760話 友人の様子
――翌日。
予定通りのんびりすることに。
ロベントスは朝早く来たが、監視する必要がなくなり、宿屋を出る。
それはいいが……、唯一の従業員であるベネッタがロベントスの姉――キャスリーの様子を見に行って宿にいない……。
少しの間だけとは言っているが、その少しが長いと思う……。
まあ、客は俺たちだけだし別にいいけどさ。
――1時間経つと、ベネッタが戻ってきた。
意外に早いな。あまりいい顔をしないでため息をつく。
この様子だとまだ治っていないのか?
「家にキャスリーがいなかったわ……。多分、出かけてすれ違ったかもしれない……」
なんだ、すれ違って会えなかったのか。
出かけているなら元気ということだ。じゃあ、ロベントスは何も隠してもいない。
「紛らわしいですこと……。イベントがないなら、ハッキリ言ってほしいですこと……」
メアは首を突っ込む気であった……。
いや、身内の事情を他人に言うわけないだろ……。
「そのうち会えるだろうしいいわ。さて、仕事再開よ」
問題がなければよしとする。今日は何もないし部屋でのんびり――。
『マスター、今大丈夫? 少し問題が起きたの……』
リフィリアから念話がくる。
『大丈夫だ。何かあったのか?』
『うん、私たちを追っている馬車が数台いるの……。イエンク意外みんな気づいたけど、どう対処はしようか考えているところ……』
もう追手がきてるのか。
俺たちが見送ったときは周りに怪しい奴はいなかったが、どこかで待ち伏せしていたか。
そりゃあ、馬車で遠くに行くのは許されるわけないよな。
『ちなみに、邪石の反応は?』
『ないよ。魔力的にも強そうでもないから、私たちが行く場所を監視するだけだと思う』
逃げられないように周りを包囲するってわけか。けど、残念なことにリフィリアたちがいるのは大きな誤算だ。
『奴らが見失う程度で足止めすればいいと思うぞ。わざわざ止まって返り討ちするほどではない』
『わかった。風中級魔法で引き返してもらうのでいい?』
『それでいいと思う』
『じゃあ、終わったら報告するね――』
――数分後。
『無事に追い払ったよ。ちょっと強すぎたせいでイエンクにバレて大慌てだったけど』
御者が後ろを振り向くほどの強さにしたな。トルネードという風上級魔法を……。多少は加減したと思うけど、それでも一般では上級魔法並みの強さだと思う。
『無事なら問題ない。引き続き何かあったら伝えてくれ』
リフィリアとの念話は終わった。奴らを追い払ったならもう大丈夫だろう。
安心して目的地に着けるはずだ。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
朝食を食べ終えて何をするか考えていたら――。
「ベネッタという女はいるか?」
急に扉を開けて帝国軍数名が入ってきた。
朝からなんだ? エミカはバレないように慌ててフードをかぶった。
けど、俺たちは眼中になく、本当にベネッタに用があるみたいだ。
「はい……私ですが……」
ベネッタはおそるおそる言うと、軍の1人が羊紙皮を取り出して。
「契約のもと――お前は今日から奴隷とする。さぁ、これを首に付けろ!」
今日から奴隷って……ベネッタ、いったい何をやらかした?




