764話 1人にはさせない
準備ができ、いつでも出発できる。
その前に――。
「では……オネエさん……よろしくお願いします……」
「任せてちょうだい〜。ベネッタちゃん、絶対に守ってあげるわよ〜」
ベネッタを1人にできないから、トリニッチさんを呼んだ。
このメンバーで誰か残るのもよかったが、無事に終わることはないと思い、トリニッチさんを呼んだ。
しかし……、完全に女性ですな……。いつの間にか声も高くなって、男って言われるのがおかしいくらいに……。
「なんですのこの方は……。女性なのに男性の影がちらついて二面性を持っていますわ……」
なぜかサリチーヌはわかっていた……。
もはや【第六感】を持っているような鋭さだ。
「細かいことは気にしないで〜、ゴンザレスちゃん頑張ってね〜」
「はい……、絶対に勝ちます……。これが終わったら……告白するつもりです……」
どうやってシャルさんに告白するんだ……?
多分、俺の領地にある銅像に向かって告白するとは思う。
というか、フラグを立てるのではありません。
いつも通り、コトハとナノミはドン引きしていますよ。
「あらいいわね〜。こんな男に告白されたら、お相手も喜んで受け入れるわ〜」
トリニッチさんおだてるのではありません。余計に燃え上がってシャルさんの迷惑になります。
でも、良い働きをするからバーミシャルさんにお願いして少しだけ面会させるのもいいか。
ご褒美をあげないとやっていけないからな。
「おいおい、本当に女帝が勝ってしまうぞ」
「ちくしょう……、仕事がなければゴンザレスに賭けたのに、もったいない……」
軍の奴は、否定をしないで俺たちが勝つと予想している。
先ほど異常なほど魔力を出して察知していたのはわかるが、ここまで言うとは。
「いいのかそんなこと言って。クーランドのほうを応援しなくていいのか?」
「本当のことを言ったまでだ。俺たちは好きで軍に入ったわけではない。仕事としてやっているだけだ。苦労しなければ、ほかの仕事をやっている。だから領主が勝とうが負けようが関係ない」
「そうだ。金に苦労しなければ、こんな嫌な仕事はしていない。いやいや軍の仕事をやっているやつがいると理解してくれ」
意外に会話すればまともな奴らだった。
たしかに、生活のために仕事をしているのが大半だろうな。
「そうか。だが、俺たちがいない間にベネッタを連れて行くなよ」
「もちろんだ! 仮に勝手に連れだそうとしたら、この美人な傭兵に返り討ちされる」
「俺としても争いは避けたい。もう女帝との約束を守らないと酷い目に遭うのはわかっている」
思っていた以上にまともだった。
まともとはいえ、警戒するのには変わりはない。何があってもトリニッチさんがいるから大丈夫だ。
トリニッチさんとべネッタが見送って宿を出た。
「ゴンザレス、言いたいことがある――お前が強いのはわかっている。だが、暴力少佐には気をつけろ。奴は強い相手だと、気が済むまで攻撃をする。たとえ、あいつが負けたらすぐに離れろ。負けても攻撃してくるからな」
まさかアドバイスまでしてくれるとは。
確かにアイツの性格ではやりかねない。
「注意喚起、感謝する。それならあいつが気が済むまで闘う。それだけの話だ」
「いらない心配だったな」
「味方の情報を教えていいのか?」
「あの暴力少佐が来て、俺たちは手を負えなくなっている。ただ、気に食わないだけだ。大尉がいたときのほうが、働きやすかった。だからお前が勝てば、あの暴力少佐は転勤すると思ってな」
そういう理由か。やはりイングルプの下で働いていると苦労はするようだ。
あのとき見ていたが、下の者は同情するくらい大変だったな。
対戦相手にアドバイスするなんて相当不平不満な溜まっているようです。
「利害の一致というわけか。お前たち、名前はなんという?」
「ジャントだ」
「デフィーだ」
「ジャント、デフィー感謝する。お前たちが帝国軍じゃなかったら、よい友人になりそうだった」
「奇遇だな、俺もそう思う」
「俺もこの仕事をしてなかったら、一緒に酒でも飲んでいる仲だったかもしれない」
なんだこの茶番は……。
互いにしんみりするのではありません……。
「フフフフフ……面白いですこと……。これはリスト確定です……」
メアさんに目をつけられましたね。
もうここにいるまで相手にされそうです。




