750話 偵察、やりたい放題②
クーランドはイラついているのか、また舌打ちをする。
「残念だが、その条件は飲むことはできない。全部私の商品を簡単に渡すことができない。ほしいのなら闘技場で勝ってくれ」
「そうですか……。では、決闘を申し込みたいと思います……。ワタクシの護衛である――ゴンザレスが勝てば条件を飲んでください……」
「後ろにいる護衛を? フハハハハハ! いいだろう! 受けて立とうではないか! なら挑戦者として特別仕様といこうじゃないか!」
クーランドは腹を抱えて大笑いした。
もしかしてカイセイを連れてきたのは、そういうことか。
闘技場に持っていこうとするために。
「フフフフフ……、交渉成立ですね……」
「だが、ラグナロク側だけの好条件で不公平ではないか。なら私が勝ったら、オーストロ家と関係している奴ら全員を奴隷とさせる。この条件を飲まないのであれば、帰ってくれ」
「オーストロ家の関係者……あなた……、どこまで腐っているのです!? みんなを奴隷にするつもりですの!? せめて私だけにしてくれます!?」
「当然だ。そのくらいの賭けをしなければ割に合わないのだよ」
こいつ勝てると思ってサリチーヌたちを条件にいれるとは、やはり狙いはそっちか。
「なんと下劣でしょうか……。ですが、問題ありませんこと……。ゴンザレス、不備はありますか……?」
「いつでもいける。なんなら、いますぐ始めてもいいぞ」
何をかけようが、俺としては心配は無用だ。カイセイなら余裕で勝つ。
「ということです……。あとはサリチーヌさん……、あなた次第です……」
俺たちは大丈夫だが、問題はサリチーヌだ。
身内を巻き込むとなると、かなり厳しい。それなら、巻き込まないで俺たちで好条件――。
「私は……、あなた方を信じます……。クーランドに臆することなく、あなた方は真っ直ぐな、輝きを放っています。曇り一つない金剛石のように。その賭け乗りましたわ」
いいのかよ……。
だが、覚悟を決めたなら俺たちも応えないといけない。
「フハハハ、決まりのようだ! 決闘は1週間後だ! 詳しいことはそこのロベントスに伝える。ロベントス、彼女らを補助してくれ」
「えっ? は、はい!」
ここでロベントスを監視役にするのか。
まあ、ほかの連中よりはいいか。
「フフフフフ……決まりましたね……。では契約書を――」
「その必要はない。署名しなくとも約束は守ろう。お互いそうではないか?」
契約書が必要はないとか。なぜだ? 絶対に企んでいるな。
「そうですね……。そのほうがワタクシたちも都合が良いので……」
「成立だ。その期間中、私らはまったく干渉――君らを妨げることはしない。だが、予定日までに来なかったら危険と見なして、私の勝ちとなる。そこはわかっているな?」
「言われなくとも……、逃げも隠れもしませんこと……」
「どうやら、大きなお節介だったようだ。その大口叩けるのは今のうちだ。震えて待っておくがいい」
何か企んでいるが、俺たちは当日まで邪魔されようが、なんも問題ない。
話し合いは終わり、豪邸から出ようとすると――。
「そうだ、ロベントス、彼女らにあまり期待しないほうがいいぞ」
「はい……、わかってます……」
ロベントスはあまりいい返事はしなかった。どういう意味で言っている?
今思うに、軍にもクーランドにも見下されることなく、話していたな。
かなりの訳アリだ。




