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757話 飽きても


 ルチルの反応にコトハとナノミは驚いた。


「く、クリスちゃん……まだ途中のしか観ていないよ……。もう少し……観てから決めたほうがいいよ……」


「そ、そうだよ……。相手が弱かっただけだから次は絶対面白いよ……」


「だって、次の試合だって一方的にやられるだけじゃん! 絶対につまんない! 唯一の賭けができないのもさらに面白みに欠ける!」


「「えぇ……」」


 2人は困惑して何も言い返せなくなった。ルチルの保護者として来たのに、その意味がなくなったからな。

 ルチルはこういう性格だから仕方ない。


 ロベントス曰く、挑戦者とその身内は賭けをしてはいけないと決められている。

 当然だが、カイセイの試合を賭けるのもダメだ。


 別に普通のルールだが、ルチル……、やっぱり賭けたかったか……。


「フフフフフ……クリス……、残念でしたわね……。つまらないのなら、お帰りになられて……」


 メアは不気味な笑みでルチルを見下している。

 まさか、早く帰らせるように狙ってやったわけではないよな?


「なんで? 闘技場がつまらないだけで帰らないよ。アタシは残る!」


 せっかくの遠出だから残りたいだろうな。まあ、ルチルがいれば戦力にはなる。

 メア、【威圧】を出しながら舌打ちするのではありません。


「そうですか……、それはとても残念ですこと……。本当に残念で……」


 嫌気たっぷりで言いますな……。

 本当ならルチルを連れて行く予定なんてなかったしな。


 コトハとナノミはホッと安心した。

 このまま帰るのも後味悪いと思っているようだ。


「次の挑戦者はまだか!? 早く出せ!」


 イングルプは周囲の声のボリュームにも負けずに叫びながら言う。

 アイツの性格なら満足するまで休みなんてしないだろうな。


 すると、正装をした男――運営の男が慌ててイングルプに慌ただしく駆けつけ、話しをしていた。イングルプは驚いて、走ってこの場からいなくなった。

 周囲の奴らも何があったのかざわつく。


 そして、運営側の者が複数来て、道具――大きな魔道具(拡声器)を用意して――。


「皆様、静粛に――先ほど、立入禁止区域に不審者が現れたようです。皆様の安全のために確認が終わるまで試合中止とします。その場から動かないよう、ご協力お願いをします」


 おいおい、ファントムの【擬装】でも反応したか……。

 じゃあ、ファントムは――。


「すまない大将、無理だった」


 その声で後ろを振り向くと、ファントムがいた。

 運営の奴らに見つかる前に逃げられてようだ。


「【擬装】を見破るほどの、高度な魔道具を付けているのか……」


「いや、そうでもなさそうだ。【擬装】では反応しなかった。音を立てると反応する魔道具を使っているかもしれない。私は物音を立てず進んだが、反応はしなかった。だが、音が反響する場所に行くと、魔道具がすぐに反応して逃げてしまった。ただ、奴らがこっちに向かってきても、私を見つけることはできなかった。奴らを無視して奥に進むことができるが、これ以上、騒ぎになってはいけないと思って戻ってきた」


 ファントムの判断は正しい。これ以上は、面倒なことになる。

 しかし、音に反応する魔道具だったのか。てっきり、センサーに反応して見つける魔道具かと思ったがそうではなかった。


 なら、【隠密】系のスキルでも無理だ。

 仕組みがわかったとはいえ、侵入して救出するのは難しい。

 予定通り決闘でケリをつけないといけないか。


 ――1時間後、運営は不審者が脱走したと判断し、試合中止を解除した。


 俺たちは、ここにいる必要はなくなり、闘技場を出る。

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