738話 偵察が終わるまで⑲
子どもたち全員荷物を持って出てきて行く準備ができた。
見送りにヤーワレさん率いるギルドのみんなが見送りに来た。
「て、天使たち……。ぜ、絶対この街を安全にするから……それまで我慢してくれ……」
ヤーワレさんは相変わらず涙を流している。
だが、みんなを引き留めないのはまだいい。ファルファとチャムが攫われて懲りたようだ。
別に長期間会えないわけではない。余裕があったら絶対に来ると思うが……。
「いろいろありましたが旦那、みんなをよろしくねおねげぇします!」
「ああ、任された以上、しっかり面倒を見るから安心してくれ。それと、ソウタ、精霊たちを偵察に行かせるのは、やめたほうがいいぞ」
「なんで? 3人のおかげで院長と子どもが救えたんだぞ?」
ソウタと精霊たちは首を傾げた。
「ド変態に見つかったらどうしようもないぞ」
「なんだそのことか。この3人なら見つけることなんてできないぞ。あのときより強くなっていて心配はなしだ」
ソウタの発言で精霊たちは頷く。
それが1番危ないぞ……。
「そうだとしても、ド変態が邪石を付けて強化されてすぐに見つけてしまうぞ」
「いや、あの信者が邪石を付けても3人には気づかなかったぞ。レイは心配性だな」
なぜ大丈夫と言える……。ソウタはたまに変な自信があるのはどうかと思う……。
「確かにレイの言う通りだが、もう少し様子見ても大丈夫だ。悔しいが精霊の力を借りないと状況が把握できん。あいつらの動きさえわかれば、俺たちは早く対処できる」
戦略としては精霊を頼めざるを得ないってことか。
まあ、精霊たちもド変態が近くにいたらすぐに逃げるか。
「ヴェンゲルさんが言うのなら、これ以上言いません」
「理解が早くて助かる。そういうことだ。俺たちに任せてくれ」
こうしてギルドのみんなに見送られて、空間魔法で俺の領地――集会場に移動する。
待機していたアイシスに案内を頼んだ。これで落ち着いたと思ったが、クエスがみんなと行かないで立ち止まっていた。
「一緒に行かないのか? 昨日は自分が案内すると張り切っていたのに」
そうは言ったが、あれくらいの出来事が起きればできるわけないよな。
「先生……、俺……こんなのでいいんでしょうか……?」
「急にどうした? まだ身体は子どもだから自分が何ができるか思わなくていい」
「そうですけど……、あれを見て俺は……まだまだ未熟だと思いました……。あれじゃあ……チャム――みんな守ることなんて到底無理と感じました……」
あれを比べてはいけないけどな……。クエスにとってかなり刺激が強すぎてショックを受けたか。このままだと授業に支障が出る。
「ならもっと努力しろ。まずはそこからだ。弱音を吐くくらいなら自分が何が足りないのか、考えて行動をしろ」
「先生……」
クエスは下を向いて考え始めた。
今はこれでいい――自分を見つめ直すのにはいいと思う。
「だから、今日はいろいろあったからゆっくり休んでみんなと――」
すると、クエスは両手で顔を叩いて、真っ赤な跡がつく。
そして真剣な眼差しで――。
「弱音を吐いている俺がバカでした。先生の言う通り弱音を吐いても何も変わりません。俺はもっと強くなってみんなを守りたいです!」
切り替えが早いな……。まあ、クエスの長所でもある。
「そうか。決まったなら休みが明けたら行動だ」
「いえ、今日から始めたいと思います。先生、俺もウルマさんに稽古をつけてもらうようにお願いしたいです」
「今日からかよ……。休みくらいはみんなと一緒にいろよ……」
「両立したいと思います! 一緒にいる時間は十分あるので大丈夫です!」
そんなに両立できるのか……。やる気なら止めはしないが…。
仕方ない、ウルマに頼むしかないか。




