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767話 第一試合前③


 開始10分前になると、3階の特等席から動きがあった――。


 ボロボロと制服を着た黒い長髪の少し小柄な若い男性と、黒髪でボブカットの長身な若い女性に、正装をした短い赤髪の30代くらいの男性と、サリチーヌと同じドレスを着たピンクの長髪で20代後半くらいの女性が奴隷の首輪と両腕には鎖で縛られて部屋に入ってきた。


 ヒロヤとヨイカ、オーストロ夫妻なのがわかった。


「大弥……宵華……」


「父上、母上!」


 エミカとサリチーヌは声をあげて思わず立ち上がってしまう。


「エミカ、気持ちがわかるが、ここは抑えてくれ」


「はい……」


 ここでヒロヤとヨイカにバレてしまったら大問題になる。

 早く解放させたい気持ちはわかるが、ここは我慢だ。


「父上、母上! 私はここですわ! もうすぐ助けますわ!」


「旦那様、奥様! お嬢様はここにいます!」


 サリチーヌとメリアルは窓越しの夫妻に気づいてもらえるように手を振る。

 

 気づいたのか夫妻は2人を見て、口を開けて顔面蒼白だった。

 この感じ、クーランドは夫妻に実の娘が勝負するとは言ってないようだ。 


 そのあとにクーランドが部屋に入ると、夫妻はクーランドに激怒しながら何か言っている。だが、気にせず大きなソファに座って足組をして俺たちを見て笑っている。


「愚か者……。絶対に地の底に落としやる……」


 サリチーヌは歯を食いしばり、怒っているが我慢をしている。

 なかなかに歯痒いよな。


「サリチーヌさん……、下等生物は今日で終わりですこと……。優雅に落ち着いて見届けましょう……」


 終わると言っても、無理があるだろ……。自分も賭けの対象になっているから最後まで気が気でないぞ。


 そして司会らしき者が闘い場の中心に移動し、魔道具(拡声器)を持ち出して――。


「紳士淑女の皆様、大変お待たせしました。これより――第1回戦を始めたいと思います。無敗の女帝――ナイトメア・ラグナロクが率いる騎士が挑戦者します。無謀とも言える挑戦に果たして勝てるのだろうか? 騎士ゴンザレスの入場でございます――」


 司会が言うと、カイセイは姿を現した。


「ゴンザレス、頼むぞ!」

「お前を信じているからな!」

「ラグナロク嬢に恥をかかせるなよ!」


 意外にも声援は多かった。それもそうか、無敗の女帝の騎士が出るのは期待はするよな。


「ゴンザレスさん! 頑張ってくださいまし!」


 サリチーヌも大声で声援を送る。


「そして立ちはだかるのは――クーランド伯爵が派遣したデンドフル傭兵団の副団長――鋭刃のサムワでございます!」


「よりによってデンドルフ傭兵団の副団長か……。強い相手だとわかっていたが、まさか最強傭兵団の副団長か……。この闘い……ゴンザレスさんには少しキツいかもしれない……」


 それまでカイセイを信じてたロベントスが、弱音を吐くほどとは。

 かなり強いみたいだ。


「嘘でしょ!? なんで最強傭兵団がいるのです!? そんな話し聞いてませんわ!?」


 サリチーヌも驚く。まあ、最強とか言っているからこの大陸ではかなりの有名だろうな。


 だが、そのサムワという者は姿を現さない。


「サムワ選手どうしましたか? 早く入場を――」


 すると、慌ててほかの運営の人が闘い場に入ってきて、司会に耳の近くで話して――。


「そんな話し聞いてないぞ!?」


 魔道具なしでも司会の声が闘技場全体に聞こえるほど驚いていた。


「なるほど、そういうことか」


 セイクリッドは頷いて納得する。

 俺もなんの冗談かなと思ったが、そうなると思った。


「あわわわ……」


 エミカも気づいたようだ。まあ、カイセイなら大丈夫だろう。


「皆さん、何を納得していますの? もしや――副団長は来ていないということですか? それなら早く――」


「た、ただいま変更となりました――副団長サムワ率いるデンドルフ傭兵団72人と相手になりました! 規定通りです! 問題ありませんので、ご理解ください!」


 そして、片刃剣(ファルシオン)を持った猫背の大男が先頭になって、武装した軍団が出てきた。


 卑怯なことはすると思ったが、予想以上にクズっぷりで呆れるしかなかった。

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