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778話 元勇者の憂鬱


 宿に戻り、トリニッチさんに事情を説明すると――。


「あらそうなの……。ハーティちゃんが奴隷に……。いろいろと複雑な事情があるのね……。大将ちゃんで解決することはできない?」


「この件が終わったら考えようと思います。俺たちの目的が優先ですから」


「そうよね。まずはそっちを優先しないとね」


「ヒロヤ……ヨイカ……」


「大丈夫よエミカちゃん、明日で終わるんだから大丈夫よ」


 トリニッチさんはずっと落ち込んでいるエミカを抱いて慰める。

 エミカはトリニッチさんに任せたほうがいいな。

 クーランドの理不尽な変更で救出できるか不安で頭がいっぱいだろう。


「もう、みんなそんなに落ち込まないで。なんとかなるんだから、とりあえず中に入って」


 トリニッチさんは自分の家のように傭兵たちを中に入れた。

 まあ、もう俺たちには関係ないことだしいいか。というか全員入れるのか?


 ――空いている部屋を複数人入らせて、なんだかんだ余裕でした。


 落ち込んでいるようだしそのままそっとしておく。


 だけど、サムワは1階で大量の酒を飲んでやけ酒をしていた。


「なんでハーティが奴隷にされるんだよ!? なんでだよ……。ちくしょう……なんでこんなに俺は弱いんだ……」


 完全に酔っていますな……。

 

「俺はな……、ハーティは赤ん坊の頃からの付き合いで父親同然のように見守っていたんだ……。それなのにこんな結末はないだろ! お前たちもそう思うよな!」


 俺たちが何も聞くこともなく涙を流して絡んでくる。

 メアさん……不気味な笑みで酒を注ぐのではありません……。

 悪酔いしたらどうする……。


「そもそもゴンザレス、お前はハーティが認めた男だぞ! なんで助けようとしない! あそこまでされて助けない男がどこにいる! ハーティはいい女だぞ! なんで助けないんだよ!?」


 急にカイセイまで絡んできました。 

 だが、言い返せずカイセイはため息をついているだけだ。

 気になるのはいいが、明日の試合を本調子で挑めるか問題になってきたな。


「サムワちゃん〜少し黙ってちょうだい〜」


「――――ゴボボボボボ!?」


 トリニッチさんは強めの酒を無理やりサムワの口に流し込んだ

 見ていられなくなったようです。

 サムワは床に倒れ込み気絶した。

 まあ、これ以上絡むと面倒だからナイスです。


「おとなしくなっていい子ね〜。ゴンザレスちゃん、ハーティちゃんのこと、どう思うの〜?」


「い、いや、俺は別に……」


 トリニッチさんから視線をそらす。

 もうカイセイにはハーティのが好きであることを受け入れていないようだから、いくら恋愛相談マスターのトリニッチさんでも一筋縄ではいかない。


「別にじゃないわよ〜。もしかして〜、告白する女性に申し訳ないと思っているわね〜」


「そ、それは……」


「オホホホ! もう顔に出ているわよ〜。素直に言いなさい〜」


「俺……そんなに顔に出ていましたか……?」


「当然よ〜、今言わないとすっきりしないわよ〜」


「トリニッチさんには負けました……。俺……どうしたらいいのですか……? ハーティにキスされたときから胸の鼓動が止まらないのです……。一目惚れじゃないのになんで……。気になって気になって仕方ないです。俺好みではないのになぜ……? それなのに……生涯愛そうとした決めた女性に裏切るようなことをしてしまうのはいけない気持ちです……」


「フフフフフフ……それは、あまりにもキスが良くて好きになっただけですこと……。単純なだけですこと……素直に認めればいいのに……」


 メアさん、的確なことを口に出すのではありません……。

 それは俺も思ったが。


「メアちゃんのことはともかく〜。簡単なことよ〜両方愛せばいいことよ〜」


「そ、それは難しいです……。俺が愛した女性は特殊で……」


「大丈夫よ〜。ちなみに〜その女性って……尻の穴が小さいのかしら〜?」


「そんなことはないです! 尻の大きな魅力的な最高の女性です!」


 どういう返し方だよ……。ナノミとコトハが白い目で見ているぞ。


「じゃあ、そんな心優しい女性が、もう一人の連れてきても素直に受け入れるわよ〜」


「そ、そうですかね……?」


「そうよ〜、ワタシが言うのだから当然よ〜。見た瞬間に器の大きい女性だとわかったわ〜」


 まさか神社にあるシャルさんの女神像のことを言っているのか? いや、抱きついてキスをしたりすれば、噂になって知っているはずだ。サリチーヌがいるから遠回しに言っていることはわかった。


「そうですよね……トリニッチさん……。俺が愛した女性がこんな小さなことで怒るわけがない……。もう……俺は迷いません……。両方愛します……」


「オホホホホ! その調子よ!」


 そんなのでいいのかよ……。なぜだろう……シャルさんが頭を抱えている感覚がある。

 とんだ糠喜びでしたね。


 まあ、カイセイがそれでいいならいけどさ。


「じゃあ、第三試合が終わったら任せていいか? まさかバテてて行けないとか言うなよ?」


「大丈夫です! 第三試合を早く終わらせてハーティをお迎えに行きます!」


 悩んでいたのが嘘のようにいい返事をする。

 明日は問題なさそうだ。


「まさか解決するなんてすごいですわね。さすが男性と女性の二面性を持っているお方ですわ」


 それ関係あるのか? ただの恋愛相談マスターだけです。 


 話はまとまったことだし、サムワが酔いが覚めたら言う――。


「ロベントスどうしたんだ!?」


 見張りをしているジャントとデフィーが慌てて声をあげる。

 姉のもとに戻ったはずのロベントスに何かあったのか? その声で外に出ると――。

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