。
その前にロベントスを誘ったからそうなるか。
「本当によかったよ。領主が絶対に来ない場所なのは、これからずっと安心して眠れる」
「よかったですわね。これ以上は聞きませんこと」
拗ねてしまいましたね。悪いがメリアルご機嫌取りは任せた。
「これで俺もゴンザレス決闘が観れるっわけさ。絶対に勝てよ!」
「楽しみにしているぞ。爽快な試合にしてくれ!」
「任せてくれ! 期待以上の試合にしてみせる!」
「じゃあ、ワタシもやることがなくなったから〜、応援に行くわよ〜」
トリニッチさんまで行くのか……。
まあ、止めはしないけど。
しかし……キャスリーが禁忌に侵食されていたとなると、次試合は油断できない。
もし、相手が禁忌を使うとなると、カイセイには厳しい。
…………相手も卑怯な手を使うのだったらこちらもそれ相応の対応をする――。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
朝早く起きて、朝食の準備をする。
カイセイの大好物の和食――おにぎり、みそ汁、ボアの角煮を作った。
カイセイは喜びながら平らげておにぎりをおかわりする。
緊張していないのはいいことだ。
「アタシもおかわりする!」
なぜかルチルは普段通りの装備をして食べているのですが……。
まあ、何かあったときにすぐ行動を起こせるからいいけど。
「みんな気合が入っていいわね〜。それで、あなたたちはどうするの〜?」
「当然、俺たちも行く。ハーティを助ける」
酔いつぶれて朝に目覚めたサムワに相談したところ。
一緒に行くことが決まった。
カイセイの試合が終わったあとに、ハーティを助ける話になった。
作戦は未定だが、相手の見方によるが、暴動を起こして助ける話になっている。
まあ、クーランドが約束を守りそうにないし、結局そのパターンになりそうだ。
サムワたちがいれば、やりやすいのもあるし、いいか。
準備が整い、みんなで闘技場に向かう――。




