740話 偵察者の帰還
メアが来たことだしゆっくりお茶を飲んで――。
「メアが帰ってきた! ディングラはどうだった?」
ルチルが喜びながら来ました。
おいおい、今回はお遊びで行くのではないぞ……。
上機嫌だったメアは舌打ちをして不機嫌になってしまった。
あっ、【威圧】を出して相当ご立腹ですね。
「おチビ……、いい加減諦めてくれませんこと……? 毎回念話をしてくるのに呆れました……。お遊びに行くのではありません……」
気になって念話で伝えるのはさすがに怒りますね。
よほど行きたいらしい。
「そのくらい知っているよ! アタシは邪魔しないで闘技場で観戦しているだけだから!」
だと思ったよ……。
「ルチル……邪魔しないからと言って何が起こるかわからないぞ……。悪いが、約束はしても今回は諦めてくれ……」
「理由だってあるよ――どうせメアは用済みになったら闘技場を破壊しそうだもん! 大騒ぎさせて楽しむんでしょ! この機会に行かないと最初で最後の観戦になるから行く!」
「たしかに考えそうだが、そこまでメアは自己中では――」
「チッ……、なんのことです……? ワタクシがバカなことはしません……」
不機嫌そうに舌打ちしましたね。やるつもりだったようです。
たぶん、ルチルが闘技場行きたいと隣で聞いていたから、今後見させないようにしようと思っていたか。
日頃のストレス――ルチルに仕返しするために。
ルチルはこういうことには鋭いよな。
「ほら、やっぱり! ご主人、約束だからアタシも行く!」
そうなると、ルチルを連れて行くしかない。この機会を見逃さないとずっと拗ねてしまう可能性がある。それに――。
「ほかに破壊する理由はあるだろ? ただ仕返しにするだけではないはずだ」
「さすが主様……よくわかっておられます……。長話になりますのでお茶を飲みながらで――」
俺とルチルはリビングでお茶を飲みながら話しを聞く――。
ディングラに捜索のために闘技場に行って観戦していたところイングルプが決闘に参加していた。
なぜ、イングルプが闘技場にいるのは、周りに聞いてみると、懸賞の金と奴隷が思った以上に持っていかれたため、ドミベックの商会から頼まれたことがわかった。そう、懸賞を持っていかないためのに、イングルプが最後に戦う相手として立ちはだかるようだ。
この前、急にフレリットの護衛から急にいなくなったのは、大佐――グウルドンの命令だとわかった。
そして特等席のほうには、懸賞として見せびらかすかのように勇者2人――ヒロヤとヨイカは奴隷の首輪を付けられて立っていた。その隣には領主であるゴルゴン・クーランドが座って監視するかのように一緒にいた。
2人が捕まっているとわかると、深夜に【隠密】で闘技場の一般立入禁止のところに侵入し、ヒロヤとヨイカを探していると、イングルプが邪石をつけた商品だと思われる奴隷をいたぶって楽しんでいるところを見てしまった。
あまりにも残虐だったから、ヒロヤとヨイカを早く救出してイングルプを抹殺しようとしたが、奥に進んだところで監視用の魔道具に引っかかってしまい、即時撤退したという。
【隠密】でも引っかかる魔道具があるのかよ……。これだと簡単に救出するのは難しい。
そうなると……正式――闘技場に参加して勝ち取るしかないのか……? 別にイングルプと闘うのは問題ないが――。
「変装して勝ち取るしかないか……」
「ですが、懸賞として2人がもらえるとは、かぎりませんよ……。もし、イングルプに勝っても白を切ると思われるかと……」
「ただ盛り上げるための客寄せってことか」
「はい……、ほかの方法がよろしいかと……。たとえば――」
「決闘中に、近づいてすぐ空間魔法を使って救出するとか?」
「よい考えではありますが……特等席にいるときといないときがあります……。予定通り計画が進まないかと……。それに……近づいても監視用の魔道具で見つかってしまいます……。ですので、騒ぎを起こして――」
「そんなこと言って、メアがただやりたいだけでしょ! それで、ちゃんと救えるの!?」
「おチビこそ……、ただ観戦したいだけで騒ぎは起こしたくないのでしょ……? ご心配なく……観戦する時間は設けますので、それでよろしくて……?」
「それなら我慢する!」
「フフフフフ……決まりましたね……。ではそれで――」
「まて! 勝手に決めているが、安易に決めることはできない! ちょっと考えさせてくれ!」
「そうですか……。わかりました……。では、5日後に出発しますので、それまでに決めてください……」
まったく……それで失敗したらどうする……。とは言っても厳重だとメアの言っていることは合理的ではある。最終的には騒ぎを起こさずを得ない。
ダメだ……最小限で救出できる方法がない……。今回は本当に厄介だ。




