763話 監視が来ない理由
決闘の日になった。
何事もなく当日を迎えることができた。
監視をしている帝国軍は約束を守ってべネッタを強制的に連れて行くことはなかった。
ただ、それ以降、ロベントスが来ることがなかった。
さすがのメアは気になったのか、監視している奴に【威圧】出して聞くが、涙目で知らないと言った。
脅して聞くのではありません……。邪石を付けていない奴だぞ……。嘘は言ってないようで、本当に知らないようだ。
帝国軍が監視しているから来なくてもいいのかもしれない。
俺たち行く準備をしていると――。
「間に合った……」
ロベントスが慌てて扉を開けて俺たち見てホッひと安心する。いいタイミングだな。
「フフフ……、もうすぐで行きますこと……。いいところに来ましたね……」
「よかった……。用事でここ何日も来れなかった。連絡する余裕なんてなかったから、本当にごめん。最後まで責任持って付きそうよ」
「用事ってなによ……。キャスリーに私のことは言ったの? もうすぐ行かないといけなくなるわ……」
「ごめん! 姉ちゃんはまた体調が悪化してまだ治らないんだ! 会えるかわからない!」
ロベントスは頭を下げて謝る。
ここまで体調が悪いと持病しか考えられない。
「はぁ……、本当のようね……。わかったわ、最後まで待つからもう何もいわないわ……」
「本当にごめん! 治ったらすぐに会わせるから!」
「無理をさせるのはよくないわ。会えなくても手紙でやりとりできるし、大丈夫よ」
「ありがとうベネッタ! 姉ちゃんに意識がしっかりしているときにちゃんと伝えるよ!」
じゃあ、キャスリーは今のところ意識朦朧としているのか?
重症なら渡しても良さそうだな。
「かなり重症ならこれを飲ませろ」
俺は特注のポーションとマナポーションを渡した。
最後くらい親友に会わせないとベネッタは心残りになるしな。
「これって……かなり品質良いポーションじゃないか!? もしかして1等級――」
「それ以上はいわないほうがいい。俺たちが生産している特注品だ。一般では売っていない品だが、効果は保証する。これで姉を治してやってくれ。もちろん、金はいらない」
「ありがとう……ゼロ大将……。これで姉ちゃんが助かる……」
ロベントスはボロボロと涙を流して膝をついた。
それほど重症だったのか……。
「「よかったな……」」
なんで帝国軍が泣いている……。もしかして事情を知っているのか……?
「ちょっと、ロベントス! キャスリーってそんなに大変だったの!?」
「隠しててごめん……。姉ちゃんは言わないでほしいと……」
「はぁ……キャスリーらしいわ……。もう2人して抱えないでよ……。泣いている暇があったら早く飲ませて……」
「ああ……、みんな悪いが、これから姉ちゃんに飲ませる。闘技場で会おう――」
そう言ってロベントスは宿から出ていった。
「まったく……早くいいなさい……。ゼロ大将には感謝しかないわ。これで大事な親友にお別れの挨拶ができる」
「気にするな。俺ももっと早く気づけばよかった。その詫びと思ってくれ」
「あれが詫びですか……? わたくしには口では言ってはいけないほどの品質ですわ……。この世に出回っていけないほどかと……」
サリチーヌはわかってしまったか。まさか他人が言わせるほどを作ってしまうとは、短期間で上達するのはカヤキはすごいな。
もう助手ではなく、一人前の調合師と名乗ってもいいとは思う。
だが、あの2人――リフィリアとメメットはまだ助手としか思っていないだろうな……。
あの2人が規格外だけど……。
それを見たエミカは自分のように嬉しそうだった。
ここまで同級生が作ったポーションを褒めてくれるのは嬉しいに決まっている。




