736話 偵察が終わるまで⑰
しかも【断罪】が発動いるのに痛い素振りはしない。
腹の中にある邪石が軽減しているのか?
「て、てんしぃぃぃぃ――――!?」
ヤーワレさんは真っ青になって叫んだ。2人が飲み込まれたと思ったようだ。
2人は――幸いなことに喉袋に入ったまま飲み込まれていない。
だが、誤って飲み込む可能性がある。丸飲みする魔法での攻撃は控えたほうがよさそうだ。
やはり接近戦でやるしかなさそうだ。
「ソウタ、あの距離は飛べるか?」
「問題ないさ」
「わかった。ヤーワレさん、俺たちは2人を救います。周りにいる奴らをお願いします」
「頼むぅぅぅぅ! 天使を救ってくれぇぇぇぇ!」
ダメだ……気が気でなく、周りの相手なんてできなさそうだ……。
「旦那、心配無用ですぜ! 俺に任せてくだせい!」
「まったく……感じなときに戦意不能になるなよ……。坊主、少し離れるが大丈夫か?」
「はい! レイさん、ソウタさん! どうか救ってください!」
まあ、ほかがいるから大丈夫ですな。
さて、早く片づけるか――空間魔法で信者の前に移動する。
「グエェ!? なンでイル!? そレに、ナんでトンでいル!?」
信者は俺たちが目の前に現れ、飛んでいる姿を見ると、口を開いたまま驚く。
【飛行】と風魔法で飛んでいるなんてわからないか。
「頭までペリカン脳になったか? いや、ロックバード並みの知能だな」
「ウ、うるサイ!? クエェェェェ――――!」
奇声を上げながらさらに高く飛んで逃げようとする。
前の戦いで俺たちと戦っても勝ち目がないのは気づいていたか。
ペリカンの姿で戦えるわけがない。
ただ運送用に特化しただけのようだ。
逃がすわけないけどな――。
「――――エア・プレッシャー!」
「――――クエェェェ!?」
俺は風魔法――風の圧で信者をこれ以上飛ばないように落とす。
普通なら地面に叩き落されてもおかしくはないが、必死に翼をバタつかせてゆっくり降りてくる。
だが、それでいい。
「ソウタ、やるぞ――――フランベルジュ・クレイモア!」
「ああ、任せてくれ――」
俺は豪炎に纏う両手剣を創り、ソウタは両手剣に炎を纏った――。
「――――烈焔斬!」
「――――紅蓮割砕!」
「――――ブエェェェ!?」
――俺たちは信者のくちばしの付け根を切断した。
ファルファとチァムは喉袋から出てきて、急いで空間魔法でヤーワレさんのところに移動させる。
信者は羽毛で燃えやすいのか、身体が燃え広がりそのまま地面に落ちていく。
俺たちも降りると、信者はまったく動きはしなかった。
くちばしは再生しなく、腹にある邪石は輝きを失っていた。
こいつはもう保たないだろう。
「こんナハズではナカッた……」
「お前たちは無謀とも言えることをしてまでファルファを狙った? ズイールにいたならおとなしくしてればいい話だ」
「サイあイでもあるスールさマのタメだ……。ていオウさマにメガミをケンじょうスレば……。スールさマとイっしょ二……」
だが、信者の身体は灰になって、肝心なことを話さないで消滅した。
ほかの信者は――ダメだ、反応が消えてコイツと同じようになったか。
隠蔽させるのはいつも通りってことか。
結局目的はなんなのか聞けなかった。
ただ、ド変態たちは帝王と組んでいることはわかった。
…………はぁ、いろいろと報告しないとな……。
まずはファルファとチァムの様子を見ないと――。




